夏目漱石内坪井旧居

Soseki Natsume Uchitsuboi Old House, Kumamoto

熊本地震から2023年に復旧し公開再開!明治の文豪・夏目漱石が熊本時代に最も長く暮らした和洋折衷の近代和風住宅。漱石の俳句に詠まれた庭園も。

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夏目漱石内坪井旧居について

「夏目漱石内坪井旧居」(なつめそうせきうちつぼいきゅうきょ)は近代日本を代表する文豪・夏目漱石が熊本の教師時代に暮らした旧宅。明治時代〜大正時代の和洋折衷の近代和風建築が「夏目漱石内坪井旧居跡」として熊本市指定文化財(熊本市指定史跡)となっています。館内では夏目漱石のレプリカ原稿や、熊本時代の姿を知れる写真などが展示。

※2016年の熊本地震の影響で長期休館していました(※庭園から外観のみ見学可だった)が、復旧・修復を終えて2023年より建物内部の公開が再開されています。久々に訪れたのでその姿を紹介。

言わずと知れた明治の文豪・夏目漱石。東京・新宿区出身で最期も東京で終えた漱石ですが、現存する旧宅は何れも教師時代に赴任した熊本県熊本市にあります。

夏目漱石が29歳の頃、愛媛・松山から熊本の第五高等学校(現・熊本大学)に英語の教授として赴任。以来、約4年ちょっとの熊本生活の中で5回の引越し(計6軒)の家に暮らしています。その中で最長の1年8ヶ月を過ごしたのが、熊本で「五番目の家」となったこの内坪井旧居。

広いお庭のあるこの一軒家について、漱石の夫人・夏目鏡子《熊本にいた間、私どもが住んだ家の中で一番だった》と語られたそう。ちなみにこの邸宅でひときわ豪華に映るアール・デコ風の洋間は、夏目家が退去した後の所有者によって大正時代に増築されたもの。夏目家が暮らした時代からあるのは中央の和風建築部分。
…でもその和風建築部分も、書院窓や欄間のスタイリッシュな意匠や床の間の落掛にカッコいい木材が使われていたりと、オシャレな和風建築だったことが伝わってくる。

主座敷から眺められる広いお庭。現在机の置いてある書斎から正面に見える井戸は、この家で生まれた長女・筆子(松岡筆子/夫は小説家・松岡譲)の産湯に使ったという井戸跡。漱石はこの井戸のことを《安々と/海鼠のごとき/子を産めり》と俳句に詠みました。

そんな井戸のほかいくつかの石造物や様々な樹木が植わっているお庭ですが、漱石の教え子でこの邸宅にも幾度と押しかけたという随筆家・寺田寅彦(高知市の『寺田寅彦記念館』を以前紹介)は「その当時はそこまで樹木等は植わっていなかった」と振り返っていたそう。
だから現在のお庭は後の所有者による改変だったり、植物が自然に育った姿で、あまり「漱石の趣味による造形性」は無いのだろうけど——でも不思議と、正岡子規『子規庵』の様な“文人好み”のお庭という感じがします。(※なお後日紹介する同じ熊本市内の『後藤是山旧居』も似た雰囲気のお庭)

その他の夏目漱石の旧居としては、大名庭園『水前寺成就園』に程近い『水前寺公園』に『夏目漱石第三旧居(大江旧居)』が残され公開されています。ただこの第三旧居は公園へ移築されているものなので、当時と変わらない場所で保存・公開されているのは内坪井旧居のみ。

熊本で最後に暮らした『漱石第六旧居』(※現在は非公開)を熊本市が取得し、保存・活用されていくと2023年に報じられました(「熊本市が漱石の第6旧居所有へ 漱石振興進める/朝日新聞」。施設でもお話しがあった)。そちらの今後にも期待!

(2016年12月、2018年12月、2024年12月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

JR熊本駅より路線バス「内坪井」バス停下車 徒歩5分
熊本市電 「通町筋」「熊本城・市役所前」電停より徒歩13分
熊本電鉄 藤崎宮前駅より徒歩7分

〒860-0077 熊本市中央区内坪井町4-22 MAP

投稿者プロフィール

イトウマサトシ
イトウマサトシ
Instagram約9万フォロワーの日本庭園メディア『おにわさん』中の人。これまで足を運んで紹介した庭園の数は2,000以上。執筆・お仕事のご依頼も受け付けています!ご連絡はSNSのDMよりお願いいたします。
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