入船山記念館・旧呉鎮守府司令長官官舎

Irifuneyama Memorial Museum Garden, Kure, Hiroshima

海軍のまちの歴史を伝える明治時代の近代建築。国指定重要文化財の洋館/和館と枯山水庭園。建築設計は櫻井小太郎/大工棟梁は京都の八木安二郎。

庭園フォトギャラリーGarden Photo Gallery

入船山記念館・旧呉鎮守府司令長官官舎について

「入船山記念館」(いりふねやまきねんかん)は国指定重要文化財の洋館&近代和風建築「旧呉鎮守府司令長官官舎」を中心に「呉市歴史民俗資料館」「郷土館」、東郷平八郎の旧宅の一部を移築した「旧東郷家住宅離れ」(国登録有形文化財)などからなる文化施設。日本遺産「鎮守府 横須賀・呉・佐世保・舞鶴~日本近代化の躍動を体感できるまち~」の構成文化財。

なお「旧東郷家住宅離れ」の前に広がる庭園は『足立美術館』の庭園の作者として有名な中根金作の作庭。東郷家離れとともに別途個別に紹介します。
⇨『入船山公園“故山苑”』はこちら。

江戸時代までは小さな港町だった呉。明治時代中期に呉鎮守府の開庁から軍港都市として大きな発展を遂げました。
1892年(明治25年)、それまで『亀山神社』が鎮座していた港が見下ろせる小高い丘・入船山に建築されたのが呉鎮守府司令長官官舎。直後に一度地震で倒壊し現在の建築は1905年(明治38年)に再建されたものですが、現在では現存する海軍将校官舎としては貴重なものとして、和館・洋館ともに国指定重要文化財に。

戦前は歴代32名の司令長官の官舎、戦後は連合国軍の司令官舎として利用。後に日本に返還、1966年(昭和41年)に敷地とともに国から呉市に譲渡されその翌年に呉市の文化財・史料の保存/公開のための施設として「入船山記念館」が開館しました。
官舎のほかにも「旧高烏砲台火薬庫」も国登録有形文化財、「旧呉海軍工廠塔時計」が呉市指定有形文化財、一帯が呉市指定史跡となっています。

建築の設計はジョサイア・コンドル辰野金吾の下で学んだ近代の建築家・桜井小太郎。また和館の棟梁は京都の八木安二郎という大工により手掛けられています。棟札には「京都市聚楽下立売八木善兵衛長男」と。近代に活躍した京都の大工棟梁・八木甚兵衛と関係がある方だろうか…?

ハーフティンバー様式の洋館は当時の面影を伝えるステンドグラス、インテリア・調度品、そしてさまざまな模様が楽しめる壁紙(日本国内でもう数カ所しか現存していない「金唐紙」!)など見どころいっぱい!

迎賓館的な役割を果たしていた洋館に対し、長官のプライベートの場だったのがる数寄屋風書院造りの和館。洋館を見た後だと地味に感じられるかもしれないけど、約20畳の広間+約30畳の広間に一面のガラス障子がずらっと並ぶ姿はとても開放的&壮観。あと茶室(離れ座敷)の外壁があまり見たことない「鼠漆喰刷毛引き仕上げ」。洋館のデザインと調和している。

そんな和館の前に枯流れのある枯山水庭園があります。建築の豪華さを鑑みるとだいぶ簡素な庭園ではあるけれど(開館時に作り替えられた?)、座敷の前に埋め込まれた巨石が「きっとこれがかつての踏み分け石で、この巨石が浮かない庭があったんじゃないか…」と想像させられる(実際、斜面の方に「今はもう使われていない」水路の痕跡があったり)。枯池の中にある石塔とかも由緒ありそう。

また郷土館・呉市歴史民俗資料館ではこの官舎に滞在した長官や大日本帝国海軍資料、呉市の郷土史料などを見ることができます。ぜひそちらもチェックしてみて。

(2022年7月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

JR呉線 呉駅より徒歩15分

〒737-0028 広島県呉市幸町4-6 MAP

投稿者プロフィール

イトウマサトシ
イトウマサトシ
Instagram約9万フォロワーの日本庭園メディア『おにわさん』中の人。これまで足を運んで紹介した庭園の数は1,900以上。執筆・お仕事のご依頼も受け付けています!ご連絡はSNSのDMよりお願いいたします。
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