原鹿の旧豪農屋敷

Harashika-no-Gono-Yashiki Garden, Izumo, Shimane

出雲を代表する豪農が残した枯山水/出雲流庭園の隠れた名庭園…屋敷を囲む“築地松”も世界に伝えたい景観!出雲市指定文化財。

庭園フォトギャラリーGarden Photo Gallery

原鹿の旧屋敷について

「原鹿の旧豪農屋敷」(はらしかのきゅうごうのうやしき)は島根県/出雲地方を代表する地主農家だった江角家(原鹿江角家)の本邸だったお屋敷。明治時代に建築された主屋が出雲市指定文化財(有形文化財・建造物)で、屋敷とともに“出雲流”の庭園が残ります。

2022年5月に再訪したのでその時の写真を更新。冒頭にも“隠れた名庭園”なんて書いてますが、2020年秋に初めて訪れた時にけっこう衝撃を受けた場所。
というのも(豪農屋敷の見応えは前提として)普通の田園地帯の一角にこれだけ大規模な庭園があって、そしてこんな大きな庭園なのに施設名としては“庭園”とはつかないし、無料で自由見学だし…だから余計に驚きと感動が大きかった。

その歴史について。江戸時代中期に出雲市・平田の灘分江角家から分家し、現在の出雲市の東部・斐川に居を構えた原鹿江角家。現在の場所に移ったのは明治時代の1898年(明治31年)。昭和初期には島根県で7番目の農地をほこる豪農だったそう。

その後の経緯は不明ですが、2000年代前半に解体・修理が施され(その様子の写真が室内に掲示されています。あとこの施設に関する出雲市の条例施行が2001年)、その後に市所有施設として公開を開始。現在もたびたび市民のイベント/作品展が行われています。

主屋の座敷の広さは大正天皇・昭和天皇も訪れた『八雲本陣』に匹敵する規模。説明にはないけれど、室内には“熾仁”の名が記された書が飾られている…有栖川宮熾仁親王?書かれている字は“松雲軒”?(松雲…?川島徳次郎…?時代的には一致するけど)
別の方が書かれた“金鶏閣”という墨書もあり、これが主屋に付けられた名前だったのかなと思う。

そして庭園の素晴らしさ!小砂の中に短冊石や飛び石を配した独自の枯山水庭園、“出雲流庭園”。江戸時代、『菅田庵』や原鹿からも近隣の『康国寺庭園』など“座敷からの鑑賞式と茶室への導線を備えた”形で生み出された庭園の型が、近代にはまた違う形で発展を遂げているのがこの庭園や『出雲文化伝承館』の庭園からは見て取れる(『平田本陣記念館』の庭園もそれに近い)。

菅田庵や『観月庵』の頃にあった露地っぽさが、ここでは全然無い。純粋なる“めちゃくちゃ広い枯山水庭園”なんだけど、この広さに白砂を敷き詰めちゃう庭園って他の地域にはない。
これだけの広さに対して…庭園や自然風庭園ではなく、白砂の上を飛んでいくための回遊式枯山水庭園というスタイル。余計なものが削ぎ落とされた空間…なんか、The Strokesの『Is This It』に出会った!みたいな感じ?2階からの山並みの借景も◎。

この屋敷とこの地域でもう一つ記しておきたいのは“築地松”。強風から屋敷を守るための、高く揃えたマツによる防風林。この出雲独特の景観も現代では家が頑丈になったことにより減少傾向にあるそうですが、その姿は芸術の域。
斐川地域はまだ比較的残っている方で、“原鹿の築地松”は出雲市指定文化財になっています。これこそ、大袈裟じゃなく世界に知ってほしい景観と技術…!

決して公共交通機関でのアクセスが良い場所ではないのですが、雲州平田駅でレンタサイクルをして『平田本陣記念館』、『康国寺庭園』、そしてここと巡るのだとしてもこれは地味に名園巡りなのではと思う(あと『出雲キルト美術館』も)。ぜひ味わって欲しい枯山水庭園。

(2020年11月、2022年5月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

一畑電車北松江線 雲州平田駅より3.5km(駅にレンタサイクルあり)
一畑電車北松江線 旅伏駅より徒歩30分
JR山陰本線 直江駅より約3.5km
出雲市駅・出雲空港より路線バス「小原」バス停下車 徒歩20分

〒699-0643 島根県出雲市斐川町原鹿640-1 MAP

投稿者プロフィール

イトウマサトシ
イトウマサトシ
Instagram約9万フォロワーの日本庭園メディア『おにわさん』中の人。これまで足を運んで紹介した庭園の数は1,900以上。執筆・お仕事のご依頼も受け付けています!ご連絡はSNSのDMよりお願いいたします。
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