日本遺産“吉野”に構成。蓮如上人ゆかりの“下市御坊”に残る室町時代作庭と伝わる枯山水庭園。奈良県指定名勝。
願行寺庭園について
【要事前電話予約】
「至心山 願行寺」(がんぎょうじ)は室町時代に蓮如上人が吉野地方の布教の拠点として建立したと伝わる浄土真宗本願寺派の寺院で、室町時代の作庭と推定されている枯山水庭園は奈良県指定名勝となっています。
約2年前、奈良市にある『吉城園』を訪れた後に他の奈良県指定名勝を調べた流れで知り、それ以来いずれ訪れたいなあと思っていた場所でした。吉野山に初めて訪れた流れで、下市口で途中下車して初拝観。なお自治体公式では「無休」とありますが、要電話予約でご都合の悪い時は拝観できません。
自治体公式には「蓮如上人が建立」と紹介されていますが、その歴史は更に古く蓮如からさかのぼること5代。本願寺の三代目・覚如上人の長男、存覚上人が後醍醐天皇の勅命によってこの地を訪ね、草庵を結んだ(作った)のがはじまり。
蓮如が吉野を訪れたのはその約100年後、そして現在地に伽藍を整えたのは1495年(明応4年)。名前も願行寺となり、ここを拠点に広がった吉野の本願寺派をまとめる“下市御坊”とも呼ばれます。下市町の中心部はかつて願行寺の寺内町として発展した歴史を持つ。
戦国時代に織田信長の部下・筒井順慶に焼かれたため、現在残る本堂などの建造物は江戸時代の初期以降に整備されたもの。本堂は焼失後すぐ天正年間(桃山時代)には再建されたとされ、本堂および焼失を免れた室町時代の鐘楼・梵鐘は下市町指定文化財となっています。
そしてその本堂を向こうに眺め見る、伽藍の中庭となっている枯山水庭園が奈良県指定名勝の庭園――建物の表裏とかじゃなく、中庭に名勝庭園のあるお寺って珍しい気がする。
本堂焼失前の室町時代末期には既に完成していたと推定されている枯山水庭園ですが、玉石を敷き詰めたその姿が京都の禅の枯山水庭園とはまた違うデザインであるというのが特筆すべき点。その石組も鋭い立石が多いのもかっこいい。最も同時代で「近いな」と感じる庭園があるとすれば『大徳寺 龍源院庭園』の“竜吟庭”でしょうか。
ど真夏に足を運んでしまったので少し雑草が玉石を侵食しているように見えるかも…そゆ意味では春先とかに訪れるのが良いかもですね。願行寺のすぐ近くには奥吉野へと至る街道が通り現在も古い(昭和の)街並みを残していて、一本中に入ると平維盛の旧跡でもある古い料亭建築なんかも。吉野川を隔てて南が下市町、「下市口駅」のある北側は大淀町と別の自治体。大淀町側にも吉野山へと至る旧街道が通っている。庭園とともにレトロな街並みもあわせてどうぞ。
(2020年8月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)