その美しい筆跡が好き。神戸大学構内に残る、近代〜昭和に活躍した俳人・山口誓子が暮らした“阪神間モダニズム”の時代の近代和風建築。
山口誓子記念館について
【火・木曜日のみ開館/大学の休み中は休館】
「山口誓子記念館」(やまぐちせいしきねんかん)は六甲・神戸大学の構内にある俳人・山口誓子の記念館。その建築は山口誓子が長く暮らした昭和初期の近代和風建築の一部を移築・復元したもの。
京都市上京区、現在は左京区の岡崎出身。高浜虚子に師事し、夏目漱石が『吾輩は猫である』『坊っちゃん』を連載したことで有名な雑誌『ホトトギス』で頭角を現すと“ホトトギスの四S”に挙げられる新進気鋭の俳人となり、大正時代〜昭和〜平成年代のはじめまで活躍。晩年には勲三等瑞宝章を受賞、文化功労者にもなった山口誓子。
初めてこの方に興味を持ったのは重森三玲の非公開庭園『前垣氏庭園“寿延庭”』。俳句よりも、めちゃくちゃ素敵な字を書かれる方だなあと思って…。以降も各地(主に西日本)で句碑や書を目にする過程で「神戸にあるのか、行きたいな」と思っていたのがこの記念館。
開館日が平日のみ/コロナ禍での休館もありなかなか訪れられなかったけど、2022年6月に初めて訪れました!ていうかめっちゃ坂の上だな神戸大学…!
1994年に亡くなられるまでの晩年の約40年間は西宮市苦楽園五番町に自邸を置いた山口誓子。元は昭和初期に建築された数寄屋造の元料亭旅館。いわゆる“阪神間モダニズム”と同じ時代の和風建築。
誓子が亡くなられた翌年の1995年1月、この邸宅を襲ったのが阪神淡路大震災。石垣は崩れ邸宅も倒壊してしまいますが、無事だった一部の建具を活かした上で2001年(平成13年)に忠実に移築復元されたのがこの記念館。
記念館としての展示や学生さんのイベントでの利用はもちろん、復元の際に水屋などが新たに設けられ、留学生や外国からのお客様に日本文化を体験していただく場としても利用されているそう。
旧邸の前には庭園も広がります。使われている庭石などは西宮から移されたもの…ではなくオリジナルだそうですが、樹種については西宮時代の庭園の雰囲気は寄せて作庭されているそう。現在も神戸の街並みと大阪湾を見下ろす絶好のロケーションですが、苦楽園の自邸も同じように大阪湾を見下ろす高台に位置していました。
“神戸大学名誉博士号”も授与されている山口誓子…ですが、本人は神戸大学と縁があったわけではない(東京帝国大学卒業)。
その縁は妻で同じく著名な俳人だった山口波津女から。波津女の弟・末永山彦が神戸大学出身で学長と同窓であるなど縁が深く、山口夫妻も西宮在住だったことから、神戸大学が俳句・文学研究の場になることを見込んで作品の著作権・2万冊以上の蔵書・邸宅・そして預金などの遺産まで神戸大学に寄附。記念館や後述の文庫もこの基金により支えられています。波津女の字も独特で美しく、学芸員さんいわく「誓子の字は波津女の字から影響を受けている」と。
この記念館以外にも神戸大学百年記念館の1階に展示ホールがあり、年に一回山口誓子・山口波津女に関する企画展が開催。ホールに隣接する『誓子・波津女俳句俳諧文庫』には夫妻から寄贈された資料や関連図書が保存され、図書は閲覧することも可能。興味を持った方は足を運んでみて。
(2022年6月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)
アクセス・住所 / Locations
阪急神戸線 六甲駅より徒歩15分(行きは上り坂)
JR神戸線 六甲道駅より徒歩20分強
六甲駅・六甲道駅より路線バス「神大本部工学部前」バス停下車 徒歩5分
〒657-8501 兵庫県神戸市灘区六甲台町1-1 MAP