
音楽ファンには特別なライブ会場として有名…?ひょうごの近代住宅100選の洋館/近代建築には神戸・塩屋の海をのぞむ和洋折衷な庭園も。
旧グッゲンハイム邸について
【イベント参加者のみ】
「旧グッゲンハイム邸」(きゅうぐっげんはいむてい)は神戸市の西部・垂水区塩屋に明治時代〜大正時代に建築された洋館。ひょうごの近代住宅100選選定。不定期でライブ等のイベントが開催されているほか、毎月第3木曜日の午後に建物の見学会が行われています。
色んなアーティストのライブスケジュールに名前が出るたびに「いつか行きたい」と思っていた旧グッゲンハイム邸(旧グ邸)…2022年3月にライブを見に訪れました!
で、その時は夜のライブだったので…昼間の建物もぜひ見たいと思って6月に見学会にも初めて参加。ライブイベント時には2階は見られませんでしたが、見学会では2階に上がることができた。
塩屋海岸〜塩屋漁港をのぞむ風光明媚な塩屋の町。戦前にかけてはリゾート地として北野の異人館街と並ぶ外国人の集住地として発展、戦後にも住宅地として開発が進みました。旧グ邸以外にも旧ジョネス邸(2010年代に解体)、旧グ邸の庭園からも姿が見える旧後藤家住宅…なども「ひょうごの近代住宅100選」に選定されています。(選ばれてないけど旧ジェームス邸とかも。)
そんな塩屋に1908年(明治41年)〜1912年(大正元年)にアレクサンダー・ネルソン・ハンセルの設計で建築されたと推定されているコロニアル様式の洋館が旧グッゲンハイム邸。貿易商だったグッゲンハイムさんはあのニューヨークの『グッゲンハイム美術館』の財団設立者とも遠戚にあたるとか。
昭和年代に「竹内油業」の所有となり、社員寮(塩屋寮)として長い間使われましたが、平成年代に空き家に。阪神・淡路大震災での大きな被害は免れたものの老朽化は進み取り壊しの可能性が取り沙汰された中で、地元在住のステンドグラス作家・デュルト森本康代さん一家が私財を投げ打って購入。
現在はその長男でアーティストの森本アリさんが管理人となり、地元イベントや結婚式などのパーティー、映画・ドラマ・個人の撮影会、そして個人的に印象の強いライブ/コンサートの会場として活用。現在では塩屋の街づくりを担う場にもなっています。
*2020年に日本建築学会で発表された論文『神戸市塩屋の洋館・旧ライオンス邸と旧グッゲンハイム邸 −2つの住宅の取り違え問題と新事実について』(水島 あかね, 笠原 一人)によって、この旧グッゲンハイム邸には実はグッゲンハイムさんは居住した記録がなく、グッゲンハイムさんが住んでいたのはすぐ北に位置する別の近代建築『旧竹内邸』、この洋館は『旧ジャコブ・ライオンスさん邸』と発表されました。
論文自体も呼称を覆したいためのものでは無いので当サイト的にも「へえ〜」ぐらいの情報で扱いますが、論文内には京都の“南禅寺界隈別荘群”に別荘を持った稲畑氏(稲畑産業)の名前も出てきて面白い。近代の別荘は一部の好事家によって維持されてきた側面もある…。
1階・2階部分の5連アーチのベランダや、白亜に深緑の装飾・赤い瓦屋根が素敵な旧グ邸。木造2階建で室内もどこか暖かみがある。2階からは庭園越しに塩屋の海を眺めることができます。潮騒の音が聞こえてきそうな距離。
洋館の前に広がる庭園について。かつてもパーティーの場になっていたんだろうな…と連想できる芝生の広場を主体としながら、中央に緩やかな築山と日本庭園っぽい池泉・石灯籠を配した近代日本庭園。近いところでは神戸・舞子の『旧木下家住宅』のような。テラスから見て、レンガも植栽も非対称なところに“和洋折衷の庭園が模索された時代”を感じることができます。
この日の見学会に居た老夫婦が「神戸に住んでたけど塩屋がこんな街だって知らなかったね」と会話をされていて。
「歴史的で文化財的な価値ある建築」…みたいな文脈というか、もっと単純に“素敵な場所!”が残されて、人が集う場所になり、地元の方々に愛されるようになった…というのが本当に素敵で素晴らしいことで。自分もまたライブで来たいと思います!
(2022年3月・6月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)
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