戦国大名・朝倉氏や柴田勝家も信仰し国宝も所蔵する三國湊最古の寺院。福井県最初の国指定文化財庭園と、“足立美術館庭園”作者・中根金作による枯山水。
瀧谷寺庭園について
「瀧谷寺」(たきだんじ)は戦国大名の朝倉氏や柴田勝家、福井藩主・松平家、丸岡藩主・本多家、有馬家に厚く保護されてきた、湊町・三国最古の寺院。
本堂・書院の奥にある池泉鑑賞式庭園が国指定文化財(国指定名勝)であるほか、本堂や柴田勝家の寄進で建立されたと伝わる山門(鐘楼門)など6棟の建造物が国指定重要文化財。また『足立美術館』の庭園が有名な造園家・中根金作作庭による枯山水庭園も。
2023年春に4年ぶりに拝観したのでその際の写真を追加して紹介。
その歴史について。江戸時代〜近代にかけては北前船の寄港地として繁栄した“三國湊”。中世まで奈良『大乗院』の荘園で、そんな当地に紀州の大寺院『根来寺』の睿憲上人によって南北朝時代の1375年(永和元年)に創建されました。以来、京都『智積院』を総本山とする真言宗智山派の寺院として今に至ります。
戦国時代〜江戸時代にかけて前述通り越前国の戦国大名・朝倉氏、柴田氏、福井藩主・松平家、丸岡藩主・本多家、有馬家といった歴代の領主の祈願所となった滝谷寺。最も古いものとしては室町時代に建築された「鎮守堂」を筆頭に、江戸時代初期〜中期に建築の観音堂・本堂・庫裡などが国指定重要文化財。観音堂は三国の天才彫刻家・山田鬼斉による欄間の彫刻にも注目。
また国宝『金銅宝相華文磬』(平安時代の楽器)も所蔵し、その他の古美術工芸品とともに宝物殿にて公開されています。
国指定名勝の庭園は本堂・書院の奥にあります。本堂の建築年代と同時期、江戸時代初期〜中期にかけての作庭と推測されている池泉鑑賞式庭園で、福井県では“庭の国宝”国の特別名勝となった『一乗谷朝倉氏庭園』や大名庭園『養浩館庭園』よりも先に(最初に)国指定文化財に選ばれました。
裏山の斜面を活かして、その中にツツジやマツ、シイや高野槙が自然の景観を作り出している庭園は、鑑賞式でありながらも回廊を歩きながら景色の変化を楽しめる位の大きさを有します(515坪)。
また庭園の上段にある客殿はその他の建造物より一足遅く大正3年の建築で、“福井県内における代表的な近代和風建築”の評価も。普段の拝観では立ち入ることができませんが、上段部から眺めた庭園もまた美しいそう。
この名勝庭園に負けじと、観音堂前庭の枯山水庭園/石庭も苔の美しい庭園で――。九つの石で心字を描き、観音菩薩の慈悲の心と表現したというこのお庭は『足立美術館庭園』が有名な中根金作(中根庭園研究所)による1968〜1972年の設計施工。足立美術館より前、氏の初期の作品でもあり、氏の作品の中でここまでシンプルな苔+岩、という庭園はあまり見ない気も――。
順路の終盤にある池泉庭園“龍泉庭”は瀧谷寺の開山の由来から作庭された庭園で、名勝庭園と比べても大きな岩による石組が特徴的(※2023年時点では倒木などの影響で立入不可)。生い茂る夫婦杉は古来から火伏の守護神として信仰されているそう。
また瀧谷寺は『椿のある寺百選』にも選ばれている椿の名所でもあり、3月下旬に訪れると参道にたくさんの落椿のある美しい光景が見られます。四季の花々も楽しめる名勝庭園は、北陸新幹線延伸でより身近になります!
(2015年10月、2019年3月、2023年4月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)