アートギャラリー、カフェとして新たな命が吹き込まれた、近代京都の呉服商・木崎安之助の京町家と庭園。
ザ ターミナル キョウト/旧木崎家住宅について
「The Terminal KYOTO」(ザ ターミナル キョウト)は昭和初期に建てられた京町家を復元・リノベーションして開かれているカフェ、アート・ギャラリー、イベントスペース。
京都市の姉妹都市パリが毎年10月5日に行っている現代アートの芸術祭“ニュイ・ブランシュ”の京都版、『ニュイ・ブランシュKYOTO』の2019年の展示会場になっていたことで知り、初めて訪問。そして2020年・2021年は祇園祭の期間に再訪。山鉾“岩戸山”の祭壇が置かれ、その期間は提灯や床の間のしつらえも異なっていました。
四条烏丸の交差点や国指定名勝庭園もある『杉本家住宅』から程近く。
元は京呉服の名門『木崎呉服店』の創業者・木崎安之助の自邸として昭和7年に建てられたもの。ちなみに杉本家も元は呉服屋、昔からこの付近は呉服屋街だった――的なことを地元の方がおっしゃられていた。だから現代にかけて四条通りはショッピング街に変貌していったのかな。
そんな京町家も姿を消すものが少なくない中、現ターミナルキョウト、旧木崎家住宅は2013年から修復に入り、2014年にオープン。その模様はツカキグループ代表・塚本喜左衛門さんのブログで紹介されています。
■ついに出来ました! 京の町家の復元:喜左衛門ブログ | 京都の専門商社、ツカキグループ
が、いわゆる施工業者のみならず、このプロジェクトの立案者のブログも(放置されているけど)残ってて。こちら。
この方が現在もこの会社に在籍中なのかは不明ですが――こうして、完成形だけを観る立場としては、解体・施工作業も本当は立派な“ストーリー”なんだよなぁってこのブログを見ていると気付かされる。
かつては住居と仕事場が兼ねられたものだったので、現在の建物内も玄関・土間が非常に広く造られている。そこから坪庭を一つの境界として奥が座敷、その奥には京町家の庭としてはとても奥行きのある日本庭園――へと繋がってゆきます。現在はその座敷がカフェ・スペースとなっていて、伝統的な和風の座敷とモダンで白いタイルを基調としたキッチンが隣り合わせになっていて。そのコントラストがめっちゃかっこいいの!
そして京町家の庭園としては奥行きのある“奥庭”。これも昭和初期に作庭されたものから基本はそのままで、大きな鞍馬石の沓脱石など庭石は当時のままだそう。光悦垣の奥には茶室もあるそうです。
建物を手掛けた棟梁・川嶋佐兵衛さんという方の情報もさほど無いのですが、名前で検索すると北区にある『鷲田家』を手掛けたというページが出てくる。
鷲田家の写真に写っている伽藍石、飛石、白砂、苔や植栽の感じはターミナルキョウトともよく似ている。庭師さんも同じ方だったのかもしれませんね。面白いのがこの『鷲田家』が出来た当時のご当主・井上元次郎も呉服業を営んでいたと。呉服屋ネットワークがそこにはあるのかも…。
『ニュイ・ブランシュKYOTO』で展示していたのは、フランスが国外に保有する3つのアーティスト・イン・レジデンスのうち一つ、京都の『ヴィラ九条山』で滞在制作するアーティストの作品。
そのうち写真を載せている主なもののみ。庭園の前にある大きな下駄(11枚目)は写真家、イザベル・ルミンの作品。2階の間にあった丸い球体たちの作品は、ミリン・グエン、パブロ・サラン、山崎康の共作(17枚目)。
そして直近で行われた2022年4月に行われていたのは『室礼 SHITSURAI』展。18枚目、2階の部屋が森の杉林みたいな空間になっていて驚いた――フレデリックレアさんの作品。そして1階の坪庭に配されたのはカヌー。山本雄次さんの作品。
なかなか京町家をここまで思い切って、攻めて使っているギャラリーも他に無いような気がして…不定期で様々な展覧会が行われているので、また今後のイベントもチェックして足を運びたい!
(2019年10月、2020年7月、2021年1月・7月、2022年4月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)