東福寺本坊庭園「八相の庭」

Tofukuji Temple Honbo(Hojo) Garden, Kyoto

“永遠のモダン”―昭和の京都を代表する作庭家・重森三玲が国宝寺院に作庭した初期の代表作。星座を表現した“北斗七星の庭”や市松模様の枯山水庭園。国指定名勝。

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東福寺本坊庭園“八相の庭”について

「東福寺」(とうふくじ)は京都市東山区にある臨済宗東福寺派の大本山の寺院。室町幕府三代将軍・足利義満により定められた「京都五山」第4位に選ばれた京都を代表する寺院の一つで、室町時代より残る「三門」は国宝に指定、それ以外にも数多くの国指定重要文化財/国登録有形文化財の建造物を残しています。昭和時代の京都を代表する作庭家・重森三玲によって「方丈」の周りに作庭された枯山水庭園『八相の庭』は昭和時代以降の代表的な日本庭園の一つで「東福寺本坊庭園」として国指定文化財(国指定名勝)。
これまで何度も訪れていますが、2026年の『ARTISTS’ FAIR KYOTO 2026』の際に訪れた写真を追加して更新。通常は立ち入れない「大書院」前のお庭の写真も!

その歴史について。鎌倉時代の1236年(嘉禎2年)、摂政や関白をつとめた九条道家(藤原道家)により九條家の菩提寺として創建された東福寺。奈良の大寺院『東大寺』『興福寺』の様な大寺院としたい!という思いから、その二寺から一文字ずつ「東」「福」の字を取り命名されたと言われます。
そんな建立の経緯から創建当初から京の都最大の伽藍をほこったとされ、境内に現存する中で最も古い「三門」は国宝。駅や駐車場方面から来る人がくぐる「日下門」を入ってすぐの禅堂/東司/浴室/『常楽庵』(開山堂・普門院)などが国指定重要文化財。

明治時代にも火災で多くの建造物を焼失しているため、本堂・方丈・庫裡・通天橋(紅葉の名所に架かる橋として有名)など現在の伽藍を彩る寺院建築も明治時代〜昭和時代中期にかけての再建ですが、それら&築地塀/唐門/恩賜門(後述の庭園の中央にある唐門)も2024年に国登録有形文化財となりました。

国指定文化財となっている庭園は「本坊」内の方丈の四方にあります。冒頭の通り、昭和の京都を代表する作庭家・重森三玲によって1939年(昭和14年)に作庭された枯山水庭園で、のちに名声を得る氏のキャリアの最初期に手掛けられた代表作の一つ(出世作)であり、昭和という比較的新しい時代の代表的な日本庭園の一つ。

「八相の庭」の名は、方丈をぐるっと囲む4つの庭に表現された「蓬莱」「方丈」「瀛洲」(えいじゅう)「壺梁」(こりょう)「八海」「五山」「井田市松」「北斗七星」の八つのポイントを“八相成道”にちなんでつけられたもの。
その詳しい解説は、重森三玲の孫・重森千靑さん主宰の“重森庭園設計研究室”の監修で東福寺公式サイトに掲載されているのでそちらを見ていただくとして、ここでは簡潔に。(?)

■方丈・南庭
上で書いた通り、建物の四方ごとに庭園のデザインが変わりますが、そのうち最初に目に入るお庭が2つ。その一つは、方丈から正面に眺める(順路で言うと、最初に渡る橋の左手側に現れる)「南庭」。こちらは本坊庭園の中では最も古典的な雰囲気で、禅を感じさせる石庭。ここでは先の要素の中から「蓬莱」「方丈」「瀛洲」「壺梁」、そして右手側にある苔の緩やかな築山が「五山」を表しています。
要素の多さからもこの庭園が主庭と言える。あと“最も古典的な”と書いたけれど、石をここまで思い切って立てたり寝かせたりする表現は――その後の「重森三玲らしさ」の特徴になる一方で、それ以前はあまり積極的には用いられないデザイン感だったのでしょう。

