伊勢神宮 神宮茶室・庭園

Ise Jingu Tearoom Garden, Ise, Mie

言わずと知れた“お伊勢さん”。日本を代表する神社に昭和を代表する作庭家・岩城亘太郎/数寄屋大工・中村外二が手掛けた茶室と美しい庭園。【通常非公開】

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伊勢神宮 神宮茶室・庭園について

【茶室・庭園は年二回の『神楽祭』期間のみ公開(通常非公開)】
「伊勢神宮」(いせじんぐう)は皇室の大御祖神(氏神様)の天照大御神(アマテラスオオカミ)をまつる、名実ともに日本を代表する神社。正式名称は「神宮」。主な境内は「皇大神宮」(通称「内宮」)と「豊受大神宮」(通称「外宮」)からなり、そのうち内宮に一般には通常非公開の茶室『神宮茶室』と日本庭園があります。年2回の神楽祭(春:4月29日前後/秋:9月23日前後)のみ公開。庭園の作庭は昭和を代表する作庭家・岩城亘太郎(岩城造園)

説明不要の“お伊勢さん”。その通常非公開の庭園――詳細は後述しますが、日本を代表する神社の庭園。美しいに決まっています…!
公開期間は年2回、春(4月29日前後)と秋(9月23日前後)。年によって多少の前後があり、また期間中でも雨天の場合は公開中止になります。詳細は伊勢神宮の公式サイトをご確認ください。

その歴史を超ざっくりと。約2000年前、それまで宮中(皇居内)に祀られていた天照大御神と三種の神器「八咫鏡」を皇居外で祀ることに。垂仁天皇の代、その子・倭姫命がそれに相応しい場所を探して諸国を巡行。その末、大神のお告げがあり伊勢国のこの地に鎮座されることとなりました。これが内宮の始まりで、外宮はそこから約500年ほど後の雄略天皇22年(西暦478年)の創始とされます。

以来、時代ごとの興隆や衰退はあったものの、中世以降は源頼朝織田信長豊臣秀吉らを筆頭に武家の間に伊勢信仰が広がります。そして江戸時代以降、現在まで続く一般民衆の“お伊勢参り”が流行。

伊勢神宮といえば20年ごとに社殿を新たに作り替える「式年遷宮」。飛鳥時代から(途切れた時期はあれど)1300年間続くこの行事、あくまで「新しく作り替えていく」行事ゆえその社殿は一件も文化財指定・登録を受けていないのもある意味の特徴(※『神宮徴古館』など関連施設の文化財登録はある)。
しかしながら内宮・外宮を中心とする境内には「125社」と数えられる多数のお社・建築が点在します。建築は文化財指定はないけれど、国宝『玉篇巻第廿二』をはじめ、古事記、日本書紀など数多くの重要文化財を所蔵。

さて。ここでの紹介は「神宮茶室」とその庭園。内宮のアプローチ、宇治橋を渡ってすぐ左手の「紅葉山」と称された林の中に佇んでいます。こちらがこの茶室/庭園が作られたのは昭和時代の1983年〜1985年(昭和58〜60年)。伊勢神宮崇敬会会長もつとめた松下電器(パナソニック)創業者・松下幸之助および松下電器一同により寄進(献納)されました。

庭園の作庭は昭和を代表する作庭家・岩城亘太郎(岩城造園)、建築設計は仙アートスタヂオ、建築施工は京都を代表する数寄屋大工・中村外二(中村外二工務店)。松下翁―岩城さんで言うと同じ三重県の『椿大神社 茶室“鈴松庵”』や栃木の『古峯園』、松下翁―中村外二さんで言うと京都『国立京都国際会館“宝松庵”』など、松下幸之助が信頼を寄せているチーム。なお、岩城造園は伊勢で『神宮美術館』の庭園も手がけています。

純和風建築とは言っても、2,000年続く内宮への新たな建物。施工の序盤には実物大の模型を建てて景観への配慮や借景の溶け込み方を松下幸之助本人も確認したのだとか。その配慮の通り紅葉山に溶け込んでいるので、参拝したことがある人でもその存在に気づいていない人も多いかも――しかしやはりそこは日本を代表する神社&当時の日本を代表する名クリエイターが手掛けた建築と庭園。そりゃあもう素晴らしくないはずがない!美しいの一言。

神宮茶室庭園は下記の3つの空間から構成されます。

■玄関前の「中庭」(10〜11枚目)
■水面に浮かぶ様な「上段の間」に対する池泉回遊式庭園「表庭」(12〜22枚目)
■東の間・西の間の縁先から、四畳半台目の茶室「霽月」(せいげつ)までの内露地・外露地からなる「茶庭」(23〜25枚目)

「庭上公開」では建築内部の見学はできませんが、露地の外側にある大腰掛待合に腰掛けて、その美しいお庭をゆっくり眺めることができます。全面檜皮葺の純和風建築、「上段の間」の床の間のヤタガラスの彫刻がまさに伊勢神宮らしい意匠でとてもカッコいい。尚、伊勢神宮崇敬会の方向けには神宮茶室での呈茶の行事も行われているそう(中見られるの羨ましい)。

「紅葉山」のロケーション通りゆらゆら揺れるモミジと、古来からの裏山〜五十鈴川の清流を活かした流れも美しい…。伊勢神宮の歴史に(すでに約50年経過したけれど)これから100年、200年と歴史を共にしていくであろう茶室と庭園。気になった方は「神楽祭」の情報や日程をチェック!

(2024年9月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

近鉄山田線 五十鈴川駅より2.5km(徒歩30分強)
近鉄 五十鈴川駅、JR伊勢市駅より路線バス「内宮前」バス停下車 徒歩5分

〒516-0023 三重県伊勢市宇治館町1 MAP

投稿者プロフィール

イトウマサトシ
イトウマサトシ
Instagram約9万フォロワーの日本庭園メディア『おにわさん』中の人。これまで足を運んで紹介した庭園の数は2,000以上。執筆・お仕事のご依頼も受け付けています!ご連絡はSNSのDMよりお願いいたします。
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