山本家 仁風庵

Yamamoto-ke Jinpuan Garden, Kyoto

京都御所近くの“御所西”エリアに佇む歴史的建造物。かつて京都市も迎賓館として用いた近代和風建築と2つの庭園。国登録有形文化財。【通常非公開】

庭園フォトギャラリーGarden Photo Gallery

山本家 仁風庵について

【通常非公開/年に数回イベントを開催】
「山本家 仁風庵」(やまもとけ じんぷうあん)は京都の中心『京都御所』の真西、中立売御門から徒歩5分ほどの場所に建つ近代和風邸宅。「山本家住宅」として主屋/正門及び塀/勝手門及び塀/土蔵の4件が国登録有形文化財、また京都市景観重要建造物や京都市民の選ぶ「京都を彩る建物や庭園」などに選定/認定されています。

中立売通を通るたびいつか訪れてみたい…と思っていた、通常非公開のお屋敷「仁風庵」。不定期で企画展やイベントの開催に伴って公開されます。
中の人が初めて訪れたのは2022年秋に開催されたイラストレーター小渕暁子さんによる展覧会『あき こと きょうと』(※後述の「山本仁商店」とのコラボ作品に伴うイベント)。またコロナ禍以前には『星槎大学オープン・カレッジ 京都仁風庵星槎塾』と題して、星槎大学との共同企画で哲学者・山折哲雄さんを塾長に、文化講座も開催されていました。

京都の老舗が多く軒を連ねる室町通りに本社(本店)を構える『山本仁商店』さん。創業は江戸時代中期の享保年間と古く、白生地問屋を営んでいた1920年(大正9年)13代目・山本仁三郎の代に創業の地・岐阜から京都へはじめて出店。この「仁風庵」の名も創業以来の“仁”の屋号が由来となっています。

そんな岐阜から京都へ拠点を移した13代山本仁三郎が構えたのがこの「仁風庵」。元は西陣の織元の邸宅がこの地にあったそうですが、後述の“約束”付きで山本家のお屋敷となりました。現在の主な建築(主屋など)は昭和初期、1940年(昭和15年)前後に建てられたもの。アール・デコ風の洋室を備えるなど京都の素敵な“近代和風建築”の様子を伝えつつ、何と言っても通りに面した木塀(鎧塀)が「京都御所周辺」のエリアの景観を引き立てています。

また、昭和年代には山本家の邸宅としてだけでなく“ゲストハウス/迎賓館”としても活用され、時には京都市からの依頼で海外の賓客をこちらでお迎えしたこともあったとか。1階・2階の大広間、そしてとても明るいお茶室などからその用途や格式が感じられます。(また当時の著名な作家の作品の展示なども、見学の際には要注目ポイント!)

庭園は「前庭」を除いて主なものが2つあります。まず、広間から眺められる主庭園(東庭)
13代目が自ら庭石を収集しながら作庭されたお庭だそうで、鞍馬石、貴船石、糸掛石、あと奥にも大きな真黒石など京都の銘石“加茂七石”がふんだんに用いたれた見応えある枯山水庭園(かつては水が引き入れられた池庭だったとか)。橋の支柱…?(石鳥居?)方や寝かせて、方や突き刺す様なデザインが独特。沢渡り石は『平安神宮』を思い起こしますが、ここまで「石臼」を多く使ったお庭は近代にはあまり無い…?石臼が使われなくなった(庭石として再利用されるようになった)昭和中期らしさ、かも。

そして主木と言える存在は2つある。近年、ドラマ『京都人の密かな愉しみ』でも印象的なシーンとして登場した「桜」。苗から育った桜が現在は2階ほどの高さになり、春にはその姿が絶景。(※ただし、その頃の特別公開は行われていません)
もう一つが、上手側(座敷から右手側)にある「梅」。こちらは桜よりも150年以上古く樹齢200年以上と伝わっているそう。先述の「前所有者との約束」はお庭のこの梅の木は残し続けることでした。付近で起こった幕末の動乱(蛤御門の変など)も見てきたであろう歴史的な古木は、「ひな祭り」イベントでの見どころの一つ。

もう一つの主要なお庭が、応接間・お茶室から眺められる苔と紅葉の美しい茶庭/露地風のお庭(南庭)。秋にはこのお庭のモミジと塀の景観が通りがかりにも目を惹きます。
面白いのが軒下の犬走り。直線的な切石と真黒石を組み合わせた“数寄屋建築”のためのデザインである一方で、広さや高さがデッキ/テラス的な意味合いもあるところ…(この空間の先に鞍馬石による沓脱石がある)。近代〜現代の進化の途中!また、現在の姿からは想像できませんが、戦時中にはこのお庭に防空壕が掘られていたとか…。

見学の際にはご当主をはじめ皆様に山本家や邸宅の歴史についてご説明いただけます(ありがとうございました!)。ご主人のこの邸宅を残したいと思った際のとあるエピソードにも胸打たれます。お庭も建築も文化財も、生身の人たちが紡いでいる歴史。そんなことを学ばせていただける仁風庵。また今後のイベントにも足を運びたいと思います!

(2022年11月、2025年4月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報やイベント情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

京都市営地下鉄烏丸線 今出川駅より徒歩10分
最寄りバス停は「烏丸一条」バス停 徒歩5分

〒602-0915 京都府京都市上京区三丁町中立売通西洞院西入446 MAP

投稿者プロフィール

イトウマサトシ
イトウマサトシ
Instagram約9万フォロワーの日本庭園メディア『おにわさん』中の人。これまで足を運んで紹介した庭園の数は2,000以上。執筆・お仕事のご依頼も受け付けています!ご連絡はSNSのDMよりお願いいたします。
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