伊奈冨神社庭園「七島池」

Inou Jinja Shrine Garden, Suzuka, Mie

鈴鹿サーキットのある地で古代より続く神社、その庭園“七島池”は空海が造営と伝わる三重県指定名勝の文化財庭園!国指定重要文化財の宝物やツツジの名所としても人気。

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伊奈冨神社 庭園「七島池」について

「伊奈冨神社」(いのうじんじゃ)は三重県鈴鹿市の「鈴鹿サーキット」の程近くで古代より続く神社。国指定重要文化財の扁額・神像などを有するほか、その池泉庭園「七島池」は弘法大師・空海により造営されたと伝わる古庭園で三重県指定名勝(三重県指定文化財)。ツツジの名所としても人気で、例年4月16日の御例祭の頃に「つつじまつり」が開催されます。
2025年、久々に参拝したので写真を更新して改めて紹介。(以前訪れた際は庭園が修復中でした。Before→After的に写真を並べています。)

鈴鹿市と言えば、なんと言っても「鈴鹿サーキット」。F-1の開催地にもなるこのサーキットの最寄駅・鈴鹿サーキット稲生駅から徒歩10分弱の場所に文化財に指定されている古庭園があります。

その歴史について。創建年代として伝わるのは古代の崇神天皇5年(紀元前の時代)と大変古く、現在鈴鹿サーキットの敷地内にある「東ヶ岡」(東ヶ岡神社)に御神霊が出現し、社殿が造営されたと言われます。(なので、現在では鈴鹿サーキットの鎮守の神の様な存在でもある…)
近隣にある『神宮寺』もかつてはこの伊奈冨神社の別当寺で、奈良時代に行基による創建。平安時代の初めには弘法大師空海も参拝、鎌倉時代には正一位に進階。その際に藤原経朝によって制作された「正一位稲生大明神」の扁額が国指定重要文化財。戦国時代には伊勢国司・北畠氏により信仰されました。

庭園「七島池」は現在の境内の南部、最初の鳥居をくぐる前〜くぐった先にあります。平面的な縦長の池泉の中に、通称の通り7つの島が配されたごくシンプルな庭園。その作風は「多島式庭園」ともカテゴライズされ、日本庭園の古代的な様式の一つとして評価されています。

ところで、神社に「神苑」と名付けられた池が存在することはよくあると言えばあるのですが、名勝(文化財)にまでなる例は寺院の庭園と比べると(なぜか)少ない。その中でこちらが名勝(文化財)となっているのはその歴史的価値。

社伝では、この池泉を「一夜にして」造営したと言われるのが弘法大師空海。その島々は“大八島”と呼ばれた日本列島を表現したものと言われます。同じく文化財となっている神社の庭園で、滋賀の『阿自岐神社庭園』と雰囲気が似ている…気もするし、京都の『神泉苑』も空海ゆかりの庭園としては雰囲気が近いかもしれない…?(いや全然違うと言われれば全然違うけど)

空海の作庭とするならば平安時代の庭園で、三重県および東海地方では『城之越遺跡』に次ぐ古庭園。その空海のエピソードは“言い伝え”だとしても、室町時代に描かれた寺宝『勢州稲生村三社絵図』(三重県指定文化財)にもこの七島池は記され、遅くとも鎌倉〜室町時代にはこの庭園が存在していたことが証明されています(その時点でも東海地方屈指の古庭園)。

どこが特徴的かと言うと、平面的な池泉庭園としては平安時代〜鎌倉時代に流行した「浄土式庭園」に近いのですが、浄土庭園にある洲浜や護岸の石、立石を配した石組みたいなものがない。池と島と神社の歴史の中で成長した樹木によるシンプルな空間。ちなみにこの庭園を調査・測量し、三重県最古級の庭園として評価したのは昭和を代表する作庭家・重森三玲。数ある「神苑」からこの伊奈冨神社に着目した点がとても興味深い…。

伊奈冨神社で庭園とともに三重県指定名勝となっているのが「ツツジ」(稲生山の躑躅)。社殿のある小高い山「稲生山」には数千本(約5,000株)ものムラサキツツジ(ミツバツツジ)が群生。例年4月上旬〜中旬にかけてピンク色の花を咲かせ境内を彩ります(次回はその時期に訪れたい!)。花がお好きな方はぜひその時期に参拝に訪れてみて。

(2017年12月、2025年11月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

伊勢鉄道 鈴鹿サーキット稲生駅より徒歩8分

〒510-0204 三重県鈴鹿市稲生西2丁目24-20 MAP

投稿者プロフィール

イトウマサトシ
イトウマサトシ
Instagram約9万フォロワーの日本庭園メディア『おにわさん』中の人。これまで足を運んで紹介した庭園の数は2,000以上。執筆・お仕事のご依頼も受け付けています!ご連絡はSNSのDMよりお願いいたします。
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