京都よりも京都――かの水墨画家・雪舟の作庭とも云われる、山の音に包まれる癒やしの庭園。美しい紅葉の他にも新緑やぼたん園も。国指定名勝。
清水寺本坊庭園について
「本吉山 清水寺」(きよみずでら)は福岡県みやま市の清水山の山中にたたずむ天台宗の寺院。本堂・三重塔から約1km(徒歩10分強)の場所に位置する本坊の庭園が『清水寺本坊庭園』として国指定名勝。作庭は室町時代、有名な水墨画家・雪舟等楊によるものと推測されています。
福岡県内では牡丹の名所、紅葉の名所と知られ、それらの季節にはJR瀬高駅からのシャトルバスも運行。
何度か訪れていますが、その歴史的価値や美しさはもちろん、庭園に「癒やし」を求める・感じているとしたらここは日本屈指の庭園――鳥の声、流れ落ちる水の音、山の音しかしない。本当に時間を忘れてずっと眺めていたい庭園――京都の有名な『清水寺』と同じ「きよみずでら」の名ですが、この庭園はなんだかとても「京都よりも、求めている京都」と言った空気を醸します。
その歴史について。平安時代初めの806年(大同元年)、天台宗の開祖・最澄は遣唐使から帰国後に九州を行脚。訪れたこの山内で見つけたねむの木で自ら千手観音木像を2体制作し、併せて建立したお堂に安置したことがお寺としての始まりとされます(現在のご本尊)。尚、2体のうち1体は京都の清水寺に安置されたとか。なので歴史的には「兄弟」的な存在…?
なお、現在の伽藍は江戸時代に柳川藩主・立花氏の援助により整えられたもので、三重塔、山門(楼門)、法華経千部逆修板碑が福岡県指定重要文化財。
本堂・三重塔などからは瀬高駅側の林の中にあるのが「清水寺本坊庭園」。お座敷、縁側から、緩やかな中島の浮かぶ心字池(心をかたどった池)と、借景の「愛宕山」を遮るものがなく眺められる、そして新緑や紅葉、四季の花々を愛でる池泉鑑賞式庭園。
庭園向かって左手側にある小ぶりな滝は他の九州の「雪舟庭園」との親和性を感じさせる。山の自然の水が流れるその滝は、庭園の奥の見えないポイントで外の川に流れ落ち、その音だけがサラウンドの様に庭園を包む――
現在の姿は江戸時代の元禄年間(1688年~1704年)に整備/改修されたものだそうですが、元の庭園は室町時代、遣明船で明から帰国した雪舟により、現地で学んだ山水技術を活かして作庭されたと伝わる(推定されている)そう。滝もだけど、緩やかな池、築山の雰囲気は同じ雪舟の国指定文化財庭園『藤江氏魚楽園』とも似ている。
一般の拝観者は体験できませんが、中秋の名月の折には、東の山から登ってくる月がその池泉に映り込むそう。
文人にも好まれたお庭で、本坊内には近代の詩人・佐藤春夫による句が、本坊の前には北原白秋による句碑が立ちます。
紅葉の季節じゃなくても、春にも夏にもその「自然の音、風」は変わらない。本当の癒やしの借景庭園、いつか訪れてみて。
(2014年4月、2015年9月、2016年4月、2024年12付き訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)
アクセス・住所 / Locations
JR鹿児島本線 瀬高駅より約4km(タクシーで約10分/駅にレンタサイクルあり)
JR瀬高駅よりコミュニティバス「清水山荘」バス停下車 徒歩4分/「みやま・柳川インター」バス停 徒歩20分(前者は本数僅少)
※その他、イベントや紅葉のシーズン等に瀬高駅よりシャトルバスが運行
〒835-0003 福岡県みやま市瀬高町本吉1117-4 MAP