“豊後の小京都”杵築の城下町に残る大分県指定文化財庭園。江戸時代“築山師”淡州住秦治郎兵衛兼利が作庭、重森三玲に師事した吉河功が修復の枯山水庭園。
妙経寺庭園について
【拝観前に事前連絡推奨】
「一乗山 妙経寺」(みょうきょうじ)は“豊後の小京都”杵築の城下町にある日蓮宗の寺院。江戸時代中期、“築山師”淡州住秦治郎兵衛兼利の作庭した枯山水庭園が大分県指定文化財(大分県指定名勝)となっています。
2017年に国の重要伝統的建造物群保存地区に選定された杵築の城下町。その「杵築市北台南台伝統的建造物群保存地区」の範囲には含まれないものの道路を一本隔るだけで、同様に古い街の面影が感じられる寺町。その中に門を連ねるお寺の一つが妙経寺。なお、すぐ近隣には杵築市指定文化財の庭園『長昌寺庭園』も。
その歴史について。江戸時代初期、1605年(慶長10年)に真浄院日純上人により創建。当初は「常顕寺」という名だったそうですが、1709年(宝永6年)に江戸幕府五代目将軍・徳川綱吉が入道した折に「常顕院殿」と号したため、常顕寺→妙経寺へと改称。また創建から2度引寺(移転)され現在地へと移りました。
現在の本堂は江戸時代後期、1835年(天保6年)の竣工。また開創400年を記念し2006年に新築された毘沙門天堂の中に安置されている毘沙門天像は創建よりも古く、平安時代末期の作と推定されています(大分県指定有形文化財)。
本堂・客殿/書院の裏に大分県指定文化財の枯山水庭園があります。建物から見て正面に築山と石組、奥に切石橋、そして一見すると「鑑賞式の枯山水庭園」。なのだけど切石橋の手前には手水鉢やそこへ向かう飛び石も配されている、茶室に付随した「露地庭」としての要素を備えているのが特徴的な庭園となっています。白砂の中に回遊の為の飛び石がある…というのは(位置は違えど)長昌寺庭園と似た特徴。
作庭を手がけたのは“築山師”と呼ばれた淡州(淡路)住秦治郎兵衛兼利で、1775年(安永4年)の銘が切石橋に刻まれています。この様に作者と年代が残る江戸時代の庭園としては珍しく、その点が文化財的に価値が高いそう。
ところで「築山師」という肩書きも珍しい。検索しても「山師」ばかり引っ掛かる。笑。この秦兼利という人物は他に豊後大野市の有形文化財となっている石像「三猿」を手掛けたとされ、それ以外の情報は全く無いのですが…作庭家というよりは石を専門に手掛けていた人物なのかな。造園が専門で無いと言うには、非常にかっこいい築山と石組…。
そんな歴史ある庭園を、昭和の名作庭家・重森三玲に師事した現代の作庭家・吉河功さんと、氏の主宰する日本庭園研究会により修復され現在へと至ります。
城下町杵築には寺院庭園以外にも武家屋敷庭園も。合わせてチェック!
(2015年11月、2023年4月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)
アクセス・住所 / Locations
JR日豊本線 杵築駅より約4km(駅にレンタサイクルあり)
JR杵築駅・大分空港より路線バス「祇園」バス停下車 徒歩15分
〒873-0002 大分県杵築市南杵築東下司1539 MAP