平山郁夫美術館・庭園

Hirayama Ikuo Museum of Art Garden, Setoda, Hiroshima

昭和〜平成初期の日本画の巨匠・平山郁夫の故郷“瀬戸田”に開かれた美術館に、同時代を代表する造園家・中島健が作庭した瀬戸内海の多島美を表現した庭園。

庭園フォトギャラリーGarden Photo Gallery

平山郁夫美術館庭園について

「平山郁夫美術館」(ひらやまいくおびじゅつかん)は広島県・尾道市と愛媛県・今治市を結ぶ「しまなみ海道」の途中、生口島の港町「瀬戸田」にある美術館。その名の通り、昭和〜平成時代に活躍した日本画家・平山郁夫の作品を中心に展示。美術館の庭園は同時代の日本を代表する造園家のひとり・中島健の作庭。

写真映えスポットとしても人気の『耕三寺 未来心の丘』やしまなみ海道サイクリングが近年人気を集める観光エリア・瀬戸田。「アマン」創業者による旅館『Azumi Setoda』の開業も手伝って海外から訪れる方も増えています。先述の耕三寺の門前に位置するのがこの美術館。

日本文化や仏教の源流を訪ねた『シルクロード』をテーマとした作品を数多く残した、昭和〜平成を代表する画家・平山郁夫さん。その人生や功績については公式サイト等でご覧いただくとして、出身はこの瀬戸田の町。

文化勲章を受章される前年、1997年(平成9年)に開館したこの美術館では、代表作の『シルクロード』シリーズのみならず、美術学生時代の作品から故郷・瀬戸田〜しまなみ海道を描いた作品が多数展示されている、まさに平山郁夫の“原風景”を知ることができます。また、氏がシルクロード・アジア取材で出会った現地の文化財(アンコール・ワット遺跡など)の保全活動(『文化財赤十字活動』)での功績についての展示・解説も。

そしてこの美術館は建築や庭園も見所。道路から見て、全面瓦葺きの長〜い姿が特徴的な、そしてどこかオリエンタルな近代〜現代和風建築の設計は建築家・今里隆さんによるもの。“近代数寄屋建築”の巨匠・吉田五十八に師事し、『両国国技館』や京都の『南座』、そして東京『池上本門寺』や京都『醍醐寺』にも氏の建築が残されています。

そして庭園の作庭を手掛けたのは昭和〜平成時代にかけ国内外で庭園を残されてた造園家・中島健。なお今里隆さんの師・吉田五十八と中島健さんは『旧吉田茂邸』『玉堂美術館』でタッグを組んでいる間柄。

ロビーやティーラウンジ(喫茶オアシス)からの鑑賞式庭園で、庭園の外側を囲みながらそれぞれの表情を持つ刈り込みは瀬戸内海の島々の風景を表現、中央に浮島のようにある刈り込みは瀬戸内海に浮かぶ「ひょうたん島」(国の登録記念物)を表したもの。

大刈込みを主体とした古庭園として、滋賀県のサツキの名庭園『大池寺庭園』がありますが、現代に作庭する以上は先人を超えなければ——そんなメッセージも感じられる?大刈込み!
手前の白砂と奥の芝生の平地はそれぞれ瀬戸内海を表したものですが、全面白砂ではなく2つのエリアを表現しているのは——奥行き表現や、“禅の庭”の様になり過ぎない為の意図とか、広島や愛媛という二つのエリアを意図したものかな。

この主庭のみならず、外周の(長〜い建築に合わせた)刈り込みや、アプローチの植栽も四季の草花が見られとても癒される——尚このアプローチにはこの美術館を訪れた皇太子時代の今上天皇・皇后陛下や三笠宮崇仁親王の記念碑や植樹も。しまなみ海道の旅の際にはぜひ立ち寄って欲しい美術館!

(2025年5月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

瀬戸田港より徒歩10分
JR尾道駅より路線バス「耕三寺」バス停下車すぐ MAP

投稿者プロフィール

イトウマサトシ
イトウマサトシ
Instagram約9万フォロワーの日本庭園メディア『おにわさん』中の人。これまで足を運んで紹介した庭園の数は2,000以上。執筆・お仕事のご依頼も受け付けています!ご連絡はSNSのDMよりお願いいたします。
PICK UP - TOUR / EVENT
MEDIA / COLUMN
最新の庭園情報は約10万人がフォローする
【おにわさん】のSNSから。