絲原氏庭園(絲原記念館)Itohara Museum Garden, Okuizumo, Shimane

“たたら製鉄”で栄えた名家に残る、近衛文麿や与謝野鉄幹・晶子も訪れた国登録名勝の出雲流庭園と茶室とお屋敷。

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絲原記念館・絲原氏庭園について

「絲原記念館」(いとはらきねんかん)は江戸時代に“たたら製鉄”と呼ばれた製鉄業で栄え、松江藩の五鉄師の一つだった絲原家の美術工芸品・古文書が収蔵/展示されている私立博物館。敷地内には2018年に国登録記念物(名勝地関係)に選ばれた「絲原氏庭園」があるほか、主屋をはじめ9棟の建造物が国登録有形文化財となっています。日本遺産『出雲國たたら風土記 ~鉄づくり千年が生んだ物語~』の構成文化財。

2020年秋の島根県の庭園巡り、『櫻井氏庭園』と並び行きたかった奥出雲の庭園がこちら。櫻井家ほどではないにせよ、こちらも松江や出雲の市街地からは約40kmという内陸部。こちらはレンタサイクルのある最寄り駅から約4km、そして“鬼滅の刃”の聖地にもなった国指定名勝『鬼の舌震』の雨川駐車場まで約1.5km(併せて巡れる)という距離感。

中世までは備後国の武士だった絲原家。江戸時代初めに出雲に移住し帰農した後、1636年(寛永13年)からたたら製鉄を開始。そこから幕末にかけては松江藩の鉄師頭取をつとめ、『可部屋集成館』の櫻井氏らとともに“鉄山御三家”として藩の財政に貢献。そのような背景から松江城から遠く離れたこの地にも藩主・松平公は何度か領内巡視で訪れ、その際の本陣にもなりました。

近代の十二代目~十三代目の当主・絲原武太郎は地元の名士として現・JR木次線の鉄道敷設に尽力したほか、松江銀行頭取・取締役などを歴任。貴族院多額納税者議員もつとめた存在で、昭和初期には与謝野鉄幹与謝野晶子田能村直入といった文人墨客も当地へ訪れました。現在のご当主は十五代目。施設内の茶房の名称にもなっています。

国の文化財のうち、庭園および主屋・前座敷は明治時代~大正時代の近代に造営されたもので(その他、門柱・土塀・南蔵、金屋子神社も明治時代)、米蔵および藩主を迎えるための御成門と御成座敷として用いられた客殿が江戸時代の建造物として残ります。昭和初期に造られた茶室の待合も登録有形文化財。

1924年(大正13年)に完成した主屋は現在は一部が茶房として利用されており、その精巧な衣装が近代の和風建築らしさを感じます。文化庁のサイトでは設計・小笠原祥光、棟梁は高田榮蔵…とあるけど、絲原家の案内板には設計が京都帝国大学の佐藤作造、大工棟梁は平田の長谷川松太郎とある。

主屋と客殿の間に江戸時代末期~大正時代の主屋完成にかけて作庭された主庭園があります。山の斜面を活かした池泉回遊式庭園で、平地部分は白砂の中に短冊石や丸石を組合わせた飛び石が配されたいわゆる“出雲流庭園”。
出雲の平野部にある出雲流庭園と比べると決して規模が大きいわけではないのですが、主屋・客殿の二方向から見るために多くの要素が詰め込まれた素晴らしい庭園。(あと今回巡った中で唯一飛び石じゃなくて白砂の部分を歩く形の順路だった気がする。きれいな砂紋を踏んでいく後ろめたさ…)

出雲流庭園と言えば茶室。絲原氏庭園にも2つの茶室があります。まずは主庭園の片隅にある「為楽庵」。松江にある国指定名勝『菅田庵』内にある、松平不昧公設計の茶室『向月亭』()の写しで、現在も菅田庵を引継ぐ松江藩家老・有澤家の9代目・有澤宗滴と十三代目絲原武太郎の“不昧流茶道”の再興の想いから造られました。

もう一つが散策路の奥へと進んだ場所にある「庭玉軒」。1935年(昭和10年)に後の総理大臣・近衛文麿を迎える際に京都の大徳寺『真珠庵』にある金森宗和設計の同名の茶室を模して造ったもので、その扁額は近衛文麿によるもの。この茶室も元は主庭園内にあったそうですが、平成はじめに散策路“洗心乃路”や“楓滝”の公開をきっかけに現在の場所に移築。現在の庭玉軒では秋には一面の紅葉が楽しめるロケーション!現在の露地の作庭は八川の西尾芳春園さん。

記念館ではたたら製鉄に関する史料展示のほかにも松江藩主から拝領した美術品を所蔵・展示されており、中には円山応挙池大雅長沢蘆雪といった京都の有名画家の作品も。あわせてチェック!

(2020年11月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

JR木次線 出雲三成駅より約4km(駅にレンタサイクルあり)
出雲三成駅・出雲横田駅より奥出雲交通バス「絲原記念館前」バス停下車 徒歩3分(本数僅少。詳しくはこちら

〒699-1812 島根県仁多郡奥出雲町大谷856 MAP

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