イニエスタ選手も訪れた、神戸を代表する日本庭園。明治時代の近代日本庭園と共に国指定重要文化財の近代建築も。国登録名勝。
相楽園 / THE SORAKUENについて
「相楽園」(そうらくえん)は神戸市の中心部、兵庫県庁からすぐの場所にある日本庭園。明治時代に作庭された兵庫県および神戸を代表する日本庭園として国の登録記念物(名勝地関係)になっています。また園内には国重要文化財の“船屋形”、洋館“旧ハッサム住宅”、近代建築“旧小寺家厩舎”も。
神戸の中心繁華街から最も近い歴史的日本庭園。それゆえ「いつでも行ける」と思ってしまってしばらく行ってなかったけど、2021年10月に5年半ぶりに訪れたのでその時の写真を中心に紹介!
その歴史について。神戸市長や衆議院議員を6期つとめた政治家・小寺謙吉の父親で実業家の小寺泰次郎の邸宅・庭園として、1885年(明治18年)頃~明治の終わりにかけて造営された“相楽園”。この名前になったのは1941年(昭和16年)に神戸市所有の施設として公開が開始された時からで、小寺邸の時代には“蘇鉄園”と呼ばれていたそう。その名の通り、門をくぐってからのアプローチには大きなソテツの木が5本、6本と並びます。
坂を登った先にある2つの近代建築。円型の塔が特徴的な煉瓦造りが「旧小寺家厩舎」(設計:河合浩蔵)、そして洋館「旧ハッサム住宅」。往時の小寺邸だった建物は1945年に太平洋戦争の空襲で大部分が焼失、厩舎が当日から唯一残る貴重な建築。
そして旧ハッサム邸はレトロな洋館が立ち並び、国の重要伝統的建造物群保存地区でもある神戸の“北野異人館街”に元々あった住宅で、1963年(昭和38年)に相楽園内に移築されました。洋館前の地面に刺さった煙突は、阪神淡路大震災で落下したまま保存されているもの。
そして2万平方メートルのうち大部分を占めるのが日本庭園。先の洋風な雰囲気から一転、数多く植えられたマツやモミジ、ツツジの植栽や複数の滝~水の流れによる池泉回遊式庭園。斜面の中腹という神戸特有の地形も活かした起伏や高低差のある庭園で、庭園の下部からは六甲山地の借景が、庭園の上部からは――今はビル景だけれど、かつては海まで眺められたんだろうなあ。
そんな池泉に沿って建ち、日本庭園としての魅力を引き立たせているのが重要文化財の“船屋形”と茶室“浣心亭”(かんしんてい) 。先に書いた通り小寺家時代のものは焼失しているので、いずれも戦後に庭園に加わったものだけれど――船屋形は姫路藩主が実際に船遊で使っていた“御座船”の屋形部分で江戸時代中期の建築。近代に民間の手に渡り茶室として利用された後、昭和後半に前所有者・牛尾吉朗氏の神戸市内の邸宅から寄贈・移築されました。茶室“浣心亭”も現代の建築。
そして2018年、庭園上部のコンクリート造り建築“相楽園会館”が“THE SORAKUEN”としてリニューアルオープン。「カフェ 相楽園パーラー」「レストラン 相楽」では相楽園と神戸のビル景を一望しながら食事/カフェを楽しむことができます。現代のイノベーティブ日本庭園な中庭も。
相楽園が一年で最も彩られる季節は4月下旬~5月上旬のツツジの季節。GWにかけて行われる《つつじ遊山》の期間中には洋館「旧ハッサム住宅」の内部公開も行われます!
来園者数や庭園の規模を考えれば国指定名勝の庭園にも全く引けを取ってない庭園なんだけど、前述の通り“移築してきた建築を含めて、現在の相楽園”になってるから、今更「明治時代の元の姿に――」というわけにはいかないってことかな。言い換えると、浣心亭や旧相楽園会館の建築年代から50年ぐらい建った段階で、改めて国指定文化財になるのかもなとも思ったり。
2018年にはあの!アンドレス・イニエスタ選手のInstagramにも登場した相楽園(…休館日だったみたいだけど。その後、会見の場としても訪れています)。“阪神間モダニズムの代表的日本庭園”として、地元の方のみならず今後も世界から訪れた方々の迎賓の場にもなってほしい庭園!
(2009年12月、2016年5月、2021年10月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)
アクセス・住所 / Locations
JR神戸線・阪神本線 元町駅より徒歩10分
神戸市営地下鉄西神・山手線 県庁前駅より徒歩3分
阪急神戸線 神戸三宮駅より徒歩15分
〒650-0004 兵庫県神戸市中央区中山手通5丁目3-1 MAP