重要伝統的建造物群保存地区“加賀橋立”の赤瓦屋根の街並みに残る、明治時代の北前船主屋敷。あじさいの名所。
北前船の里資料館について
「北前船の里資料館」(きたまえぶねのさとしりょうかん)は国の重要伝統的建造物群保存地区“加賀橋立”の中心観光施設。明治初期に建てられた北前船船主の屋敷を保存するとともに、北前船に関する美術品や各種資料が展示。日本遺産『荒波を越えた男たちの夢が紡いだ異空間~北前船寄港地・船主集落~』の構成文化財でもあります。
庭園巡りとともに少しずつ巡っている重伝建地区。これまで80箇所ほど巡ってきました。9月に大聖寺の(元は橋立の船主屋敷だった)『蘇梁館』を見て、橋立にも行きたいなあと思い…2020年10月に初訪問!今回は宿泊した加賀・片山津温泉でレンタサイクルして訪れました(大聖寺や片山津温泉からはレンタサイクルで約30分程)。
江戸時代後期~明治時代の“北前船”の発展とともに、船主・船頭が多く居住し発展した加賀橋立。全盛期には合計で100隻の北前船がこの橋立を拠点に北海道から瀬戸内海までを往来していました。そのように“商人として栄えた町”なので、これまで訪れた「漁村」の集落とはまた異なる雰囲気で。赤瓦の屋根が連なる姿は山陰の海沿いの集落(江津本町とか温泉津とか)を思い出す。
集落の中心に位置するこの邸宅は1876年(明治9年)に酒谷長兵衛という北前船船主の屋敷として建てられたもの。この酒谷氏は全盛期には6隻の北前船を所有し巨額の富を築いたそう。現在は邸宅内を展示室として、北前船船主が各地の神社に奉納したという“船絵馬”や船模型、船箪笥、そして航海に必要な用具などが展示されています。
庭園は2つ。屋敷の新座敷から眺める中庭と、観光施設となった後に整備されたと思われる“あじさい庭園”。“中庭”は主張の強い庭園ではないけれど、そのシンプルさは同じく北陸の富山の『旧内山家住宅』を思い出す。
そして飛び石として淡緑青色の“笏谷石”が多く用いられているのがこの地域の特徴。笏谷石はこの集落の石垣でも多く使われていて、赤瓦とのコントラストを生み出している。
海運で栄えたという点だけであれば阪神財閥とも構造が似ているなあ…と思ったのですが、明治後半に鉄道・電信の発達とともに北前船が衰退すると、船主は他の業種への転換したり、屋敷をこの地に残し海運で栄えた神戸へ移住した者も多いとか。
ほんとはもう一軒…『蔵六園』という公開屋敷も訪れるつもりだったのですが。訪れたつい数日前に「熊が現れた」ゆえ見学休止だった…残念。
その後、加賀温泉駅に戻ったら全国ニュースをにぎわした「熊がショッピングセンターに立てこもり」の現場を見ることに…。海に近い蔵六園に熊が現れたことも驚きだし、幹線道路が目の前に通る加賀温泉駅に現れたのにも驚き。「うかうか自転車で庭園巡りできないな」という気持ちと「自然との共存」を考えさせられる点と。そんな加賀橋立だった…。
(2020年10月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)
アクセス・住所 / Locations
JR北陸本線 加賀温泉駅より路線バス「北前船の里資料館」バス停下車
JR大聖寺駅または片山津温泉観光協会でレンタサイクルして5〜6km(30分前後)
〒922-0554 石川県加賀市橋立町1-1 MAP