
国宝『犬山城』の麓の日本庭園。織田信長の弟で大名茶人・織田有楽斎が建てた国宝“如庵”を筆頭に数多くの歴史的建造物や茶室が…建築家・堀口捨己監修。
有楽苑・国宝茶室“如庵”について
「有楽苑」(うらくえん)は愛知県犬山市にある日本庭園。現存12天守の一つで国宝『犬山城』の麓にあり、庭園内の茶室『如庵』(じょあん)が国宝。織田信長の弟で大名茶人・織田有楽斎により江戸時代初期に建築された“国宝茶席三名席”の一つで、他にも回遊式庭園の中に様々な歴史的建造物があります。これらの建造物の移築&庭園の作庭は昭和を代表する建築家のひとり・堀口捨己の監修。
2025年秋に再訪したのでその写真を追加して改めて紹介。
国宝『犬山城』を中心に、古い町家を残す城下町や木曽川の景観に温泉と、名古屋圏の代表的な観光地の一つ、犬山。犬山城の麓にある日本庭園『有楽苑』はなんと言っても国宝茶室『如庵』が有名で、庭園そのものは歴史的な庭園というわけではない——と思いきや。実は、『八勝館』で有名な昭和を代表する建築家・堀口捨己が設計監修。さらに、庭石や石造物は三井財閥の邸宅から移築されたものが多数——という、今後確実に「歴史的価値を持つ」庭園でもあります!
有楽苑の開園は1972年(昭和47年)と現代に入ってからですが(と言っても、もう50年超)、園内にある建築は何百年という歴史を持つものが点在します。まずその主役である「如庵」について。
江戸時代初期、茶人・織田有楽斎によって建立された如庵。信長の年の離れた弟だった有楽斎(織田長益)は、戦国時代〜桃山時代にかけては信長と豊臣秀吉・徳川家康のそれぞれの間に立ち関係性を支えます。また茶道を千利休に学び、古田織部、細川忠興(細川三斎)らとともに“利休十哲”の一人にも挙げられました。
関ヶ原の戦い以降は京都で隠棲。そして大坂夏の陣を迎えた後に、京都『建仁寺』内に建立(再建)したのが『正伝院』(現『正伝永源院』)で、そこを隠居所とします。更にそこに1618年(元和4年)頃に建立されたのが「如庵」。二畳半台目の茶室は今日では大山崎・妙喜庵に千利休が残した『待庵』、大徳寺・龍光院の『密庵』とともに“国宝茶席三名席”と並び称されます。
…そんな国宝茶室も、明治時代以降は各地を転々。明治時代末期に東京の三井本邸に移築されたのち、1938年(昭和13年)に三井財閥10代目・三井高棟により三井家の大磯別邸「城山荘」(現『大磯城山公園』)へ移築。
更に、1970年代に所有者が名古屋鉄道(名鉄)へと移り、堀口捨己の指揮の下で犬山城下の現在地に移築、そのために作庭された庭園は織田有楽斎にちなんで現在の「有楽苑」と名付けられました。また現在も如庵と並び建つ「旧正伝院書院」も国指定重要文化財で、長谷川等伯や狩野山雪の襖絵も残ります。
※ちなみに、如庵が国宝指定されたのは東京の三井本邸にあった時代の1936年(昭和11年)。茶室だから移動可能な作りとはいえ、国宝建築が二度も長距離移動している例としては現代にはあまりない/稀有な例?
如庵・正伝院を中心とした回遊式亭園の中には他にも歴史的な建造物や石造物が見られるのですが、実は?この2棟だけでなく三井家大磯別邸から移築されているものも多い…(園内西部にある徳源寺唐門、正伝院書院の入り口になっている含翠門&萱門)。中でも「徳源院唐門」は奈良県大宇陀町の織田家の菩提寺にあった山門、「岩栖門」は室町時代に京都の細川満元の屋敷『岩栖院』に建てられた唐門と伝わり、これらも文化財であってもおかしくない歴史がある。
一方で、見た目は歴史を感じるけれど、実は新しい和風建築も。
順路の最初と終盤に鑑賞する茶室「元庵」は、元は有楽斎が大阪・天満に構えた茶室を古図に基づき復元したもの。元庵の玄関に建つ石灯籠が“藤村庸軒旧蔵石灯籠”。藤村庸軒は千利休の孫で今日の表千家/裏千家/武者小路千家の流れを作った千宗旦の弟子。国指定名勝『居初氏庭園(天然図画亭)』の作庭者でもあります。
園内で最も新しい茶室が「弘庵」で、京都の茶室の大家・中村昌生さんと京都伝統建築技術協会の設計・施工で1986年(昭和61年)に建立されました。
文化財として鑑賞する対象の如庵・正伝院などに対して、実際に茶会をするために新たに建築されたもの。600円でお茶・お菓子を一服いただくことができます。この周辺の露地庭が苔が美しくて素晴らしい!
最後に庭園について。如庵・正伝院の前の露地(飛び石など)は、有楽斎が京都に作庭したものを再現(※以前は露地の中に入れたのですが、2025年現在は立ち入れなくなりました)。その一方で、庭園全体は(建築の移築のみならず)堀口捨己さんの意向がかなり反映されているそう(詳しくは雑誌『庭NIWA』250,251号に!)。
芝生広場の、この庭園で一際大きな伊予の青石は三井家大磯別邸からの移設。六角形の四阿はこの土地で新築されたものですが、大磯別邸にかつてあった六角堂を模したもの(だと思います)。庭園後半にある池泉回遊式庭園「茶花園」も…名前からして茶花が主役のようで(実際季節ごとの花々も見所)、庭石・滝石組がかっこいい庭園でもある!
開園50年を迎えるにあたって、2019年〜2022年にかけて休園し修復、現在はよりきれいな姿を見せてくれています。国宝茶室「如庵」は月1回程度の頻度で内部の特別公開も。ぜひ日付を見て参加を検討してみて。
(2022年6月、2025年11月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)
投稿者プロフィール

- Instagram約9万フォロワーの日本庭園メディア『おにわさん』中の人。これまで足を運んで紹介した庭園の数は2,000以上。執筆・お仕事のご依頼も受け付けています!ご連絡はSNSのDMよりお願いいたします。
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