旧林氏庭園(一宮市尾西歴史民俗資料館)

Bisai Historical Museum's Garden, Ichinomiya, Aichi

東海道の脇往還・美濃路「起宿」の脇本陣に昭和初期に作庭された苔の美しい庭園。令和元年、国登録名勝に。

庭園フォトギャラリーGarden Photo Gallery

旧林氏庭園・尾西市歴史民俗資料館別館について

「旧林氏庭園」(きゅうはやししていえん)は2019年6月に国登録名勝に選定された庭園。『一宮市尾西歴史民俗資料館』の別館として公開されている国登録有形文化財『旧林家住宅』の庭園で、無料で散策することができます。令和最初の国名勝庭園――ってことで早速行ってきました!
ちなみに以前美濃太田の宿場町の『林家住宅』を紹介しましたが、それとはまた別の林家。

まずこの庭園のある「一宮市起」の町はかつて東海道の脇街道・美濃路「起宿」のあった場所。初めて行ったけれど、独特のS字カーブなど現在も旧街道の古い町並みの面影を残していました。この旧林家住宅以外にも『旧湊屋』という国登録有形文化財になっている古建築があります(水・土日のみ飲食店として営業。こちらも見たかったけど残念ながら休業日…)。
その中で「林家」は起宿の脇本陣を務めていた家柄。江戸時代の建築は明治時代の濃尾地震で倒壊してしまったため、現在の邸宅は大正時代に建て直されたもの。前述通り登録有形文化財であり、「起宿脇本陣跡」として一宮市指定史跡でもあります。

この林家は美濃清水城主・林通兼をルーツとした家系で、通兼より3代目の林通安の代からは尾張の大名・織田家に仕えていたそう。その後江戸時代にこの起宿に移住し、その後は明治時代に宿場町・本陣・脇本陣制度が廃止されるまで9代に渡りこの脇本陣を運営していました。
この庭園は脇本陣時代の最後の当主となった林英太郎の息子・10代目当主の林幸一によって昭和元年から約10年の歳月をかけて作庭されたもの。

最初の印象としては――まずこんなに苔がきれいな庭園が愛知県内にあるとは知らなかった!これまで愛知県内でここまで苔が生え揃った庭園は見たことなかったし、なんとなく名古屋あたりって夏は暑いイメージがあるのでそういう庭園は無いと思っていた。
苔の中に多くの飛び石や枯池の周りには鞍馬の赤石含めた様々な石が配されているのが特徴。またドウダンツツジやカエデ類が多く植わっているので、紅葉時期は特に美しいのだろうなー!

作庭者の林幸一氏はまだ作庭最中だった昭和11年に亡くなられたため庭園としては未完成なのだそう。飛び石を伝っていくと腰掛待合があるのですが、茶室は無いんですよね…この後に茶室も作る予定だったのかなあ。

また隣接する『一宮市尾西歴史民俗資料館』では主に美濃路・起宿に関する様々な展示がされていたのですが、企画展の説明用の冊子がA4の固い紙で12Pの冊子…とかなりしっかりしているもので配布されており。今回林家の庭園が国の文化財になったのは、一宮市の文化財スタッフの方の努力によるものでもあるのかもなあ…と思いました。美濃路もそうだけど、宿場町の旧家などにはまだまだ歴史的庭園が残っているんだろうな。

(2019年8月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

尾張一宮駅・名鉄一宮駅より路線バス・起線「起」バス停下車 徒歩5分
最寄駅は名鉄尾西線・奥町駅で約3.5km。尾張一宮駅からは約6km。レンタサイクルは2019年3月で終了してた…

〒494-0006 愛知県一宮市起下町211 MAP

投稿者プロフィール

イトウマサトシ
イトウマサトシ
Instagram約9万フォロワーの日本庭園メディア『おにわさん』中の人。これまで足を運んで紹介した庭園の数は2,000以上。執筆・お仕事のご依頼も受け付けています!ご連絡はSNSのDMよりお願いいたします。
PICK UP - TOUR / EVENT
MEDIA / COLUMN
最新の庭園情報は約10万人がフォローする
【おにわさん】のSNSから。