深田氏庭園

Fukada-shi Garden, Yonago, Tottori

鎌倉時代から続く旧家に残る国指定文化財(名勝)の“山陰地方最古の庭園”。重森三玲が見出し、後醍醐天皇が隠岐配流の際に立ち寄り鑑賞したと伝わる庭園。

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深田氏庭園について

【見学は要電話予約】
「深田氏庭園」(ふかだしていえん)は鳥取県米子市にある国指定文化財(国指定名勝)の庭園。鎌倉時代に隠岐に流された後醍醐天皇も立ち寄ったと伝わる、《山陰に現存する最古の庭園》&《日本最古の住宅庭園》とも言われます。
何度か訪れていますが、2025年に久々に訪れたので写真を差し替えつつ改めて紹介。

米子市の中心部から約3km程東方、名峰「大山」を目の前にのぞむ旧山陰街道沿いにある「深田氏庭園」。一見、ごく一般的な住宅通りにある家屋…にも見えるけれど、実はその奥には「山陰地方最古の庭園/日本最古の住宅庭園」が佇む。

その歴史について。約800年前からこの地に居を構える深田家のルーツは近江源氏・佐々木氏。源頼朝の挙兵を支え、保元の乱・平治の乱で活躍した武将・佐々木秀義の7代孫・佐々木三郎兵衛信輝が鎌倉時代中期に伯耆国のこの地に土着、「深田」姓を名乗る豪族となります。

以来、この地の開拓や発展に尽くした深田氏。そして鎌倉時代末期の1332年(元弘2年)、隠岐に配流された後醍醐天皇はその道すがらで深田氏のお屋敷に立ち寄り行在所としたとか。当地の「車尾」(くずも)の地名は深田邸で後醍醐天皇が詠んだ《春の日の/めくるもやすき/尾車の/うしとおもはて/くらすこの里》の歌にちなむと言われます。ちなみにこの地域には『貴布祢神社』、『祇園神社』と、京都を思わせる名の神社もある。

で、この庭園は後醍醐天皇が立ち寄った際に鑑賞したとも伝わる、鎌倉時代に作庭の古庭園(現在の姿は江戸時代の改修。後述)。京都のお屋敷に触発された深田氏の2代目・深田満信によって書院から眺める庭園が造営されたとか。

江戸時代にも大庄屋をつとめ、最盛期には約3,000坪をほこったお屋敷…も、時代や環境の変化によって縮小していますが、その古庭園は現代へと継承。
この庭園を広くフックアップしたのが昭和を代表する作庭家・重森三玲。戦前の1937年(昭和12年)、氏が全国の庭園調査の最中に(決して公開されているわけではなく一介の個人邸だった)深田家を訪れ、この庭園を激賞。「住宅庭園として日本最古」のお墨付きを与え、そこから鳥取県→そして国の指定文化財へと評価されることになりました。

そのデザインについて。かつては庭園の北側にあった書院から眺めていた(現在は東屋があります)池泉鑑賞式庭園。正面右手側に築山があり、その中に印象的な(かつ抽象的な)立石による三尊石組が。
そして池の中、正面には鶴島、左手側に亀島が。鶴島に使われている斜線の入った庭石もとても印象的で、これは当地の大山系の「凝灰石」が用いられています。石組や配置は京都の鎌倉時代の庭園『南禅院庭園』と類似している…と言われますが、築山の立石も含めた奇石の使われ方が、京都の同時代の庭園とは異なる独創性…。

なお現在の庭園の姿は江戸時代に大幅な改修を経たもので、特に手前の苔〜白砂の中の飛び石のデザイン(手前のスクエア型の石や短冊石)は、お隣・出雲国の「出雲流庭園」や、米子市内の『心光寺庭園』(鳥取県指定文化財・名勝)と似たデザイン性。それらの庭園でもよく用いられている出雲山地の「来待石」が用いられています。

予約後の見学の際にはご当主から色々お話をしていただけます。文化財としての価値には歴史やデザインが重要だけれど、重森三玲が果たした功績は、地方のこの様な津々浦々の個人邸にも訪れ「この庭園は凄いやで」と褒めて、所有者を「その気にさせてきた」(モチベーションを高めてきた)ことにもあるんだろうと感じます。これから訪れる方も、ぜひそんな目線で鑑賞してみて。

(2014年4月、2016年8月、2025年9月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

JR山陰本線 東山公園駅より徒歩10分
JR山陰本線 米子駅より約3km(米子駅前にレンタサイクルあり)
JR米子駅より路線バス「車尾交差点前」バス停下車 徒歩5分

〒683-0006 鳥取県米子市車尾5丁目6-22 MAP

投稿者プロフィール

イトウマサトシ
イトウマサトシ
Instagram約9万フォロワーの日本庭園メディア『おにわさん』中の人。これまで足を運んで紹介した庭園の数は2,000以上。執筆・お仕事のご依頼も受け付けています!ご連絡はSNSのDMよりお願いいたします。
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