京都の最高級ホテルに広がる日本庭園は、平清盛の子で内大臣・平重盛の別邸“小松殿”をルーツとする貴重な平安時代末期の庭園“積翠園”。
フォーシーズンズ・ホテル京都庭園“積翠園”について
「フォーシーズンズ・ホテル京都」(ふぉーしーずんず・ほてるきょうと)は2016年秋に京都・東山七条に開業したラグジュアリー・ホテル。その庭園『積翠園』(しゃくすいえん)は平清盛の嫡男・平重盛の別邸「小松殿」の庭園として平安時代に作庭された庭園と伝わります。
今日では京都を代表する最高級ホテルの一つとして知られる「フォーシーズンズ・ホテル京都」。前身の旧東山武田病院に残る大規模な庭園としても知られていた積翠園も元の姿を残しながら、所々復元(アップデート)された姿は宿泊以外でもレストランやラウンジ「楓樹」の利用でも散策することができます。
約10,000平方メートルの敷地のうち、約3,000平方メートルの面積の池泉を中心とした回遊式邸園“積翠園”。その歴史は古く、前述の通り平安時代末期に平重盛の邸宅の園地がそのルーツとされます。
その後は現在も隣接する国宝寺院『妙法院』の境内に含まれ、現在の規模の池泉回遊式庭園へと改修されたのは江戸時代初期(元禄年間頃)。現在も池のほとりにある茶室『積翠亭』は当時存在した茶室の名前を受け継いで今回の開業の際に新築された数寄屋建築で、宿泊者/ゲスト向けの茶道体験に用いられています。
昭和の戦後の1954年(昭和29年)に「京都専売病院」の所有地に。平成年代の「東山武田病院」を経て2016年に世界的なホテル・ブランド「フォーシーズンズ・ホテル」の庭園へと生まれ変わりました。そのつど改修を経ているために文化財指定は受けていませんが、『大覚寺大沢池・名古曽滝』に次いで京都では数少ない貴重な平安時代の庭園遺構。
広大な面積をほこる庭園の細かい見どころを箇条書きで。
①ガラスの橋
小さな池と大きな池の間に掛かるガラス橋。こちらには従来は石橋が架かっていたのですが、その石橋の保存のためにその上から強化ガラスの橋を掛けた――のがこちら。モダンなデザイン演出というだけでなく、古材保存のための意味合いが込められています。
②石橋から眺める、園内東部の滝
ホテルへのリニューアル前は荒廃しつつあった滝石組を、昭和の京都を代表する作庭家・重森三玲の実測図と著述を元に再現されたもの。同時に目に見えない水系システムもリニューアルされ水質なども改善されているそう(伝統+最新型!)。
③大きな池泉に浮かぶ大小2つの島と、大島の周辺にある5つの直線的な「夜泊石」(よどまりいし/やはくせき)
夜の海に停泊している船の姿を表したという「夜泊石」という石組手法こそが、平安時代の庭園の特徴を表しているとか。前述の大覚寺や、京都の世界遺産『西芳寺』(苔寺)の庭園にもその遺構があるそう(次回また探してみよう)。
そんな庭園の奥へと足を伸ばすとラウンジ『楓樹』があり、テラスからお庭を眺めつつお茶やアルコールをいただいてまったりすることができます。この楓樹も京都産の銘木がふんだんに使われた現代数寄屋建築で素敵すぎて…!設計は京都出身の建築家・山本良介さん。
そして広い池の中を縦横無尽の泳ぐ多くの鯉の姿。平安時代の庭園…と構えずにも純粋に安らげる癒しの空間。ぜひ京都観光の際にはレストランやバー利用でも立ち寄ってみて。そしてチャンスがある方はいつか宿泊も…(客室からは東山の借景も!)。
(2023年10月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)
アクセス・住所 / Locations
京阪電車 七条駅より徒歩10分強
JR東海道新幹線 京都駅より徒歩20分強
最寄りバス停は「東山七条」バス停 徒歩3分
〒605-0932 京都府京都市東山区妙法院前側町445-3 MAP