ラコリーナ近江八幡

La Collina Omihachiman, Shiga

後世に残したい2010年代のランドスケープ第一位!藤森照信が設計を手掛けた自然に溶け込む建築群と、重野国彦と共に作庭した園庭。

庭園フォトギャラリーGarden Photo Gallery

ラ コリーナ近江八幡について

「ラ コリーナ近江八幡」(らこりーなおうみはちまん)は国のに選定された古い町並みの残る滋賀・近江八幡に本社を置く菓子店『たねや』のフラッグシップ店。菓子店“たねや”“クラブ ハリエ”のほか、緑に一面の敷地内にカフェ・レストランやギフトショップ、更には農園も。建築・回廊などの設計を建築家・藤森照信さんと中谷弘志さんが手掛けています。

《建築系学生のための情報サイト LUCHTA (ルフタ)》での連載コラム『ゆるふわ庭屋一如』でもラ コリーナ近江八幡について寄稿しました。こちらよりご覧ください

長野県・諏訪の『フジモリ茶室(高過庵・空飛ぶ泥舟・低過庵)の紹介でも書いていますが、藤森照信さんの建築が大好きです。このラコリーナもオープン当初から行きたいと思いながら、ようやく初めて訪れたのが2019年の夏。今回は2022年秋に3年ぶりに訪れたのでその写真を追加して紹介。

国の重伝建地区・八幡堀エリアから徒歩10分ほど(なおたねややクラブハリエはこの八幡堀の町並みの中にも出店されています)。初めて訪れた時に驚いたのが、人の多さ!平日の夕方に差し掛かるような時間帯でもどんどん自家用車で人が訪れていたし、中のカフェも外の園路も多くの人が。
滋賀県の観光DMO「びわこビジターズビューロー」が2019年3月に発表していた『滋賀県内で訪れた観光客が最も多かった施設』でなんと1位。彦根城よりも上!

藤森照信さん建築のファンって一定数多くいると思うのだけど、それまで足を運んだ場所ではそんなに人の多さを実感したことがなかった。先のフジモリ茶室でも、広島・神勝寺でも浜松・秋野不矩美術館でも掛川・どんぐり美術館でも――多治見のモザイクタイルミュージアムは他にも若い人が少しいたけど。書いてて思うけど、どれも立地は一言で言って“田舎”なんですよね。だから良いというか、だから藤森建築がハマるんだけど。

で、元々藤森さんの建築が好きなので、メインショップの入る“草屋根”、本社の入る“銅屋根”、そして回廊“栗百本”…これらの建築は勿論「好き、超良い」という感じなのですが、ラコリーナがすごいなと思ったのは、『ランドスケープによって人が集う場所になっている』ということです。
横文字があまり得意ではないので“ランドスケープ”という言葉の意味、ニュアンスはまだ捉えかねているのですが、こういった場所が『優れたランドスケープ』なんだろうなあと。

利便性を考えたら、駐車場とショップは近い方が良い。大型ショッピングセンターみたいに。でもここは違う。一面に笹が植えられた園地をゆるやかに歩いて、“草屋根”へ辿り着く。自家用車の姿が遮蔽・遮断されたその園地があるから、お客様も“非日常の空間”へと誘われる。(現代で言えば写真も映える)

そして草屋根・銅屋根の前に広がる園地もよくある芝生広場ではなく、田んぼや農地という発想。“映える”ような目立つモニュメントが配されているわけではない。配されているのは“七つ石”と呼ばれている石。
でもこの「遊べる園地じゃなく、中心に農地を置く」「その中に、日牟禮八幡宮と共に信仰され続けている(?)八幡山へと向かう石組が配されている」という、日本庭園の伝統的な要素をこそっと入れ込んでいるのがニヤニヤしてしまうというかワクワクしてしまうというか。その石の名前も禅の庭っぽく“蓬莱山”“船石”と命名されているものもあれば、“おにぎり石”なんて石も。

これらのランドスケープの設計は重野国彦さんで、庭園に関する本も出されている藤森先生も監修に加わっています。そして管理には「たねや」自身が抱える農芸・造園部門が携わっているというコダワリの強さ。この水田で農業やワークショップを行う「北之庄菜園」、山野草を扱う「愛四季苑」、そして景観管理の「ラコリーナ造園」。自分が訪れた際も庭師さんがお手入れをされていた。
下記の文章も合わせて読んでいただくと面白いです。

藤森先生とラ コリーナの物語 (ラコリーナ日誌)

連なる〈七つ石〉 (ラコリーナ日誌)

お菓子屋なのに農業?たねや農藝園長3人に聞く、農業とお菓子の関係。|たねや (CAKE.TOKYO)

訪れるまでは「藤森建築とお菓子に興味がある人が多いんだろう」という印象を勝手に抱いていたけど、実際足へ運ぶと“その園地・ランドスケープが一番お客様に楽しまれている”と感じた。それによって全国から人が集まるというこの感覚――『モエレ沼公園』以来かもしれない、この感じ。

その前後では他に人が居ない、寺社の文化財庭園を巡っていたので――なんというか日本人の“庭”に対しての好き度・造詣ってのが身体の奥底にあるのは変わっていなくて、一方で(一部の有名な庭園を除き)古庭園への興味が失われていることに対して、“どのような目線で、何と合わせて”見せるか・伝えるか――ということが大事だなあと改めて考えさせられました。いや考えさせられたとかそんな話でもないな…ラコリーナが好きだって話!後世に残したい2010年のランドスケープ代表。

(2019年8月、2022年11月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

JR琵琶湖線 近江八幡駅より約3.5km(駅にレンタサイクルあり)
近江八幡駅より「北之庄ラコリーナ前」バス停下車すぐ

〒523-8533 滋賀県近江八幡市北之庄町615-1 MAP

投稿者プロフィール

イトウマサトシ
イトウマサトシ
Instagram約9万フォロワーの日本庭園メディア『おにわさん』中の人。これまで足を運んで紹介した庭園の数は1,900以上。執筆・お仕事のご依頼も受け付けています!ご連絡はSNSのDMよりお願いいたします。
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