かつては建築家・設楽貞雄の洋館もあった“華麗なる一族”岡崎財閥の邸宅跡に残る、近代和風建築と日本庭園。
旧岡崎邸庭園(須磨離宮公園植物園)について
「旧岡崎氏庭園」(きゅうおかざきしていえん)はかつて皇族の離宮“武庫離宮”に隣接する場所にあった、“華麗なる一族”のモデル岡崎財閥の邸宅に作庭された大正時代の庭園。現在は『須磨離宮公園植物園』の名で、日本の都市公園100選にも名を連ねる『須磨離宮公園』の一部となっています。
何度も書いている「近代に経済的に繁栄し豪邸の多いイメージのある神戸には、当時作られた立派な庭園があるはず…」シリーズ。こちらも西桂さんの『ひょうごの庭園~図絵で読み解く~』で知りました。
終戦後の財閥解体まで海運業を中心に神戸銀行や現・あいおいニッセイ同和損害保険を経営、現在のJR山陽本線の前身“山陽鉄道”の経営陣にも名を連ねるなど神戸・関西で大きな影響力を持った“岡崎財閥”。武庫離宮と同じく須磨海岸を一望できるこの地に創業者・岡崎藤吉は大正時代この地に邸宅を造営しました。
…こういう背景の情報なく、公園の案内図に「植物園」「和室」「和庭園」としてのみ表記されているのがすごく面白いなあと思って。案内マップに「坂道」と表記されている曲がりくねった道はかつての馬車道。その途中には敷地の高低差を活かした滝石組と池泉庭園が設けられている。“もみじ道”“もみじ滝”と表記されている通り頭上には数多くの紅葉が植わっていて、それも当時の作庭の一部なんだろう。
約5ヘクタールの敷地内には現在「和室」と「観賞温室」が建ちますが、かつては観賞温室のあたりに主屋として洋館が存在しました。設計を手掛けたのは設楽貞雄。近代の関西で活躍した建築家で、初代・通天閣の設計者でもある。なおすぐ近隣にある洋館『西尾家住宅』もこの方の作品。
和室は表記がない以上は設楽貞雄とは別の方が手掛けられたんだろうけど――“和室”ってあるけどこういう都市公園にありそうな復元した木造建築じゃなくってモロに“近代和風建築”って感じなのが超良い。建物の足元には京都・加茂の真黒石?が敷き詰められていて、視線の先には大きな赤石があって。そして目の前に広がる庭園も芝生が基調――という、とても状態の良い近代日本庭園。
御影の豪邸『旧乾邸』との共通点が多さ。海運業で財を成した名家という点、高台にある庭園という点、芝生広場と“枯流れ”による庭園である点、メインとなる洋館と離れ的な和室があったという点(現存している建物が逆だけど)。時代で言うと岡崎邸の方が早いのですが、このようなスタイルが当時の阪神財閥のステータスだったのかなあと。
今回は月曜日に訪れたので和室の利用者もなく雨戸が閉まっていたけれど…いつか建物内も見てみたいし、ここでお茶会とかやってる人羨ましいなあ。もっと評価されていい場所なんじゃないかって。
現在はその名の通り植物園として様々な季節の植物・花が見られます。冬には梅園、春には牡丹園、初夏にはあじさい園、そして秋には馬車道の紅葉。そして“花の庭園”。須磨離宮公園は想像以上に見所の多い公園だった…!
(2020年10月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)
アクセス・住所 / Locations
山陽電鉄本線 月見山駅より徒歩8分
JR神戸線 須磨海浜公園駅より徒歩12分
須磨駅より路線バス「離宮植物園前」バス停下車 徒歩3分
〒654-0014 兵庫県神戸市須磨区若木町4丁目11 MAP