西田家庭園 “玉泉園”

Nishida-ke Gyokusenen Garden, Kanazawa, Ishikawa

兼六園より古い歴史を持ち、兼六園の池泉から水が引かれている回遊式庭園。数少ない“玉澗様式”の庭園は石川県指定名勝。

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西田家庭園「玉泉園」について

「玉泉園」(ぎょくせんえん)は日本三名園『兼六園』のすぐ近くに位置する江戸時代初期に築庭された池泉回遊式庭園で、石川県指定名勝となっています。ガーデンレストラン「かなざわ玉泉邸」を併設。
一帯には兼六園をはじめ、『成巽閣庭園』や金沢城内に作庭された『玉泉院丸庭園』がありますが、その中では最も古くに作られたと言われる庭園――なのにこれまで足を運んでいなかったので初めて訪れました!(ていうか、こんなに規模な大きい庭園、なんで気づいてなかったんだろう!)

庭園についてはパンフレットの解説が非常に詳しいのでそれに沿って…。兼六園のある高台の麓にある庭園であり、兼六園の敷地の斜面も借景に取り込んでいたという庭園(現在は玉泉園内の樹木でその姿は見えづらい)。メインの池泉にある滝は兼六園の霞ヶ池から水を引き込んでいると言うことから、前田家とこの庭園の繋がりや歴史的にもこの庭園の重要さが伝わります。

「玉泉園」の作庭は加賀藩主前田家の上級武士・脇田直賢(わきたなおかた)が着工を始め、その後江戸時代中期の脇田家四代九右衛の代まで改修が続けられたとのこと。「玉泉園」という名は「玉泉院丸庭園」と同じく加賀藩2代目藩主・前田利長の正室・玉泉院(織田信長の娘でもあります)からとったもので、これは脇田家の創設に玉泉院が関わったことから名付けられたそう。
明治時代に屋敷と庭園が脇田家から西田家に渡ったため、県指定名勝の登録名も「西田家庭園」となっています。

「西庭」と言われる茶庭風のお庭から始まり、池泉式の「主庭」、そして東庭から高台の「灑雪亭露地」へと続く高低差のある回遊式庭園なのですが、この庭園は作庭様式を『玉澗様式庭園』と言うそう。
日本には6例しかないと言う珍しい庭園で、ここ以外では徳島の『徳島城表御殿庭園』『阿波国分寺庭園』、和歌山の『粉河寺庭園』、名古屋の『名古屋城二の丸庭園』、あとは京都の一箇所(どこだろう)…とのこと。(玉澗流でググると、宇和島の『龍華山庭園』も)
「幻の様式」なんて書かれていますが、ここに挙げた4つのうち3つが元は豊臣方の大名であり茶人としても有名な上田宗箇の作庭と伝わることが興味深い(パンフレットではそこまでの指摘はされていないけど)。

玉澗流庭園の特徴をパンフレット及びWikipediaから引用すると、

1. 築山を二つ設けてある
2. 築山の間に滝を組んである
3. 滝の上部に石橋(通天橋)を組んである
4. 石橋の上部は洞窟式になっている
――といった点にあり、玉泉園はこの四つの特色が全て備わっている。

とのこと。これは中国の宋時代の画僧・芬玉澗が描いた山水図が元になっており、中でも兼六園から水を引いているという東滝が「玉澗樣山水三段瀧圖」と酷似しているとされます。

また庭園の上段にある茶室「灑雪亭」(さいせつてい)とその茶庭は加賀藩三代目藩主・前田利常に招かれた裏千家の始祖・仙叟宗室の指導によって作られたものとされます。江戸時代初期に作られたこの茶室は金沢に残る茶室としては最古のもので、脇田家も千仙叟宗室から茶道を学んでいた縁からこの茶室・庭園の造園にも携わることになりました。

全般的に苔が張り巡らされた緑がとても美しい庭園でした!兼六園からもこんなに近いのにほんとなんで今まで来てなかったんだろう…。主庭は初夏にはカキツバタの花が見られるそう。また別の季節にも訪れたい!

(2019年3月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

JR北陸新幹線 金沢駅より徒歩約30分(市内各所にレンタサイクルあり)
金沢駅より路線バス「兼六園下・金沢城」バス停下車徒歩2分

〒920-0932 石川県金沢市小将町8-3 MAP

投稿者プロフィール

イトウマサトシ
イトウマサトシ
Instagram約9万フォロワーの日本庭園メディア『おにわさん』中の人。これまで足を運んで紹介した庭園の数は1,900以上。執筆・お仕事のご依頼も受け付けています!ご連絡はSNSのDMよりお願いいたします。
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