山陰の石楠花・花菖蒲の名所。現代の有名造園家・伊藤邦衛も設計に関わった回遊式庭園と園主自ら作庭の出雲流庭園。
石照庭園について
「石照庭園」(せきしょうていえん)は島根県雲南市に平成年代(2000年)に開園した日本庭園。メインの池泉回遊式庭園は東京『北の丸公園』など多くの大型日本庭園を手掛けている現代の代表的造園家のひとり・伊藤邦衛も設計・作庭に参画。1万株のシャクナゲや、中国地方最多の400品種の花しょうぶが見られる花の名所としても知られます。
*記事として先に紹介していましたが、2022年6月初旬に初めて訪れました!山陰の花菖蒲には少し早かったけど、新緑の庭園を堪能。
14世紀中ごろ、現在の滋賀県多賀町から出雲国へと移住した堀江家。江戸時代以降たたら製鉄のメッカとなった奥出雲において、石照庭園のある石王山でもかつて砂鉄が採取され現在もその遺構(鉄穴流し跡)を残します。
石照庭園は堀江家代々が暮らした邸宅地と庭園を活かす形で2000年に開園。園主・堀江洋伸さんは堀江家の第二十三代のご当主であり、自然石を用いた造園を得意とし40年以上の歳月をかけ自らこの庭園を作庭されました。
石王山を含めて約2ヘクタールという広大な園内、駐車場から入ってすぐの場所にあるのが石王山を借景とした主庭の池泉回遊式庭園。こちらは1980年代に園主と伊藤邦衛により設計されたもので、氏いわく《出雲という神宿る自然と文化をもつこの地で生まれ育った園主の夢を形に》したという庭園で、奥には落差10数メートルの大滝が、そして近景には池中の舞台と見立てた芝生の島と東屋が配置されています。
東京の作庭家が携わった庭園がある一方で、当地の“出雲流庭園”のスタイルが垣間見えるのが母屋と数寄屋造りの別邸の周囲にある庭園。
江戸時代から残る蔵の前にある大松が迎える庭と、母屋横にある苔庭は代々から受け継いだ庭園。数寄屋造りの別邸の茶室から臨む庭園は、山奥から数kmにわたって水路を引いた自然流の滝が見所の庭園で、その滝石組には主に広島県湯来町(現・広島市佐伯区)で産出される緑輝岩が用いられています。
数寄屋造りの別邸と園内にある観音堂(石照寺)の建築を手掛けたのは、島根県津和野町の『乙女峠 マリア聖堂』の作者・稲村重清氏。伝統建築にも造詣が深いキリスト者として、1940年代に広島市内にある長束修道院の建築修繕や、ローマンカトリックの指示に応じてマリア聖堂の建築を担当。
その後故郷に帰って大工として暮らしていたところ、堀江園主との出会いから再び本格的な建築に携わりはじめ、この庭園内の観音堂、茶室など、園内各所に匠の技を残しています。
そして石王山の山林には一万株のシャクナゲが植栽されているほか、遊歩道では山の自然を感じることができます。そして最後、お休み処“古地上”では地元の牧場の生乳によるアイスや地元のドリンクもあります。奥出雲を訪れた際にはぜひ立ち寄ってみて。
(2022年6月訪問時点の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)
アクセス・住所 / Locations
JR木次線 木次駅より路線バス「石」バス停下車 徒歩2分
JR木次線 出雲三成駅より約8km(駅にレンタサイクルあり。坂道だからオススメは出来ないけど)
〒699-1342 島根県雲南市木次町平田472 MAP