菊水酒造の当主の邸宅に“庭匠”田中泰阿弥によって作庭された枯山水庭園。酒蔵見学や日本酒文化研究所も見所。
菊水庭園について
「菊水酒造」(きくすいしゅぞう)は「ふなぐち菊水一番しぼり」がとっても有名な酒蔵。元は明治時代に創業した造り酒屋であり、現在も創業の地・新潟県新発田市に本社・工場があります。
2019年4月に本社敷地内に売店がオープン、そして京都・銀閣寺の出入り庭師であり新潟県内を中心に名園を残している“庭匠”田中泰阿弥が作庭した日本庭園が公開を開始!ということで早速見学に訪れました。
菊水酒造が現在地に移ったのは1969年。その数年前、現在も近くに流れる加治川が氾濫する大水害が発生し、治水工事により移転を余儀なくされたそう。
この庭園が完成したのはその移転と時を同じくした1969年、田中泰阿弥が70歳の時で晩年の作。訪れた際は“高澤邸庭園”として紹介されていた通り、菊水酒造の創業家・高澤家は本社敷地内に邸宅を構え、その庭園として造られたもの。
現在も現代和風建築風の家屋も残りますが、昨年まではご当主?が住んでおられ社員の方でもこの庭園はなかなか観る機会がなかったとか。公開にあたって一部整備はされたんだろうけど、それでもこれだけの庭園が公開されずにも残っていたことが素晴らしいの一言!
田中泰阿弥の手掛けた庭園で、石によって大海・池泉を表現した庭園は初めて見ました。枯山水庭園――だけどいわゆる枯山水って表現よりは池泉回遊式庭園のような感じ。純粋な池泉庭園としなかったのは移転のきっかけとなった下越水害への配慮もあるかもしれないけど――その中でも、正面から見て奥、石の大きさを変えて水の流れを表現しているのが素敵。そして田中泰阿弥の庭園というと苔が美しい印象が強いのですが、この庭園も枯池の周囲は苔が張り巡らされています。春もみじとのコントラストも美しかった!
ちなみに今回一緒に庭園めぐりをしていただいた「にいがた庭園街道」/「庭屋一如研究会」の藤井さんの解説によると、作庭当初は日本二百名山・二王子岳を借景にしていたみたい、とのこと。
二王子岳はこの地域で昔から信仰の対象となっていた山で、現在も山内には二王子神社や奥の院があるそう。今回訪れたGWも雪が残っている稜線がとても美しかった――現在は目隠し的に樹木が伸びているのでその借景はのぞめないけど、雪山の借景はきっと美しかったのだろうなあ。
自分は庭園メインで訪れましたが、庭園に先駆けて2018年から公開がスタートした「菊水日本酒文化研究所」もすごそう。酒蔵の見学のみならず膨大な資料や展示品も見られるとのことで、酒好きにはたまらなさそう。
新発田藩の城下町だった新発田市内には国指定名勝の「清水園」、「五十公野御茶屋」などの歴史的な庭園も残り、他にも酒蔵や寺町やなんかも。庭園と酒蔵巡りの一つとしてオススメ!
※このGWの旅では他にも各地で酒蔵の庭園を見学したので、後日紹介予定!
(2019年5月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)
アクセス・住所 / Locations
JR白新線・羽越本線 新発田駅より約3km(※駅にレンタサイクルあり)
JR羽越本線 加治駅より2km強(徒歩約30分)
〒957-0011 新潟県新発田市島潟750 MAP