アートの島・直島に江戸時代から残る古民家を建築家・三分一博志が改築し、“瀬戸内国際芸術祭2019”で公開された新作の2つの庭園。
The Naoshima Plan「水」について
「The Naoshima Plan “水”」(なおしまぷらん・みず)は瀬戸内海に浮かぶアートの島・直島で江戸時代から残る築約200年の古民家を建築家・三分一博志さんにより改築された作品。『瀬戸内国際芸術祭』の2019年より公開。
初回の2010年に足を運んで以降、毎回訪れている「瀬戸芸」。2019年の芸術祭で「これは“庭園”として取り上げたい」と思い紹介した「The Naoshima Plan 2019 “水”」、2022年も訪れました。(2019年の後に常設展示となり、作品名から“2019”が取り除かれました)
三分一博志さんはこれ以前にも『直島ホール』や『犬島精錬所美術館』など、直島&瀬戸芸の開催エリアで建築・作品を手掛けられている建築家で、その2作品では日本建築学会賞を受賞。
個人的に、古い町並みや古建築に興味を持ち始めたのは2013と2016の間の頃。2013年に瀬戸内の島を訪れた時は“アート作品として”目が行ってたけど、前回の2016に訪れた時には小豆島・直島・豊島の町並みや国登録有形文化財を写真に収めたりしていた。
…んだけど、「そうした古民家に古い庭園があるのでは?」というところまでは考えが及んでいなかった!そんな瀬戸内の島々の古庭園が一つの作品としてフックアップされたのが本作品。
作品の意図は関連リンクにも張った記事↓
■ 直島に受け継がれる豊かさ、美しさを今に伝えるThe Naoshima Plan 2019「水」 三分一 博志 | ベネッセアートサイト直島
を読んでいただきたいのですが――概要をさらっと。直島の本村集落にある築約200年(=江戸時代後期の建築)の旧家を一部改修し、この集落における“風”と“水”をテーマにした作品。
加納容子さんの手掛けた“水”ののれんをくぐると、日本庭園的な中の島が浮かぶ池泉が。足湯のようにも見えるけど、本村集落に古くから張り巡らされ、1日2トンも湧き続けている井戸水によるもの(夏場には冷たくて気持ち良い!)。これは2019年の公開へ向けて作庭された“水の北庭”。
そしてその古民家の中庭には、亀島にも見える石組と植栽による古庭園が残っており、こちらは“太陽の南庭”と名付けられました。
三分一さんがこの作品を手がけるにあたってリサーチした所、『江戸時代から現代までほぼ街区が変わらない本村集落の旧家には、どの家にも間を挟んで南と北に庭があった』という共通点を発見したそう。
またそのようなこの構造になったのは、庭が好きだったから――ではなく、“風の流れ/通り方”が関係していると。この辺の説明は関連リンクより!
風と水の“リレー”をテーマにしたこの作品。2021年に宿泊した『おおみやけ』も確かに北・南にそれぞれ庭があった。
江戸時代、またはそれ以前の島民が生活の営みから自然と形作られた直島の都市計画。そのような歴史や意図を知ったら知ったで目からウロコだし、でもあまり深く受け止めなくても、直島の雰囲気に溶け込み、また来島する自分たちにとっても親しみやすい場所・空間で個人的にはかなり印象的な作品!
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余談。以前友人に「どこからどこまでが“庭園”なの?」ということを聞かれた。教科書的な定義はあると思うんだけど、一歩引いて“庭”(プライベート空間)とか“園地”(ランドスケープ)として考えるととても広く捉えられるというか――。自分の場合も、別に木が好きとか池が好きとか和風であるとかそういうピンポイントのことよりもお庭の“あの空間”が好きなんだよな〜。
そんな風に思うと、何度も訪れるほど直島が好きなのは…“アート”は勿論なんだけど、“庭園的”だからなんだと思って。作品で言っても『家プロジェクト』もそうだし、ベネッセミュージアム一帯もそうだし(蔡國強『文化大混浴』の石組とか)、今回のような旧家があることもそうだし。瀬戸芸関連、もう何件か紹介します。
(2019年8月、2022年5月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)
アクセス・住所 / Locations
直島・宮浦港から約2km(徒歩25分強/レンタサイクルあり)
直島・本村港より徒歩5分
※島内周遊シャトルバスもあり
〒761-3110 香川県香川郡直島町本村707 MAP