“灘五郷”の蔵元・白鷹による複合施設。庭園も眺められる東京・銀座『竹葉亭』や茶室、富岡鉄斎の書画も。対馬造園店作庭。
白鷹禄水苑について
「白鷹禄水苑」(はくたかろくすいえん)は“灘五郷”西宮郷の代表的な酒造会社の一つ『白鷹』の運営する複合施設。売店やバー、白鷹に伝わる各種資料・展示物が見られる「白鷹集古館」「暮らしの展示室」のほか、東京・銀座の料亭『竹葉亭』の支店もあります。庭園の作庭は地元・兵庫県の対馬造園店。
『白鷹』は江戸時代初期創業の酒造会社『白鹿』の辰馬本家から分家した、辰馬悦蔵(辰馬北家)により幕末の1862年に創業(『西宮神社』の登録有形文化財の橋を寄進した人です)。
その後、三代目辰馬悦蔵の時代には大正時代に伊勢神宮の大御饌にも採用されるなど人気が高まり、灘の酒造会社の中では白鹿の辰馬本家と『菊正宗』『白鶴』の嘉納財閥に次ぐ資産額をほこるようになったそう。
本社工場から道を挟んで南にある白鷹禄水苑は2001年に竹中工務店の設計・施工により完成した建物。以前この場所にあった蔵元・辰馬北家の邸宅や当地の伝統的な造り酒屋の、酒蔵と住居が一体になっている建築様式が再現。
中庭で見られる伽藍石や埋め込まれた大きな庭石、井戸・石灯籠といった石造物はおそらく旧辰馬邸から引き継がれた(再利用された)ものなんじゃないかなあ~という古い雰囲気を醸しています。庭園一角には茶室“悦庵”も。
【追記】
「旧辰馬邸から引継がれたんじゃないかなあ〜」と憶測で書いていた点について、実際に設計を担当された三谷景一郎さん(『ひょうごの庭園〜図絵で読み解く〜』では画も担当されている)から実際の作庭意図についてInstagramでコメントをいただきました!
原文はこちら。
施設内庭園のほとんどの灯篭や景石は当時大阪中之島にあった竹葉亭が解体される事になり大阪から移設し、辰馬本家庭園からも一部の手水鉢を移設し造園しました。特に東側店舗前の庭園は当時の竹葉亭奥座敷の中庭の趣きを残し 写真の庭園は当時の辰馬家中庭の雰囲気を出す様に作庭しました。中央の踏分け石は現場から出てきた石を使いました。
白鷹集古館や暮らしの展示室にはかつての辰馬家の模型があり、往時の邸宅やお庭の様子も伺える。酒造りに関する各種展示のみならず、辰馬悦蔵と交流のあった作家・富岡鉄斎の書画も展示されています。
で、興味深いなあと思ったのは『白鷹禄水苑文化アカデミー』という文化講座を行っていること(しかもけっこう頻繁に企画を実施している)。資料を見せていただけたり酒蔵見学をやってる蔵元はそれなりにあるけど、自ら「文化講座」を運営してる例は珍しい。
それも「地域の方が参加しやすい」企画といった印象。伝統的な会社のそういう取り組みは“地域に愛される・地域の拠点になる”ことの重要性を感じさせられるし、こういう取り組みは勉強になる~。
ついでに最後の写真2枚は、近隣にある阪神モダニズム建築『旧辰馬喜十郎住宅』です。明治時代の洋館で兵庫県指定文化財。
(2020年10月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)
アクセス・住所 / Locations
阪神本線 西宮駅より徒歩10分
JR神戸線 さくら夙川駅より徒歩20分
阪急神戸線 西宮北口駅より路線バス「用海町」バス停下車 徒歩5分
〒662-0942 兵庫県西宮市鞍掛町5-1 MAP