江戸時代の禅僧/歌人・良寛ゆかりの寺院に残る、山の斜面に巨石が並ぶパワフルな石庭。岡山県指定名勝。
円通寺公園について
「円通寺公園」(えんつうじこうえん)は江戸時代後期の禅僧/歌人・良寛ゆかりの曹洞宗寺院『補陀落山 円通寺』の境内地に開かれた公園。巨石の並ぶ素晴らしい石庭を含むその一帯は岡山県指定名勝および岡山県指定史跡になっています。山陽花の寺二十四か寺17番札所。
2020年秋、2年半ぶりに倉敷へ――今回“倉敷美観地区”より楽しみにしていたのが玉島の町。江戸時代に備中松山藩の港町として栄え、美観地区ほどではないけどレトロな建築や古い町並みが残ります。一応最寄り駅は山陽新幹線の新倉敷駅で、レンタサイクルで行くにはちょうどよい距離感…なんですが観光客の姿は他に一切なかった。
玉島の丘陵地にあるのが円通寺(いきなり急坂になるので、自転車は麓に置いて徒歩で登る)。古くは奈良時代に行基によって開かれたと伝わり、非公開?の御本尊・聖観音菩薩は国指定重要文化財。
江戸時代の1698年(元禄11年)に徳翁良高禅師により再興。江戸後期には新潟の出雲崎から、国仙和尚に師事するためこの地へ辿り着いた良寛が22歳から20年に渡り円通寺で修行を積みました。近くの国民宿舎の名が“良寛荘”という点からもその慕われぶりを感じます。
なお、同じく良寛ゆかりで岡山県指定名勝の庭園がある寺院には矢掛町の『大通寺』があります。
“庭園”ではなく“公園”という名前なだけで、なんとなくオーソドックスな日本庭園をイメージしてたんだけど――坂を登って現れたのは、ゴリゴリの巨石がパワフルに並んだ石庭。山梨の『栖雲寺庭園』を思い出す…!
作庭年代を示すものはなかったけれど、良寛は岩場の上から瀬戸内海を眺めていたそうなので――この庭園は江戸時代中期~後期には完成していたのかな。棲雲寺と同じく、山の上にこれらの巨石を並べた謎――(元々この山の石だとしても)。良寛さんがクローズアップされているけど、江戸時代の玉島の繁栄を感じさせる石庭でもある。
伽藍も建築年代が示されているものも見つからないんだけど…茶室“友松亭”を伴った茅葺きの“良寛堂”は良寛も寝泊まりしていた修行の場だったそうなので江戸時代後期の建造物でしょうか。茅葺きの本堂や“白雲閣”も趣ある。
そして“公園”と名がつく通り、地域の人にものすごく開かれた場で。玉島港・瀬戸内海を一望できる休憩所や売店もあって、地元の人がくつろいでおられた。その眺望含めての“名勝”。境内全域が倉敷市営公園でもある。「境内だった所が公園に」というパターンはこれまであったけど(境界線がある)、ここは境界線がなく境内=公園という珍しい場所。岡山の隠れた名園。
(2020年11月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)
アクセス・住所 / Locations
JR山陽新幹線 新倉敷駅より約4km(駅にレンタサイクルあり)
新倉敷駅より路線バス「玉島中央町」バス停下車 徒歩10分
〒713-8123 岡山県倉敷市玉島柏島451 MAP