
税務署の一角に残る気になる石組。皇族・久邇宮別邸に隣接した邸宅に大正時代に作庭された庭園…実は近代京都の名庭師・七代目小川治兵衛(植治)の庭園だった…!
左京税務署庭園について
「左京税務署」(さきょうぜいむしょ)は京都市左京区・聖護院にある大阪国税局の管轄する税務署。その一角に古い庭園の遺構が残ります。…そしてその庭園はなんと、近代京都の名庭師・七代目小川治兵衛(植治)とその子・小川白楊による作庭と、2026年発売の佐野静代著『近代の政治家と京都の別荘庭園』(吉川弘文館)で判明…!
初めて訪れたのは2020年。当時の文章も残しながらそのきっかけから振り返る…
「おにわさんも知らないと思う庭園見つけた」
「えー、どこですか?」
「税務署」
「税務署」
といったやりとりで同僚から教えてもらい、初めて訪れたのはコロナ禍の直前。確定申告シーズンには特に多くの方々が往来する税務署の駐車場の一角にお庭が残る…。
…普通に税務署に用事があり訪れた方はきっとスルーしてしまうであろうこのお庭。よく見ると、というか第一印象として、かなり大きな庭石による石組がもうけられ「これは作った当時はかなりお金を掛けて作られたものなのでは…?」といった印象で。
飛び石に沿って築山の上の方まで登ると、独特な「沢」を表現した配石…第一印象として、七代目小川治兵衛(植治)が作庭した『御所西 京都平安ホテル』(2022年閉館)の滝石組に似てるな~と思ったり。
京都を代表する神社『平安神宮』のすぐ北、皇族ゆかりの寺院『聖護院門跡』のすぐ南に位置する左京税務署。現在は幹線道路(丸太町通)に面し、並びには高層のマンション、周囲には多くの戸建てが立ち並ぶ住宅街ですが、歴史をさかのぼると実は皇室やお公家さんの別邸をルーツとします。
立命館大学アートリサーチセンターの『近代京都オーバーレイマップ』(+国土地理院の航空写真検索)を見ると、左京税務署がこの地に置かれたのは昭和20年代。それ以前、大正時代には既にこの地に建物の姿があり、その建物の姿のまま税務署に(昭和20年代の航空地図で見ると『平安神宮』北西部の武道センター(旧武徳殿)の北側に庭園+屋敷っぽい姿が見える)。その後、昭和中期に四角い屋根の建物(現在残るコンクリート造りの建物?)が建ち、その時点で残っていた屋敷は昭和50年代には姿を消し駐車場に…しかしながら、庭園だけは残り。
…とすると、この庭園は大正時代頃に作庭されたもの。
…というのが自分の調べられる範囲でわかった歴史。
敷地内の北西部(これも駐車場の一角)には立派な土蔵も残されているのですが、その蔵の北西の隣接地は昭和年代には『久邇宮別邸』がありました。当時の久邇宮邦彦王といえば昭和天皇の后・香淳皇后の父親。皇族邸と隣接していたのだから、駐車場に残されたこの庭園も格式の高い方のお屋敷に作庭されたもの…という想像はつきます。剪定などの維持費も掛かる中で残されているのだから、歴史的な価値のあるお庭なのだろう。(※なお久邇宮別邸は2000年代に広大な駐車場となり、発掘作業を経て、2026年現在はマンションが建設中です)
…と、ここまでが当初想像していた内容の全て。
そしてこの度、繰り返しになってしまうけれど『近代の政治家と京都の別荘庭園』を出版された佐野静代先生(同志社大学文学部教授)より、研究の結果、あの場所は近代には滋賀/長浜の豪商・浅見又平の京都別邸(旧浅見邸)で、そのお庭が七代目小川治兵衛(植治)と白楊親子が手掛けた京都の旧浅見氏庭園と一致する…と情報提供していただきました。ちなみに、浅見家が長浜に建立したお屋敷/迎賓館『慶雲館』は庭園の作庭が七代目小川治兵衛(植治)と白楊親子で、国指定名勝となっていることで知られます。
…マジか、ビックリ!勿論お庭の特徴として「ここのパーツが七代目のお庭に似ているなぁ」という部分を感じていたにせよ、本当にそうだとは…。いざ、七代目小川治兵衛のお庭、と言われるとやっぱ見る目が変わる(笑)。現代は水は流れていませんが、元々は池泉庭園だったそう。水がない分、その石組が堪能できます。小川治兵衛ファンはぜひ一度訪れてみて。
(2020年3月・4月、2026年3月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)
投稿者プロフィール

- Instagram約9万フォロワーの日本庭園メディア『おにわさん』中の人。これまで足を運んで紹介した庭園の数は2,000以上。執筆・お仕事のご依頼も受け付けています!ご連絡はSNSのDMよりお願いいたします。
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