沖縄本島北部で唯一の国の文化財庭園は、泡盛“国華”の酒造所の庭園。国指定重要文化財の琉球様式×近代和風建築や沖縄戦の痕跡も必見。
津嘉山酒造所庭園について
「津嘉山酒造所」(つかやましゅぞうじょ)は沖縄で戦前から残る唯一の泡盛の酒造所。泡盛『國華』の銘柄でも知られます。その主屋・麹屋(工場)が「津嘉山酒造所施設」として国指定重要文化財。庭園も2021年に国の登録記念物(名勝地関係)に選定されました。
2024年、初めて訪れたのでその写真を紹介。
沖縄本島北部の最大都市・名護市。その中心市街地の路地を一本入った場所にたたずむ津嘉山酒造所。創業は大正時代の1924年。その3年後、1927年(昭和2年)より住居兼工場として造営が始まったのが現在も残る建物(コンクリート造の塀も)と庭園。主屋は1932年(昭和7年)に上棟、設計は島袋純一、大工棟梁は“大宜味大工”金城徳三郎。
太平洋戦争の沖縄戦で名護市街地も多大な被害を受けますが、この邸宅は破壊されず残され、戦後は米軍の駐在所として用いられました。邸宅内にその当時に刻まれた英文や弾痕といった痕跡も残されています(また工場もその当時は泡盛ではなく「パン工場」として用いられたとか)。返還後は再び泡盛工場となり現在へ至り、戦前の貴重な近代琉球建築として国の重要文化財に指定されました。
その特徴は、赤瓦の伝統的な琉球の平屋家屋としての様式と、“内地”の和風建築からの影響がミックスされている点。創業者・津嘉山朝保は東京にも営業所を構えた背景もあり、主屋や離れはいわゆる書院造りが取り入れられています。離れの床の間・床柱に使われている銘木にも目がいく!
L字型に配された主屋座敷と離れから眺められる池泉鑑賞式庭園が2021年に新たに国登録文化財となった庭園。
中央の立石は沖縄本島北部算出の古生代石灰岩が用いられるなど、その庭石の雰囲気から“琉球庭園”的な雰囲気を醸しながら、細長い池泉は沖縄本島が表され、日本庭園的な飛び石や立石、灯籠が配されている点など「内地の雰囲気がミックス」された雰囲気があるのが面白い所。
庭園中央にある主木が樹齢100年となる銘木のコクタン(クルキー)。その他にもこの酒造所ならではの邸宅が見られます。みっちり名物杜氏さんが案内してくださるのでぜひ耳を傾けてみて。国華の試飲も!
(2024年1月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)
アクセス・住所 / Locations
那覇空港より高速バス「名護市役所前」バス停下車 徒歩15分
那覇空港より名護方面路線バス「大中」バス停下車 徒歩3分
〒905-0017 沖縄県名護市大中1丁目14-6 MAP