
世界的建築家・谷口吉生が設計した稀少な茶室/純和風建築。浜松市中心部では貴重な紅葉の名所庭園は昭和時代を代表する造園家の興した岩城造園の作庭。
浜松市茶室「松韻亭」庭園について
浜松市茶室「松韻亭」(しょういんてい)は静岡県浜松市の公共の茶室施設。その建築はニューヨーク近代美術館(MoMA)新館なども手掛けた現代日本を代表する建築家のひとり・谷口吉生(谷口建築設計研究所)の設計で、氏の作品の中では稀有な純和風建築。またその庭園は昭和時代の東京を代表する造園家・岩城亘太郎の興した岩城造園の作庭。
これまで何度か訪れていますが、2025年に久々に訪れたので写真を追加して改めて紹介。
江戸幕府将軍・徳川家康や江戸幕府の老中・水野忠邦、松平信祝らが居城とした城郭『浜松城』。その復元天守を中心とした都市公園『浜松城公園』の北部分、「亀井山」という小高い丘の自然を残しながら1997年(平成9年)にオープンした市民茶室「松韻亭」。
…浜松市出身の中の人、地元で暮らしていた頃は実は全く気に留めたことがなく…浜松駅やローカル線・遠州鉄道の駅からも微妙に遠いし。しかし庭園や建築に興味を持ち始め、谷口吉生さんの作品について調べる過程で、「え、浜松にも作品がある!?」と知り。以来何度も訪れていますが――国内外に大型な現代的な建築を残した谷口さんの中で、稀少な純和風建築――そして庭園にも氏の意向が反映されているとのことで、(その空間の良さはもちろん)これは非常に貴重な建築/庭園なのでは…!?!?という想いが増している…。
「茶室」だけれど、オールドスタイルではなくどちらかと言えばモダン…「現代数寄屋建築」といった趣きが白砂の広がる玄関前からも感じられる松韻亭。敷地の手前は立礼席や広間、そして能舞台を備えた主棟「松韻亭」、そして庭園を挟んだ奥には四畳半の小間「萩庵」から構成されます。建物の施工は創業100年以上の歴史をほこる東日本の数寄屋造建築の第一人者・水澤工務店。
庭園は立礼席での呈茶(500円)をいただいた後に回遊することができます。この立礼席にも見どころがあり、天井の照明には谷口吉生さんの父・谷口吉郎の手掛けた『赤坂離宮 和風別館“游心亭”』と同じ六角形になっている(オマージュ)こと。このモチーフは谷口さんがこの2年前に手がけた『豊田市美術館 茶室“童子苑”』でも見られます。
豊田市美術館の童子苑とこの松韻亭、いずれも谷口吉生さんの残した稀少な純和風建築でめちゃくちゃ素敵な空間ですが、全く異なる印象を受けるのは「庭園」。主棟から萩庵まではごく緩やかな斜面になっていて、その中に小川の“流れ”が設けられた池泉回遊式庭園(流水式回遊式庭園)で、開放的な空間から萩庵の周囲の露地へと至る――という庭園になっています。秋の紅葉はもちろん、現代的で自然が決して多くない浜松の中心部において、隔絶されたかのような木々の風景も◎。
庭園の作庭を手がけたのは冒頭の通り、東京の有力作庭家を祖とする岩城造園(現・岩城)で、現在も時折岩城さんが管理に入られているとか。水澤工務店:水澤文次郎と岩城造園:岩城亘太郎のタッグと言えば、設計者は異なりますが、御殿場の元総理大臣の別荘『東山旧岸邸』の流れのある庭園なんかも連想する―-
令和年代に入り、国土交通省による『ジャパンガーデンツーリズム』の第一弾に登録された『アメイジングガーデン・浜名湖』の構成庭園にこの松韻亭が選ばれたり、2024年には第16回静岡県景観賞優秀賞(日本造園建設業協会静岡県支部賞)を受賞…と、建設から25年超となった昨今、この茶室・庭園が再評価(?)されつつある気も。庭園ファンのみならず、谷口吉生ファン、建築ファン…そして何よりまだ訪れたことのない地元の方々に一度訪れて欲しい!
(2013年3月、2015年11月、2020年12月、2025年11月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)
アクセス・住所 / Locations
JR東海道新幹線 浜松駅より約2km(徒歩25分)
遠州鉄道 遠州病院駅より徒歩15分
浜松駅より路線バス「コンコルド前」「鹿谷町南」バス停下車徒歩5分
〒432-8014 静岡県浜松市中区鹿谷町11-4 MAP
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