“世界建築ビエンナーレ”庭園部門の金賞にもノミネート…昭和の京都の人気作庭家・重森三玲の長男・重森完途作庭の枯山水庭園。
出雲市中央図書館(出雲市立図書館)庭園について
「出雲市立出雲中央図書館」(いずもしりついずもちゅうおうとしょかん)は1947年(昭和22年)に開館した出雲市立図書館(市立出雲図書館)の市内6図書館の中心的施設。その庭園“福寿園”は昭和の京都の代表的作庭家・重森三玲の長男で庭園研究家でもあった重森完途さんによる作庭。
2020年秋に初めて訪れ、2022年5月に再訪したのでその際の写真を紹介。
キャリアの初期に松江で『島根県庁』(1959年)の庭園を手掛けた重森完途さん。そこから20年以上経った1984年(昭和59年)に手掛けられたのがこの庭園。
石州瓦がイメージされたかのような赤い屋根が特徴的な図書館の西側に芝生が広がり、その中に白砂による曲水や青石による石組が配置された枯山水庭園。先述の島根県庁とはかなり作風が異なるけれど、兵庫の『伊丹市立美術館』の庭園と比較的似ている?
庭園内を歩くことはできないけれど、館内や外周の色んな視点からの姿が楽しめる回遊式枯山水庭園で、建物の真西と出雲大社へ向けた北西部に最も大きな立石が配されています。天気の良い日は北側に出雲の山々の借景も見え隠れ。
庭石は『島根県立中央病院』に庭に元々使われていたものが再利用され、当時の島根県知事・23代目 田部長右衛門により“福寿園”と命名されました(田部家は江戸時代以降“たたら製鉄”で栄えた奥出雲の山林地主で、松江の『田部美術館』を開いた方でもある)。完成した翌年には『世界建築ビエンナーレ』の庭園部門で金賞にノミネートされたのだとか。
建築の設計は石本建築設計事務所(現・石本建築事務所)が担当。官公庁系の建築を数多く手掛けられており、こちらの他にも香川県立図書館、飯能市立図書館、西条市立図書館なども設計。過去足を運んだ庭園では『防府市斎場庭園“悠久苑”』も建築が石本建築設計事務所でした。
…ただ、当時の県知事・市長が「芸術と安らぎ」を意図して業界では名のある作庭家が関わった庭園でも、出雲市役所への近年の市民の要望の中には《庭園の維持には税金が掛かっている》《庭園を駐車場にすべき》という投書があったことが市の記録に残されています。
“どんな人が作ったのか・その人はすごい人なのか・土地に縁ある人なのか”“どんな想いで作られたのか”というのは、施主側は勿論、造る側もPRして価値付けをしていかなければ“日本庭園”は次代に引継がれていかないんだろうなあ、と感じる一面。出雲を訪れる際はぜひ立ち寄ってみて。
(2020年11月、2022年5月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)
アクセス・住所 / Locations
JR山陰本線 出雲市駅より徒歩15分強(駅にレンタサイクルあり)
一畑電車北松江線 出雲科学館パークタウン前駅より徒歩10分
出雲空港よりリムジンバス「体育館前」バス停下車 徒歩6分
〒693-0011 島根県出雲市大津町1134 MAP