加賀屋新田会所庭園Kagaya Shinden Kaisho Garden, Osaka

ここは磨けばめちゃくちゃ良いはず…池泉に迫り出した懸造の数寄屋建築と庭園。大阪市指定文化財・史跡。

庭園ギャラリーGarden Photo Gallery

加賀屋新田会所庭園“愉園”について

「加賀屋新田」は江戸時代中期に大阪の両替商・加賀屋甚兵衛により開発された新田。「加賀屋新田会所」(かがやしんでんかいしょ)はその新田の管理・運営を行った施設で、「加賀屋新田会所跡」として大阪市指定史跡、「旧加賀屋新田会所 鳳鳴亭・書院・居宅」として3棟が大阪市指定有形文化財。現在は「加賀屋緑地」として市民公園となっています。

先に紹介した国指定重要文化財『鴻池新田会所』の庭園と共に今年訪れたいなと思っていた場所。2021年9月に初訪問…したんだけど、その時の庭園が割ともしゃもしゃで…。
「次、剪定が行われるタイミングってありますか」とお聞きして10月にも再訪、その2度の写真を織り交ぜて紹介。でもそんな風に聞いてまで再訪したのは、『ここ、めちゃくちゃいいんじゃないか』と思ったからです!

その歴史は『鴻池新田会所』と同じ1707年の大和川の付け替え工事がきっかけ。内陸にできた鴻池新田に対して、住之江のこのエリアは大和川の河口に近く、土砂が堆積して新たに形成された干潟を干拓し新田開発に至ったもの。
1745年(延享2年)にはじまったこの事業、跡を継いだ二代目・三代目・四代目櫻井甚兵衛らによって次々に拡張され、江戸時代末期を迎える頃には大阪の西側で随一の規模に。

近代以降は所有者が幾度か代わり、最終的には大阪で「武田商事」を経営した武田賢一氏が別荘として所有した後に1980年代に大阪市に寄贈。
太平洋戦争の空襲による被害で長屋門や一部の茶室は失われましたが、主要部分(鳳鳴亭・書院・居宅)は被害を免れ、寄贈された後に大阪市による長年の解体修復作業を経て2001年より公開がはじまりました。最後に復元された長屋門にフェンスと有刺鉄線があるのが当時の大阪の治安の面影…?

約5,000平方メートルの敷地内に「近代の数寄者が好みそうな建築と回遊式庭園」が残されているので、まるっと端折った近代の歴史の中にはきっと有名な文人墨客が訪れたんじゃないかなあ…と感じる。

■冠木門
最初の門がまずかっこいい。京都・大徳寺から拝領された瓦を模したというアーチ型の瓦による独特な門の復元。“古見堂”と書かれた額は京都『相国寺』有馬頼底管長の筆。この門から玄関までの間にも左手に庭園らしきものや、玄関前のソテツ&石組など見どころが。

■書院
玄関上がってまずは1754年(宝暦4年)の建築とされる旧書院。これがまた!入口の丸窓、書院の花灯窓、庭園に向かって開放的な構造、そして雪舟の四代目・雲谷等益の襖絵などなどおしゃれー!また大正時代に作家・西村天因により命名された『愉園』の書が掲げられています。その近代の所有者が気になる。

■茶室“鳳鳴亭”
庭園から見ると京都『清水寺』を模したかのような舞台造りの数寄屋風書院建築。庭園にせり出す姿もかっこいいけど、中もかっこいい…(廊下がちょうど外にせり出してる部分!廊一つ一つ異なる透かし彫り!)。
屋内には江戸時代後期に京都・大徳寺の418代目住職をつとめた禅僧・松月宙宝(宙宝宗宇)による“鳳鳴亭”の額が掲げられており、そのことや墨書から1815年(文化12年)以前の建築とされています。冠木門といい、大徳寺と縁深かった…?

近代以降で見てもこの規模の舞台造りの邸宅ってそう無い…神戸の国指定重要文化財『旧村山家住宅』の書院や京都の国指定名勝庭園『對龍山荘』とかがそうか…それを江戸時代後期に実現しているすごさ。そのポテンシャルの建築を、無料で自由に見学できちゃっていいの…?というモヤモヤ感が逆にある。(笑)

なお残念ながら座敷部分に上がることはできず、その奥の茶室や坪庭を見ることはかなわないんだけど。見るのに2,000円掛かります、とかでも全然払うし見たいと思える。

■庭園
“東池”“西池”からなる池泉回遊式庭園で、中央にある築山の上には“明霞亭”という四阿(戦災で焼失・現在は別デザインで再建)や待合“偶然亭”など、最終的には“鳳鳴亭”へと至るための庭園。偶然亭~鳳鳴亭の険しい露地も良い。

現在は築山の上に立っても見渡せるのは周囲の住宅街だけど、かつては周囲の新田や六甲の山々、生駒山が見渡せたとか。また西池には船着場の遺構もある。かつては『鴻池新田』と同じように屋敷の周囲は水路だったらしいので、その水路をつたってこの庭園に辿り着くようになっていたんだろう。

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両日とも訪れたのはお昼時だったのですが、来場者を示す正の記入は2人目とかそんな感じ。前日も一桁…。紅葉の今の時期はさすがにもっと多いのだろうけど。

現場じゃない人が“数字で見る”のはある意味当然というか大前提。自分が今回どれだけ「ここはマジですごい!!大阪市にこんな素敵な“庭屋一如”な建築・庭園あったんだ!!」と思ったとて、「年間でこれだけしか人数来てないです」みたいな庭園の予算が削られるのは「そうですよねえ…」とも思うし、今年閉業した『太閤園』を“税金でどうにかするべき”という声に対しても、実際の庭園施設がこんなに盛り上がっていないと説得力が弱い。

“稼げる公園”というフレーズに賛否両論あるのは理解しているけど、
『そもそも人が訪れない⇒魅力が伝わらない⇒更に人遠のく⇒客観的な数値を見て、お手入れの予算削られる⇒荒れる⇒魅力下がる⇒更に人遠のく』という負のスパイラルから逃れられるのなら、やはり魅力的な企業にこの屋敷を見つけてほしい…。

ここは磨けば(アイデアとブランディングで)絶対めちゃめちゃ良くなるポテンシャルがあると思う。グローバル時代の大阪の和の迎賓館になり得ると思うんだよな~。次は春の早い時期にすっきりした姿を見に行きたいと思います!

(2021年9・10月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

大阪メトロ四つ橋線 住之江公園駅より徒歩11分
南海本線 住ノ江駅・阪堺電気軌道阪堺線 我孫子道駅より徒歩15分強
住之江公園駅・塚西駅・姫松駅などから路線バス「南加賀屋四丁目」バス停下車 徒歩3分

〒559-0015 大阪府大阪市住之江区南加賀屋4丁目8-7 MAP