法師庭園

Houshi Ryokan Garden, Komatsu, Ishikawa

創業1300年、46代目。“世界最古のホテル”の一つ、小堀遠州も愛でた旅館の池泉回遊式庭園。国登録有形文化財。

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法師庭園について

粟津温泉にある「法師」(ほうし)は奈良時代、718年に開業し1300年の歴史をほこる温泉旅館。宿泊者のみ散策可能な日本庭園は江戸時代に小堀遠州が愛でたもので、その後明治時代に建てられた玄関棟、庭園内にある離れ“延命閣”が国登録有形文化財となっています。

2020年9月に初宿泊。“粟津温泉に小堀遠州ゆかりの庭園がある”というのは2019年3月に近くの『苔の里』に訪れた時から知っていて、その時も「宿泊者以外でも見られますか」とお聞きしたのですが(笑)、それは不可ということで。
その頃は1泊それなりのお値段でも埋まっていたのですが、この9月はインバウンド需要減+GoToでかなりお安く(…ビジネスホテル以下の料金に…)なっていたので宿泊に訪れました。

国指定名勝+国指定重要文化財の『那谷寺』を開いた泰澄大師により、那谷寺の翌年に開湯したのが粟津温泉。そして泰澄大師の弟子・雅亮法師に建てさせた湯治宿がこの「法師」。以来、現当主で46代目の“法師善五郎”はこの地で多くの湯治客を迎えました。すぐお向かいには“総湯”もあります。
一時期は“世界最古のホテル”としてギネスブックに登録されたことも(現在は別の山梨県の宿)。100年もすれば十分“老舗”な中で、1,300年の宿にはなんて言葉が合うんだろう…。

歴史的な宿として、玄関棟の和風ロビー“松風”で使われている群青色は加賀藩三代目藩主・前田利常により使用を許されたもの。この群青色の数寄屋風建築、金沢の『辻家庭園』(加賀藩家老・横山家)の主屋に雰囲気が似ているなあ。

中庭の池泉回遊式庭園に関して、“小堀遠州作庭”と断定はされていない(法師公式でもぼんやり表現されている)けれど、前田利常の名前が出てくるということは…利常公愛用の茶室が残る『那谷寺書院庭園』の指導をした小堀遠州がこの庭園の作庭・造営・改修に関わっているとしてもなんの不思議はなく。

訪れたのが真夏のピークが去るか去らないかぐらいの時期だったので、本来この庭園が持っている(と思われる)苔の美しさは少し隠れてしまっていたけれど、庭園の多くの箇所がが苔むしているのは『那谷寺』や『苔の里』と同じ。
その中で質素だった『那谷寺』と圧倒的な違いを見せるのが、“松風”から正面奥にのぞむ中島をはじめとする豪快な石の使われ方!特に、蓬莱山に見立てた築山の中島は一気に『二条城二の丸庭園』かのような豪快さを感じさせられるし、石灯籠も大きなものばかり。

昭和に手を加えられたにしては苔むしすぎ(←良い意味で)なので、文化財の2棟の建った明治時代やそれ以前の江戸時代に、やはり小堀遠州が作庭指導にあたっていたのかなあと妄想させられるけど――だとしたらその出資者・パトロンには前田利常が居たんじゃないか?という気がする。こんな石がゴリゴリしてる感じは『兼六園』にもないし、一介の温泉宿に豪華な庭園が許されるとしたらバックに藩主が居ないと難しいのではとか。妄想ですけど。

庭園中央には文化財の貴賓室「延命閣」。賀陽宮殿下、三笠宮殿下、高松宮妃殿下などの皇族も泊まられたお部屋も宿泊することができます(それ相応の料金ですが!)。
あと庭園の一部分は、京都の『瑠璃光院』で知られる佐野藤右衛門(植藤造園)が手掛けられているそう。具体的にどの辺かはわからなかったけど、“夏の館”の裏に能舞台のある池泉庭園や“秋の館”が現代の建築って感じがしたからその辺かな。あと露天風呂。

庭園目的はもちろんだけど――粟津温泉も、休業中の宿泊施設もいくつか見受けられた。感染対策の上で、多くの方に訪れてほしいと思います。

(2020年9月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

JR北陸本線 粟津駅より約3.5km
粟津駅より路線バス「粟津温泉北」バス停下車 徒歩1分

〒923-0326 石川県小松市粟津町46 MAP

投稿者プロフィール

イトウマサトシ
イトウマサトシ
Instagram約9万フォロワーの日本庭園メディア『おにわさん』中の人。これまで足を運んで紹介した庭園の数は2,000以上。執筆・お仕事のご依頼も受け付けています!ご連絡はSNSのDMよりお願いいたします。
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