2002年日韓ワールドカップで一躍有名になった“中津江村”。村に残る唯一の大分県指定文化財庭園は、鎌倉時代に梶原景季らの作庭と伝わる源氏ゆかりの庭園。
伝来寺庭園について
「慈雲山 伝来寺」(でんらいじ)は大分県日田市の旧・中津江村にある南北朝時代に創建の浄土真宗の寺院。その庭園はお寺の歴史よりも古く鎌倉時代の庭園とされ、鎌倉幕府将軍・源頼朝の命でこの地に訪れた武将・梶原景季、仁田四郎忠常による作庭と伝わります。大分県指定名勝。
2002年、サッカーの日韓ワールドカップでカメルーン代表のキャンプ地としてお茶の間にも有名になった大分県の中津江村。その後合併し現在は日田市の一部となっていますが、近代には日本国内最大の金山“鯛生金山”により栄えた鉱山街もありました。
現在では公共交通機関も限られる中津江村、そしてこの伝来寺庭園ですが、“九州最古の庭園”としても名前の挙がる歴史的価値の高い庭園です。
その歴史は源平の争った平安時代末期〜鎌倉時代にさかのぼります。打倒平家を掲げ源頼政とともに挙兵した「以仁王の令旨」(以仁王の乱)が有名な以仁王(後白河法皇の子)。乱は失敗に終わり以仁王が討たれる中で、近侍・長谷部信連(後に源頼朝にも仕えます)は以仁王の子・豊津宮を守り豊後国へ逃れます。
そして源氏が勝利を収めた後の1194年(建久4年)。源頼朝は富士で「巻狩」を催すため、阿蘇大宮司でのやり方を理解すべく、御家人・梶原景季、仁田忠常を九州に派遣します。その帰路、道中に以仁王の遺児が住んでいると聞き尋ね、王子を慰めるために作庭したのがこの庭園と伝わります。なお庭園の背後にある山が長谷部氏の居城(山城)だったとか。
伝来寺の創建はそこから100年以上後の1338年(延元3年)。長谷部氏の館が肥後国の僧・大智禅師に与えられて当初は曹洞宗の禅寺として開かれました。現在の本堂は江戸時代後期の嘉永年間に再建されたもの。
その本堂の奥にあるのが大分県指定名勝の庭園。山からの湧水による池泉を中心とした池泉鑑賞式庭園で、奥の斜面に沿って滝のような石組が配され、その目線の先にかつての城山へと繋がります。前庭はツツジが多く、訪れた春は花を咲かせてきれいだったけれど、この主庭園は紅葉の時期がやはり一番の見頃とのこと。
鎌倉時代初期から残る姿ではなく時代時代に改修を経ているそうですが、源氏ゆかりの庭園はあまり残されていない中では貴重な庭園。古庭園好きはぜひ訪れてみて。
(2024年4月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)
アクセス・住所 / Locations
JR日田駅より約28km
JR日田駅より路線バス「杖立線」で「松原」バス停下車。市営上津江・中津江デマンドバスに乗換、「川辺中津江振興局前」下車 徒歩10分。詳しくはこちら
〒877-0301 大分県日田市中津江村栃野472 MAP