JR札幌駅からすぐ。明治天皇の休息所にもなった近代和風建築、その庭園は明治時代に来日した園芸家:ルイス・ベーマー作庭。“札幌最古の公園”旧・偕楽園も。
清華亭/旧偕楽園について
「清華亭」(せいかてい)はJR札幌駅の程近くに残る明治時代の近代和風建築。札幌市指定有形文化財。建物の周辺にはかつて札幌で初の都市公園『偕楽園』が広がり、現在はその一部のみ『偕楽園緑地』(偕楽公園)として開放されています。『清華亭と旧偕楽園周辺』として「北の造園遺産」に選定。
JR札幌駅北口を出て北西へ500メートル。北海道大学のキャンパスと道を挟んだ南に建つ「清華亭」。ターミナル駅の駅チカながら観光ルートから外れているから?住宅街にひっそりと佇む歴史的建造物。
清華亭よりも古くこの地に開かれた公園『偕楽園』について。札幌に開拓使が設置され開発が本格的に始まったのが1869年(明治2年)、その直後の1871年(明治4年)に後の初代北海道庁長官・岩村通俊により計画され造園された都市公園。実は『中島公園』よりも古い札幌/北海道で初・最古の公園で、その名の由来は日本三名園の水戸『偕楽園』から取ったとも言われます。(水戸のような“庭園”というわけではなく、農業試験場などが主体の産業公園だったそう)
そんな偕楽園の中に、明治天皇行幸の際の貴賓接待所(休憩所)として1880年(明治13年)に建てられたのが「清華亭」。その行幸の際に宿泊所となったのが国重要文化財『豊平館』、国指定文化財と市指定文化財の差はあれど貴重な建築には変わりありません。命名は二代内閣総理大臣・黒田清隆。
北海道の数ある歴史的建造物のように外観は重厚な洋風な作りですが、洋室(かつての応接間?)に続いて床の間・書院のある和室が連なる和洋折衷建築。
建築の周りの庭園の設計は園芸家:ルイス・ベーマー。北海道の農作物の栽培に貢献した明治のお雇い外国人である氏が残した貴重な庭園で、玄関や書院の前には築山と自然石による石組が配された和洋折衷な庭園となっています。書院前の築山に植わったハルニレの木は作庭当初から残るもので、モミジやドウダンツツジなど日本庭園でお馴染みの樹種から、エゾヤマツツジ、イチイなど北海道らしい樹木も。
そんな偕楽園も明治時代後期に民間に払い下げられ、時代と共に宅地開発も進み縮小。清華亭も一時は料亭や賃貸住宅として利用されたとか(現在は札幌市所有)。清華亭の前にある公園『偕楽園緑地』は僅かに残る偕楽園の跡で、公園の緩やかな起伏のある地形や、かつて園内を流れていた「ヌプ・サム・メム」(野の傍の泉池)を整えた枯流は当時の痕跡なのだそう。
札幌駅からも近い穴場の近代庭園、ぜひ足を運んでみて。
(2024年5月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)