平田本陣記念館

Hirata Honjin Memorial Museum Garden, Izumo, Shimane

海外日本庭園ランキングにも連続ランクイン!大名茶人・松平不昧を始めとする松江藩主の本陣をつとめた雲州平田の名家“木佐家”から完全移築された“出雲流庭園”。

庭園フォトギャラリーGarden Photo Gallery

平田本陣記念館(旧木佐家)庭園について

「平田本陣記念館」(ひらたほんじんきねんかん)は出雲市の東部“雲州平田”で松江藩主・松平家の本陣や旧「平田市」の市長もつとめた旧家“木佐家”(本木佐家)の屋敷をルーツにもつ文化施設。その庭園は『足立美術館』が毎年1位になることで有名な海外日本庭園専門誌のランキングで2016年~2018年にかけて連続でトップ50にランクインしています。

2020年秋に初めて訪れ、2022年5月に再訪。その際の写真を追加して紹介。

江戸時代には松江~出雲大社参詣への交通の要衝として、また宍道湖の水上交通を活かした“雲州平田木綿”の生産地として栄えた雲州平田。駅から少し歩くと江戸時代の商家を含む“木綿街道”の古い町並みが残ります。
この平田本陣記念館はその町並みからは徒歩20分ほど距離が離れていますが、元は街の中心部(雲州平田駅前の“平田本町”)にあったお屋敷を移築したもの。

このお屋敷の元の所有者・木佐家(本木佐家)について。元のルーツを辿ると近江源氏・佐々木氏にさかのぼるという武家出身で、およそ700年前の南北朝時代に備後国から出雲国・平田に移住。以来この地域の豪族として繁栄し、戦国時代には戦国大名・尼子氏に仕えました。

江戸時代には新田開発と酒造業、そして木綿販売も手掛ける豪商に。松江藩主・松平氏と関係を築き、そのお屋敷は松平家の鷹狩や出雲大社参拝の際の宿泊所(本陣)として用いられたとか。

明治時代の当主・木佐徳三郎守久は平田銀行/製糸会社/鉄道会社を設立するなど実業家として地域に貢献&衆議院議員にも当選、それを継いだ9代目当主・木佐徳之助範久も実業家として島根県の多額納税者となり、平田町長・平田市長を歴任し平田市名誉市民に。まさに“地域の名家”。

そんな名家のお屋敷も街の再開発の波を受け、元の場所から約2kmほど離れた山の中腹に移築して1989年(平成元年)10月に開館したのが平田本陣記念館。
記念館で見られる“御成門”や屋敷の一部(藩主の過ごした“上の間”)/枯山水庭園はそのままそっくり移築されたもので、茶室“悠々庵”は江戸時代の図面を元に再建されたもの。開館にあたっての総工費は13億円!現在は出雲市所有の施設として屋敷/庭園は無料公開されています(※美術品の展示室や企画展は有料)。

庭園鑑賞用のホールから広々と眺められる枯山水庭園は、冒頭の通り実は海外日本庭園専門誌のランキングでも連続ランクインした実績のある“隠れた名庭園”。
その特徴は、一面に敷かれた砂の中に高い飛び石が打たれている回遊式の枯山水庭園というスタイル(*この庭園は中を歩くことは不可)。松江〜出雲地域でよく見られる“出雲流庭園”“玄丹流庭園”と呼ばれる独特の様式で、大名茶人・松平不昧として有名な7代目松江藩主・松平治郷のお抱え庭師・沢玄丹が出雲に伝えたことからそう呼ばれます。

現在の庭園の姿は移築された後のもので、それ以前の元の作庭年代は不明ですが、木佐家は松平不昧公とも文化的な繋がりがあったそうなので…原型は松平不昧が生きた時代(江戸時代後期)に作られた可能性も…?
肌色〜茶色っぽい砂は奥出雲で産出される“お留砂”と呼ばれるもの。『足立美術館』にも同じ色の砂が敷かれたエリアがありますね。

植栽もとてもきれいにお手入れが行き届いていて…中でも、飛び石と同じ高さにサツキがきれいに刈り込んである見せ方は初めて見た気がする!(ちょうど休憩されていた庭師さんにお聞きしたら、特に何か意識されたものではないそうだけど)。京都ならば苔で描いているような波や島の曲線。そして元の庭園にはなかったであろう山の借景も良い!

その他にも「上の間」には上の間には土佐光芳作の「鶉図」や坪庭、松平家歴代藩主&近代の政治家・西園寺公望の書画なども残ります。島根の隠れた名庭園の一つ、ぜひ訪れてみて。

(2020年11月、2022年5月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

一畑電車北松江線 雲州平田駅より徒歩20分強(駅にレンタサイクルあり)
雲州平田駅より路線バス「平田本陣記念館入口」バス停下車 徒歩8分(本数そんなに無い)

〒691-0001 島根県出雲市平田町515 MAP

投稿者プロフィール

イトウマサトシ
イトウマサトシ
Instagram約9万フォロワーの日本庭園メディア『おにわさん』中の人。これまで足を運んで紹介した庭園の数は1,900以上。執筆・お仕事のご依頼も受け付けています!ご連絡はSNSのDMよりお願いいたします。
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