
北海道の貴重な文化財指定庭園の一つ。旧尾張藩士/実業家・梅村多十郎の明治時代の面影残す邸宅建築と庭園。函館の庭師・野中松太郎作庭。
梅村庭園について
【冬季休館日あり】
「梅村庭園」(うめむらていえん)は北海道八雲市にある日本庭園。JR八雲駅から徒歩7~8分と程近く。明治時代に八雲に移住/入植した旧尾張藩士・梅村多十郎の別邸がそのルーツで、北海道では貴重な古庭園として八雲町指定文化財(名勝)や北の造園遺産に認定されています。入園無料。
北海道新幹線の延伸後は新八雲駅の開業も予定されている八雲の町は、明治時代に尾張徳川家17代目・徳川慶勝(徳川家の出資)とそれに従って集団移住した旧尾張藩士によって開拓された町で、徳川家の別荘や『徳川公園』も残ります。
この梅村庭園の施主・梅村多十郎も元尾張藩士(現・春日井市出身)で、1892年(明治25年)に八雲へ移住。開拓された地での農業を皮切りに、でん粉の製造、菓子製造、質屋、呉服商と事業を拡大するなど商才を発揮。八雲村~八雲町の議会議員もつとめ八雲の発展に尽力しました。
この庭園と住宅は1912年(明治45年)~1930年(昭和5年)にかけて造営されたもの。建築の方も当時の蔵と離れ(和風建築)が現存、現在休憩所となっている『梅雲亭』のある場所(中央の建物)には函館や弘前の近代建築を思わせる洋館がありました(⇒八雲町公式HP『昔の梅村庭園』)。洋館の大工棟梁は山田勝太郎、庭園の作庭(1923年以降)には函館の造園家(庭師)・野中松太郎が関与。
その後、この庭園は2001年に梅村家より八雲町に譲渡され、2003年より町営の施設として公開が開始されました。
旧宅や梅雲亭の前に広がる大きな池泉(湧水池)の周囲に園路と多くの樹木、そして築山や庭石、石橋などが配された池泉回遊式庭園。春(5月~)にはサクラや各種ツツジが花を咲かせ、秋には紅葉が楽しめるうえ、庭園の奥では広い範囲で苔むした姿を楽しめる、本州とも近しい日本庭園――スタッフの方の日々のお手入れも行き届いていて美しい!
で。「本州とも近しい」と書いたものの。本州ではあまり見ないようなド迫力の樹形のマツやイチイ、そして北海道らしく高木の並ぶ姿などなど、伝統的な日本庭園らしいフォーマットの上で「独特な雰囲気」を醸す。関わったのは函館の庭師。函館に残る近代の日本庭園『香雪園』や『湯元 啄木亭』で「函館の庭園は弘前と雰囲気が似ている」と紹介したのですが、この梅村庭園もそんな印象を受ける。2つある石橋の感じとかが特に…! 一方で「尾張っぽさ」はあまり感じない。八雲の隣町・熊石は北前船の寄港地でもあったそうなので、どちらかと言えばその影響を感じる…?
建物の内部でも旧梅村家の欄間や丸窓、精巧な意匠の近代和風建築の雰囲気が味わえます。そしてこの庭園の裏には木彫り熊の歴史を辿れる『八雲町郷土資料館・八雲町木彫り熊資料館』も。北海道の旅の際はぜひ八雲で途中下車してみて。
(2025年5月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)
投稿者プロフィール
