谷崎潤一郎の代表作『細雪』の舞台となった“阪神間モダニズム”の近代和風建築。細雪に描写のある庭園も。
倚松庵庭園について
「倚松庵」(いしょうあん)は文豪・谷崎潤一郎の暮らした旧宅。代表作『細雪』で描かれている舞台にもなっていることから“細雪の家”とも言われます。
…読んだことがないので概要だけ。谷崎潤一郎の代表作『細雪』は近代の大阪の旧家を舞台に、当時の阪神間の生活文化を描いた作品。現代においてもテレビドラマとして放映されたり、東京『明治座』では舞台が続いています。
そういえば2018年の中山美穂、高岡早紀でのテレビドラマはたまたま見たなあ…!あの四姉妹の物語、つい面白くて最後まで見てしまったのだけどあの作品の舞台だったのか…。
谷崎潤一郎はこの邸宅に1936年(昭和11年)から1943年(昭和18年)までの7年間を暮らしました。関東大震災を機に関西へ移住した谷崎は阪神間で過ごした約20年で13回も転居。その中で最も長く暮らしたのがこの細雪の家。
現在の建物は、六甲アイランド線の開設にともない元の位置から約150m移動して移築されたもので平成2年より公開されています。
なので家屋を囲む庭園も平成になって以降に整備されたものですが、これも『細雪』の庭園に関する描写を忠実に再現したもの。
大正の末頃からぽつぽつと開けて行った土地なので、この家の庭なども、そんなに廣くはないのだけれども、昔の面影を伝えている大木の松などが二三本取り入れてあり、西北側は隣家の植え込みを隔てて六甲一帯の山や丘陵が望まれるところから、……南側の方には、芝生と花壇があり、その向うにささやかな築山があって、白い細かい花をつけた小手毬が、岩組の間から懸崖になって水のない池に垂れかかり、右の方の汀には桜とライラックが咲いていた。
…このお庭の雰囲気、どこに近いなあと考えると、東京・荻窪にある角川書店の創業者の旧宅『角川庭園(幻戯山房)』に近いなと。
そして昭和初期の日本家屋の割には、暖炉にステンドグラス、フローリングやガラス窓の洋間があったりと洋風な雰囲気が取り入れられています。これは元の家主の夫がベルギー人だったところから来ているそうで、阪神間モダニズムの近代和風建築の一例としても面白い。また室内には谷崎潤一郎の作品や資料を読める書棚があり、本を読んでおられる方も多かった。
なお谷崎潤一郎の墓所は京都の『法然院』にあります。法然院からは遠縁の橋本関雪の自邸『白沙村荘』もすぐ。昭和の時代、文学と絵画の文化人同士、交流があったりしたのかな。
(2019年11月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)