■方丈・東庭(北斗の庭)
最初に視界に入るもう一つのお庭は、橋の右手側にある「東庭」。
南庭が信仰の世界を表す古典的な雰囲気…である一方で、こちらは円柱型の石材で星座、“北斗七星”を表現した斬新な枯山水庭園。後述しますが、東京の美術館での個展のタイトルにもなりました。

■方丈・西庭(井田の庭)
順路で言えば「南庭」の先。まるっと刈り込むことが多い「サツキ」を、きれいな四角で刈り込んで市松模様となるようデザインしたお庭。幾何学的なだけではなく、それが市松模様であること+苔~白砂で曲線を描くことで、洋ではなく疑うことなく和を感じさせる。
また、普通は目立たせることの多い「三尊石」を隅にちょこんと置いているところも、それまでの寺院庭園のデザインとは一線を画している…

■方丈・北庭(小市松模様の庭)
そして、雑誌やテレビでも取り上げられる機会の多い?苔と石板で市松模様が描かれた「北庭」。今やこの姿こそが“東福寺のお庭!”という印象ですが、先述の重森千靑さんんお解説によると元々は「白砂と石板による市松模様」だったそうで、こんな苔庭ではなかったんだそう。近年、京都は猛暑で“苔がピンチ”と言われたりするので――いつか苔の維持の方が難しくなった時には、作庭当初の姿を復元されることもあるかもしれませんね。

■大書院庭園(最後の2枚)
2026年のAFKで公開された通常非公開の枯山水庭園。これは重森三玲の作庭ではない、はずですが、禅寺のお庭…というテーマの中で、中央に直線的な水路を表現し、和洋折衷を感じる現代的な枯山水庭園。

作庭家としてはキャリアが浅かった重森三玲に当時のご住職が与えた条件は“本坊内にあった資材を一切廃棄することなくリサイクルして作庭すること”。前衛的な作風と思わせながらも、実はとてもエコな庭園だったんですね。(大書院庭園にもsの精神が受け継がれているのだと思う)

個人的な履歴で言うと――庭園に興味を持ち始めたところで、東京・ワタリウム美術館で2011年に開催された『重森三玲 北斗七星の庭_展』を鑑賞したので、“枯山水庭園”というジャンルを深掘りするきっかけとなったのが重森三玲さんの存在でした。
この時代以前の枯山水庭園を知らずに東福寺の庭園を見に行ったので『この作品が出てきた時に衝撃的だった』というような感覚ではないのですが、逆にものすごくシンプルに「市松模様の庭っていいな」みたいなそういう感覚。

また重森三玲がこの庭園をいきなり作ることができたのは――「センスから生まれた」ものばかりではなく、「大量のインプットがあったからこそ生まれた」んだろう、ということを最後に書きたいと思います。
この庭園が生まれたのは重森三玲が日本全国の庭園の実測を行った後のこと。当然それ以外の絵画やいけばなのキャリア・知識もそこにミックスされ“歴史を踏まえながら、これまでと違うこと”が出来たのだと思う。インプット大事。

東福寺周辺には、重森三玲による庭園が多く残されています。下記の「関連記事」からチェック!

(2012年1月、2015年3月訪問、2016年12月、2018年3月、2020年6月・8月、2025年9月、2026年2月など訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

JR奈良線・京阪本線 東福寺駅より徒歩10分
最寄りバス停は「東福寺道」バス停下車 徒歩10分

〒605-0981 京都府京都市東山区本町15丁目778 MAP

投稿者プロフィール

イトウマサトシ
イトウマサトシ
Instagram約9万フォロワーの日本庭園メディア『おにわさん』中の人。これまで足を運んで紹介した庭園の数は2,000以上。執筆・お仕事のご依頼も受け付けています!ご連絡はSNSのDMよりお願いいたします。
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