旧林家住宅

Former Hayashi Residence Garden, Okaya, Nagano

日本で数少ない“幻の金唐革紙”の残る、国指定重要文化財の近代建築。和館/離れから眺めるお庭も明治時代から残るもの。近年はアジサイ推し!

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旧林家住宅(旧林国蔵邸)庭園について

「旧林家住宅」(きゅうはやしけじゅうたく)は長野県岡谷市にある国指定重要文化財の近代和風建築。“幻の金唐革紙”の現存する貴重なお屋敷で、明治時代に建てられた和館から眺められる庭園(中庭)等があります。

諏訪湖の西岸に位置する岡谷市はかつて明治〜大正時代には製紙業で栄え、国内シェアの1/4を占めたと言われる程。経済産業省が認定する「近代化産業遺産」がこの旧林家住宅を含めて市内に15箇所もあります(「諏訪地域の製糸関連遺産」)。

岡谷駅から徒歩5分!と駅チカにある重要文化財・旧林邸の歴史について。施主・林国蔵も製糸業で成功した実業家。林国蔵とその父・林倉太郎は富岡製糸場を参考として1876年(明治9年)に工場「林製糸所」を創業(屋号は「一山カ/イチヤマカ」)。諏訪の温泉施設『片倉館』が有名な“製糸王”片倉家とともに岡谷&日本の製糸業の発展や岡谷地域の近代化に貢献しました。

そんな林国蔵の自邸として1907年(明治40年)頃に竣工したのがこの邸宅。和風の主屋/離れ、洋館/内蔵・外蔵などの5件が重要文化財。登録は分かれているものの、「洋風・離れと建物の中で接続している内蔵」「洋館の中のお茶室」など邸宅としての一体感、そして「幻の金唐革紙」などここにしかない!が感じられるオリジナルワンな場所。

「金唐革紙」とは。近世ヨーロッパで流行した高級な装飾「金唐革」を参考に、後に日本独自で和紙を使って編み出された装飾品。近代には日本の洋風建築のみならず、欧米にも輸出されて有名な場所ではバッキンガム宮殿等にも使用されたとか。
しかし現代日本ではその文化や製作技術が残らなかったために「幻の金唐革紙」と呼ばれています。

この旧林家住宅の離れは東京の『国会議事堂』、『旧岩崎邸』、呉にある国重要文化財『入船山記念館』等と並んで当時の金唐革紙が現存する建築で、重要文化財となった価値のポイントの一つ(そんな重要な品なので現在展示されているのはレプリカ品)。洋館・茶室とともに“岡谷シルク”を求めて訪れる国内外の客人をもてなすための迎賓館として用いられました。

迎賓のための場所だった洋館・離れに対して、林家の居住エリアだったのが主屋。こちらは純和風建築ながら、その中にも良質な木材、彫刻師・清水虎吉による精巧な欄間など豪華さや贅沢が感じられます。

そんな主屋と離れの間には広い和のお庭があります。パンフレットにも写真が載らない位、建築と比べると“お庭”の情報がないのですが、作られたのは建築と同時期、明治時代から残るらしい古庭園。建物同士を行き交う飛び石を軸として、奇石をアイキャッチにした中島と枯池が配されたお庭——実はあまり「どのお庭っぽい」というのがないのですが、奇石を組み合わせた化燈籠や石畳の“あられこぼし”など施主の「石」へのこだわりが随所で感じられます。

そして主庭ではないけれど、洋館の玄関庭も曲線を幾重にも描く石畳がとてもモダン!そんな石畳と車寄せのマツの組み合わせも素敵。さらに、近年は“あじさい推し”のようで、花壇や木の周りにはたくさんアジサイが植っています。建築好きだけではなくお庭、お花好きもぜひ訪れてみて。

(2023年8月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

JR中央本線 岡谷駅より徒歩5分

〒394-0043 長野県岡谷市御倉町2-20 MAP

投稿者プロフィール

イトウマサトシ
イトウマサトシ
Instagram約9万フォロワーの日本庭園メディア『おにわさん』中の人。これまで足を運んで紹介した庭園の数は2,000以上。執筆・お仕事のご依頼も受け付けています!ご連絡はSNSのDMよりお願いいたします。
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