清春芸術村

Kiyoharu Art Colony, Hokuto, Yamanashi

“白樺派”の画家たちが思い描き、現在では安藤忠雄/谷口吉生/藤森照信/吉田五十八ら日本の近現代を代表する建築家の作品も点在する“芸術村”。

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清春芸術村について

「清春芸術村」(きよはるげいじゅつむら)は山梨県・小淵沢エリアにある「文化複合施設」。1980年代に完成したアトリエ『ラ・リューシュ』『清春白樺美術館』を中心として、安藤忠雄谷口吉生藤森照信吉田五十八(五十音順)といった近現代の日本を代表する建築家による建築が点在。また大正時代に植樹された桜並木は山梨県指定天然記念物にも選ばれています。

2024年、15年ぶりに清春芸術村へ。以前訪れた頃は(すでに藤森照信さんは好きだったけど、)現在ほど建築家の名前は知らなかった。当サイトでも紹介している建築家の作品も多い…ので紹介。(なお芸術村の空間を公式に「庭園」と書いている事もあるので、“大きな庭園”でもある)

その歴史について。東京・銀座で「吉井画廊」を営んだ美術商・吉井長三さんが親交のあった武者小路実篤志賀直哉など「白樺派」の作家と構想していた“白樺美術館”構想。それを実現すべく、1970年代末〜1980年代初めに山梨の小学校跡地を買い取り、1981年(昭和56年)に洋風建築「ラ・リューシュ」が建設されたのがその始まり。
なお事前の視察を共にしたのは小林秀雄白州正子正田英三郎谷口吉郎東山魁夷…と言った著名なクリエイターや実業家たち。

以後、現代の日本を代表する建築家による作品が徐々に加わり、現代は吉井長三さんの子で現代アートギャラリー「hiromiyoshii」で知られる吉井仁実さんが理事長として後を継ぎ運営されています。

■ラ・リューシュ(1981年)(1枚目右など)
フランス語で“蜂の巣”という名を持つ、サーカスのテントのような円形(正確には16角形)の洋風建築。フランス・パリの『エッフェル塔』の設計者:ギュスターブ・エッフェルが設計した1900年のパリ万博のワイン館を再現した建築。
フランスの同建築はシャガールなど有名な画家が若き日を過ごし巣立ったアトリエ兼集合住宅で、日本に完成したこちらもアーティストの為の創作の場として利用されています。内部は非公開ですが、ミュージアムショップ部分のみ入場可。

■茶室 徹(藤森照信/2006年)(5枚目など)
独特なデザインの茶室で知られる建築史家・藤森照信さんの設計による空に浮かぶ茶室。氏が地元・茅野市(北杜市の2つ隣)に2004年に竣工した『高過庵』と見た目はよく似た茶室ですが、この徹は元々この芸術村に植っていた一本の檜により支えられています。

■石のサウナ(谷尻誠+吉田愛/SUPPOSE DESIGN OFFICE/2022年)(8枚目)
広島の自社ビルにもサウナが作られているSUPPOSE DESIGN OFFICEによる作品。通常はサウナとしての利用ができるわけではなく鑑賞のみ。

■エッフェル塔の階段(1989年)(9枚目)
エッフェル塔の完成100周年を迎えた年に、その名の通りのエッフェル塔の階段の一部が移設されたもの。その隣には現代美術家:セザールによるギュスターブ・エッフェル像が立ちます。

■光の美術館(安藤忠雄/2011年)(10〜11枚目)
日本を代表する建築家のひとり・安藤忠雄さんによる、安藤建築の代名詞とも言えるコンクリート打ちっぱなしのギャラリー。内部には人口照明はなく自然の光のみという環境の下、作品鑑賞同じ作品でも昼と夕で異なる表情が体感できます。通常時にはアントニ・クラーベの絵画作品が展示。

■清春白樺美術館(谷口吉生/1986年)(12枚目)
冒頭に書いた通り、施主が当初思い描いた“白樺派”のための美術館で、芸術村初期に完成したメインパビリオンの一つ。
現在では世界的な建築家となっている谷口吉生さんですが、この美術館はほぼ最初期の作品の一つ。同じく冒頭で名前を挙げた、父親の谷口吉郎さんが当初芸術村の基本設計を担当していたそうですが、その没後に遺志を継ぎ芸術村へと関わりました(『ルオー礼拝堂』の設計も担当)。だからか同年の『土門拳記念館』とはまた全く異なる作風。

名前の通り、館内では白樺派の作家ゆかりのアイテムや白樺派が愛したジョルジュ・ルオーの作品、志賀直哉のコレクション等が展示。内部撮影禁止なので紹介できませんが、中庭の見せ方がとても良い感じなのでそこにも注目!

■梅原龍三郎アトリエ(吉田五十八/1952年)(14〜20枚目) ルオー礼拝堂の奥の林の中に佇むのが、近代〜昭和に掛け活躍し白樺派とも縁深い画家・梅原龍三郎の旧アトリエ。近代数寄屋建築の巨匠・吉田五十八の設計で1952年に東京・市ヶ谷に建てられていたもので没後に移築されました。やっぱ吉田五十八建築最高…!(同時代の『山口蓬春邸』と近い所を感じる)

アトリエの周りの庭園は再現ではなく新たに整えられたものですが、元からこの自然の中にあったかのよう。旧アトリエの傍らには、この芸術村の当初の視察にも同行していた文芸評論家・小林秀雄の鎌倉の旧宅から移植された桜の木があります。

更に、清春芸術村に2019年に誕生したのが、世界的美術家・杉本博司と建築家・榊田倫之による新素材研究所が手がけたゲストハウス「和心」。こちらは芸術村の年間サポート会員のみ外観見学可能。また見られる機会があった際に追加して紹介したい…。

>>隣接するレストラン『素透撫 stove』についてはこちら。

(2010年6月、2024年9月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

JR中央本線 長坂駅より路線バス「中丸公民館南」バス停下車 徒歩2分(※長坂駅からタクシーで10分)3

〒408-0036 山梨県北杜市長坂町中丸2072 MAP

投稿者プロフィール

イトウマサトシ
イトウマサトシ
Instagram約9万フォロワーの日本庭園メディア『おにわさん』中の人。これまで足を運んで紹介した庭園の数は2,000以上。執筆・お仕事のご依頼も受け付けています!ご連絡はSNSのDMよりお願いいたします。
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