ヴァレーギャラリー《ナルシスの庭》

Valley Gallery, Naoshima, Kagawa

2022年の瀬戸内国際芸術祭からアートの島“直島”に新たに誕生したランドスケープが主役の安藤忠雄建築と草間彌生《ナルシスの庭》。

庭園フォトギャラリーGarden Photo Gallery

ヴァレーギャラリーについて

「ヴァレーギャラリー」(ゔぁれーぎゃらりー)は瀬戸内海に浮かぶ現代アートの島・直島の中心地『ベネッセアートサイト直島』に2022年新たに誕生したアート・ギャラリー。安藤忠雄さん設計の建築とともに現代芸術家・草間彌生さんの《ナルシスの庭》、小沢剛さんの《スラグブッダ88 -豊島の産業廃棄物処理後のスラグで作られた88体の仏》が展示されています。

『ベネッセハウス』に2022年新たに開設された『杉本博司ギャラリー 時の回廊』とともにこのヴァレーギャラリーもランドスケープ寄り…ということで紹介!(作品も“庭”だし!)

『地中美術館』から『ベネッセハウス・ミュージアム』へと向かう途中、『李禹煥美術館』の向かいの山間に登場したヴァレーギャラリー(入館料はベネッセハウス・ミュージアムと共通)。園路を奥へと進むと安藤忠雄建築が現れるけれど、主役は“ランドスケープ”

まずは桜やツツジの植栽のある園路〜芝生の広場からはじまる。その目線の先には安藤建築…を取り囲み、ヴァレーギャラリーの見所の一つ、山々の景観。今回訪れた5月中旬は“春もゆる”感がまだまだ残っていてすごく良い(多分もう少し早いと時期だともっと良い)。直島、海ばかり目がいってたけど山の景も良いなぁ。

そんな山々を借景とした自然の池の中に浮かぶミラーボール。この草間彌生《ナルシスの庭》は1966年のヴェネツィア・ビエンナーレの会場の芝生に敷き詰め、世界的注目を集めた作品。園路を進んだ各所にミラーボールが散りばめられ、山や空などの周囲の景観、そして鑑賞者やスタッフの方など「そこにいるひと」の姿を映し出す。

もう一つの、かつ恒久展示作品が小沢剛の《スラグブッダ88 -豊島の産業廃棄物処理後のスラグで作られた88体の仏》。2006年に池のほとりで展示がはじまったこの作品は江戸時代初期に直島の各所に設置された《直島八十八箇所》(そのモデルは四国八十八ヶ所巡礼)の仏像をモチーフとして、その全ての仏像を調査測量し、豊島で不法投棄された産業廃棄物を焼却処理後に生じたスラグを素材に制作されたもの。
今回のヴァレーギャラリーの整備にあたって、仏様は移動。元あった位置(池の逆側)には巨石と新たな積石による作品が見られます。

斜面に中腹に位置するのが、安藤忠雄の直島で9つ目となる建築。氏の他の建築と比べると決して大きくない、安藤建築なりの“自然と溶け込む”スケールの建築は《小さくとも結晶のような強度をもつ空間をつくろうと考えた》(*パンフレットより引用)という所から“祠をイメージ”し設計されたもの。
屋根のスリット開口から光や風、時には雨といった自然の空気がそのまま入り込む半屋外の展示室で、《ナルシスの庭》は建築内に続きます。

最後に建築の脇から丘の上へ登ると『李禹煥美術館』側の山の景観を見渡すことができる。今回の直島で思ったのは、自生してきたマツが枯れて赤くなってるのが多いなあと…それゆえ山の挿し色になっていて。それも含めて“自然の営み”。
直島に限らずこの2022年現在は建築も表現も「箱」以上に周囲の自然/植生/持続性が重視される流れになってきた。個別には様々な思いや意見があると思うけど、そこに意識がいくようになったのがまず嬉しいことですよね。このギャラリーに今後どのような作品が展示されてゆくのかも楽しみ!

(2022年5月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

直島・宮浦港から2.5km(徒歩30分強)
※レンタサイクルだと行きは上り坂
※ベネッセアートサイト行の島内周遊シャトルバスが無難

〒761-3110 香川県香川郡直島町琴弾地 MAP

投稿者プロフィール

イトウマサトシ
イトウマサトシ
Instagram約9万フォロワーの日本庭園メディア『おにわさん』中の人。これまで足を運んで紹介した庭園の数は2,000以上。執筆・お仕事のご依頼も受け付けています!ご連絡はSNSのDMよりお願いいたします。
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