但馬国に飛鳥時代に創建された古刹の小堀遠州作庭説もある文化財庭園。県指定文化財の室町時代建築の本堂や国重要文化財の仏像も。
帝釈寺庭園について
【拝観は数日前に要事前予約】
「喜見山 帝釈寺」(たいしゃくじ)は兵庫県の北部、日本海に面し町全体が“山陰海岸ジオパーク”に属する香美町にある飛鳥時代に創建された古寺。室町時代の建立と推定される本堂が兵庫県指定重要有形文化財、大名茶人・小堀遠州の作庭説もある枯山水庭園が香美町指定文化財(名勝)となっています。また国指定重要文化財の“木造聖観音立像”も所蔵。
2021年9月に初めて訪れました!これまでも何度か紹介している庭園研究家・西桂さんの『ひょうごの庭園〜図絵で読み解く〜』。兵庫県の庭園を巡る際に大変参考にしている本なのですが、その中で「ここ良いなあ、気になるなあ」と思っていた一つが帝釈寺庭園。事前に電話予約をして都合が合えば拝観できます。(*また目的は庭園だったのですが、特別に許可をいただいて“聖観音立像”の写真も紹介しています。)
その歴史は古く、創建に先駆けて御本尊の帝釈天をまつるお堂が建立されたのは676年(白鳳4年)。その作は聖徳太子と伝わり、仏教排訴派により大阪湾に投げ込まれたものがこの地に流れ着いたのをすくい上げ、海上安全・五穀成就の守護身として信仰しはじめたのがはじまり。
参道に横たわる一枚岩“枕石”はその帝釈天像が波打ち際で“枕”のようにしていた岩で、地元の方が御本尊とともにこの地に運んだと言われがあるもの。
そして飛鳥時代の末の702年(大宝2年)に法相宗の開祖・道照上人が訪れ一大道場を建立、寺院として創建されました。その際に道照が帝釈天の脇仏として制作したのが、国指定重要文化財の厄除聖観世音菩薩像(*文化財のデータとしては平安時代の制作とされています)。室町時代には七堂伽藍が揃い、三十三坊を有する大寺院に。
現在は一帯はビーチに近い民宿街になっていて(めちゃめちゃ多い)、帝釈寺の境内の外で大寺院の面影を感じることはあまり無いのだけど、帝釈寺のお堂そのものは今もすごく立派なものが残っていて、建築年代も戦国時代の真っ只中の1500年代中盤とかなり古い(その後江戸時代・明治時代に一部改修)。
本堂と客殿の間にある香美町指定名勝の“準築山式枯山水庭園”。この江戸時代初期に作庭された庭園、地元では?寺伝では?小堀遠州の作庭と伝わるとか。
中央にべたーんと置かれた巨石がこの枯山水で一番気になるポイント。これは礼拝石と神仙島を兼ねたもので、その周囲に宝舟など舟石が配された“祝儀思想の蓬莱式庭園”。めでたいやつ。本堂を奥に見て一本の立石を見せる枯山水庭園の構成は奈良県指定名勝の室町時代の庭園『願行寺庭園』を思い出す。小堀遠州かはさておき、京都の禅の枯山水とはまた異なるデザイン性がすごく好き…。
先日、九州の久留米市指定名勝『上野家庭園』の中でも書いたことだけど――新旧タイプ問わず色々な庭園を紹介するけど、この庭園のような国ではなく“市町村”の名勝で、観光スポットにはなっておらず、新しくもないから話題になることはない、専門家すら話題にしない、歴史に埋もれてしまいそうな庭園こそ個人的には推したい庭園だったりする。
この帝釈寺の石庭も兵庫県民から見てもアクセスしづらい場所だと思うけど(香住駅まで行けば近いのだけど)、気になった方はぜひ拝観に訪れて欲しい庭園!
(2021年9月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)
アクセス・住所 / Locations
JR山陰本線 香住駅より徒歩20分強(駅にレンタサイクルあり)
香住駅より町民バス「下の浜」バス停下車 徒歩2分(日中は1時間に1本程度あり)
〒669-6564 兵庫県美方郡香美町香住区下浜599 MAP