おおみやけ(大三宅)庭園

Omiyake Garden, Naoshima, Kagawa

“現代アートの島”直島で唯一の国登録文化財。崇徳天皇をルーツに持つ名家に残る江戸時代の枯山水庭園。

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おおみやけ(大三宅)庭園について

【宿泊者向けに公開】
「おおみやけ」は“現代アートの島”直島で唯一の国の文化財。「大三宅(三宅家住宅)」として主屋・長屋門が国登録有形文化財となっており、その主屋は現在宿泊施設(民宿/ゲストハウス)として活用されています。

これまでも瀬戸内国際芸術祭やそれ以外の時期にも何度も訪れた直島。本村の集落にあり、家プロジェクト“きんざ”“碁会所”の目の前にあるこの立派な長屋門がずっと気になっていた。
これまではあまり“宿泊してまで建物/庭園を見たい”所までではなかったけど、観光客も少ない時期で相場も安くなっているので。2021年4月に宿泊しました。最も安い新館なら7,000円台…だけど折角なら文化財に泊まらなきゃ意味がない!ってことで1万円強の主屋に。(直島で泊まったのは約10年前に憧れていたベネッセハウスに泊まった時以来!)

江戸時代、21代目当主・三宅兵右衛門の代から天領・倉敷の代官に仕える直島の大庄屋をつとめた名家・三宅家。
『ベネッセアートサイト』の前身“フジタ無人島パラダイス”を誘致した時の町長・三宅親連も三宅家の出身で、更に遡るとこの三宅家は平安時代末期の“保元の乱”で敗れ讃岐国に島流しとなった崇徳天皇(崇徳上皇)の子孫とされます。主屋の座敷に“崇徳天皇――”と記された書があって何かなあ、と思っていたらそういうことだったのか…!“おおみやけ”の屋号は当地を治めた三宅家を地元の方々が敬って呼ばれるようになったもの。

現在の主屋は江戸時代中期、長屋門は江戸時代後期の建造物。江戸時代には役所としても用いられ、式台のある客人用の表玄関に上がると立派な襖絵や書画も展示されています。古民家を活用した宿泊施設に泊まったのはこれまでもあったけど、今回が一番古美術に囲まれていた気が…!

そして座敷の南北にそれぞれ、独特な石組を持つ枯山水庭園があります。そもそも直島に“古庭園”というイメージは無いと思うんですが、2019年の瀬戸芸で『The Naoshima Plan“水”』を見た時に古い雰囲気を持つ中庭が気になった。あの作品の解説の中にも《直島の町家はどの家も南と北に庭があった》(※風の通り抜ける方角)とあって、すなわち直島には他にもそのような構造の古庭園がありそうだぞ…と。

そのうちの多くはおそらく“きんざ”“碁会所”のようなアート作品や新たなスペースに置き換わっていますが、この大三宅の庭園は伝承では400年前、江戸時代初期から残るもの。
主庭の北庭はソテツやマツを主木に、手前には亀島や舟石が配され、そして奥が渓谷のような姿が表現された枯山水庭園。黄色~茶色がかった奇石が多用されているのが独特な風景を醸し出す。フェリーから見える直島の岩肌ってよく見るとこんな感じかも。(小豆島の大坂城石垣石切丁場から運んできたものもあるとか!)

座敷の南側にも独特な立石を中央に配した庭園があり、そしてもう一つ、敷地東部にマリメッコの芥子の花のような形をした池の庭園も。重森三玲庭園のような曲線だなあ…と思いつつ、作者はわからなかったけど初回の瀬戸内国際芸術祭の時に京都のアーティストが来て作られたものだとおっしゃっていた。

現在は営業されていないけど、芸術祭期間などには長屋門がカフェ&レストランとして営業。10名以上の団体が予約をされる場合は主屋の座敷でお食事することもできるそう。
ご当主も色々なことを話してくださり、いわゆる古民家・文化財ではあるけど、“数百円での一般公開をしない点”についても明確な意図をお話しておられた。そして崇徳院から800年以上の歴史を数える文化財をどのようにしていきたいか、についても。一晩身を置いて生活の場としての文化財を体感する、それだけの価値が感じられる場所。

(2021年4月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

宮浦港より約2km(徒歩30分弱・レンタサイクルあり)
本村港より徒歩3分

〒761-3110 香川県香川郡直島町855 MAP

投稿者プロフィール

イトウマサトシ
イトウマサトシ
Instagram約9万フォロワーの日本庭園メディア『おにわさん』中の人。これまで足を運んで紹介した庭園の数は1,900以上。執筆・お仕事のご依頼も受け付けています!ご連絡はSNSのDMよりお願いいたします。
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