物理学者で夏目漱石に師事した文人でもあった寺田寅彦の邸宅跡に残る茶室や枯山水庭園。高知市指定史跡。
寺田寅彦記念館・寺田寅彦邸跡について
「高知市寺田寅彦記念館」(てらだとらひこきねんかん)は近代の物理学者/随筆家/俳人・寺田寅彦が少年時代を過ごした邸宅。「寺田寅彦邸跡と居室」として高知市指定史跡。随筆『庭の追憶』で書かれたアオギリのある枯山水庭園が見られます。
2021年年始に高知を訪れた足で初めて鑑賞しました。高知藩主・山内家の大名屋敷の遺構が残る『三翠園』の中でも書いたのですが、高知市の庭園は国指定名勝の『竹林寺庭園』以外の印象って殆どなかった。だけど明治維新でも勝利した側の城下町、武家ゆかりの庭園がもっとあっていいはず…。
この寺田寅彦記念館は高知城のすぐ北西に位置しています。寅彦の父・寺田利正がこの地の邸宅を購入し移り住んだのは明治13年。当時の邸宅は太平洋戦争で「離れ」を残して焼失してしまったため、現在見られる主屋と茶室はそれぞれ1984年(昭和59年)、1977年(昭和52年)に再建されたもの。
元の邸宅の築年代については書かれていないので明治初期(近代)の民家に類するのだと思うけれど…父・利正は元は土佐藩の下級武士。この邸宅も“武家好み”といった感じもする。
寺田寅彦が少年期の4~19歳までをこの地で過ごしました。その後、熊本時代の夏目漱石に薫陶を受け、文筆家として漱石に師事。正岡子規とも親交があった一方、物理学者としてアインシュタインが来日した際には歓迎会に出席したマルチロールぶり。
主屋・茶室が古写真や寺田家の家相図を下に復元された一方でその枯山水庭園については特にふれられておらず…おそらく再建の際に、再現ではなく新たに作庭されたものといった趣き。
寅彦は発表した随筆で、少年期に過ごしたこの庭のことを記しており、“大杯”という種類のカエデやカシワの木、ノウゼンカズラに寒竹など寅彦が記した樹種を用いつつ、アオギリ近くの石灯籠や飛び石などが再現されています。
建物内では“寺田寅彦記念館友の会”のガイドさんが寺田寅彦や邸宅について解説してくださるので、ぜひそちらもお聞きください。
(2021年1月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)