髙梨氏庭園(上花輪歴史館)

Takanashi-shi Garden, Noda, Chiba

千葉県最初の国指定文化財庭園!“キッコーマン”創業家の一つ・高梨家の江戸時代から続くお屋敷全体が庭園として国指定名勝。住宅内覧予約での見学がオススメ!

庭園フォトギャラリーGarden Photo Gallery

高梨氏庭園(上花輪歴史館)について

「上花輪歴史館」(かみはなわれきしかん)は江戸時代から醤油醸造で栄えた千葉県野田市にある・博物館。敷地全体が「高梨氏庭園」(たかなししていえん)として国指定文化財(国指定名勝)となっています(千葉県の庭園として&昭和年代の庭園として最初の国指定名勝でもある)。「野田市の醸造関連遺産」として近代化産業遺産にも認定。(*なお住宅の建築内部の見学を希望の際は要事前予約。)
2023年春に7年ぶりに訪れたのでその際の写真を中心に紹介。

醤油メーカー大手『キッコーマン』の企業・野田市。野田の醤油醸造の歴史は古く室町時代(戦国時代)頃から。この「上花輪歴史館」の運営母体・高梨家(高梨本家)が醤油醸造に乗り出したのは江戸時代初期の1661年(寛文元年)からで、江戸時代には幕府の「御用醤油」の指定を受けます。
そして明治〜大正時代に『旧茂木佐平治邸庭園』(国登録名勝)の茂木佐平治家ともに現在のキッコーマンへと続く「野田醤油株式会社」が創業されました(現在も宮内庁へ納める御用醤油を製造)。

高梨家の歴史は更に古く、江戸時代初期に19代目・高梨兵左衛門が醤油醸造をはじめた時点で当時の「上花輪村」の名主(大庄屋)をつとめる家柄でした(現在残る建築のうち最も古い門長屋は江戸時代中期の建築で、屋敷の面影も感じられる)。
江戸時代〜昭和の戦前までの住宅建築と庭園、収蔵する古民具や古文書・醤油醸造関連資料の展示/公開のため1994年(平成6年)に「上花輪歴史館」が開館しました。(なお隣接する広い駐車場はかつての醤油製造蔵の跡地)

この上花輪歴史館、文化財として指定を受けているのは「庭園」なのだけれど、実はその詳細を紐解くと「お屋敷全体が庭園として国指定文化財」。なので敷地内にある主屋(1931年:大森茂/大林組により建築)や、敷地奥の林(人工林)も国指定名勝の一部。

庭園的なエリアも幾つかあるのですが、メインは江戸時代末期に建築された書院の前に広がる芝生と飛び石を主体とした庭園。書院から見て正面の柏の木、左手のマツがその歴史を感じさせつつも、こちらが作庭されたのは上記の主屋と同時期の昭和初期。ふんだんに使われている京都の鞍馬石、軒下の石畳などからは近代の京都の庭園文化が持ち込まれた雰囲気も。

初めて見学した時は、大きな池があるでもなく、京都らしい…というわけでもなかったこの庭園の魅力が良く分からなかったのだけれど、久々に来てみるとこの庭園の魅力は「茶室」「数寄屋建築/和風建築」との調査と自然のロケーション。主庭園の奥にある茶室「眺春庵」。森の中にある茶室…という雰囲気+江戸川へと通ずる堀を眼下にのぞむ、高台からの眺めが◎。

そして主庭園とは逆側の「主人室」や「残月亭」の前でも素敵な数寄屋建築+茶庭…という雰囲気を味わうことができる。今回も建築の内覧予約のことをすっかり忘れていたけれど、絶対建築と合わせて見た方がいい…のでこれから行く方はぜひそちらをご予約の上で訪れてみて!

(2016年3月、2023年5月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

東武アーバンパークライン(東武野田線) 野田市駅より徒歩15分強
野田市駅より路線バス「香取」バス停下車 徒歩5分

〒278-0033 千葉県野田市上花輪507 MAP

投稿者プロフィール

イトウマサトシ
イトウマサトシ
Instagram約9万フォロワーの日本庭園メディア『おにわさん』中の人。これまで足を運んで紹介した庭園の数は1,900以上。執筆・お仕事のご依頼も受け付けています!ご連絡はSNSのDMよりお願いいたします。
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