東京都庭園美術館(旧朝香宮邸)

Tokyo Metropolitan Teien Art Museum's Garden (Former Residence of Prince Asaka), Minato-ku, Tokyo

国指定重要文化財の日本を代表するアール・デコ様式の洋風建築と、和洋の庭園も楽しめる美術館。日本庭園・茶室を監修したのは武者小路千家の茶人・木津聿斎。

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東京都庭園美術館/旧朝香宮邸/茶室“光華”について

「東京都庭園美術館」(とうきょうとていえんびじゅつかん)は皇族・朝香宮鳩彦王の邸宅として近代/昭和時代初期に建てられた洋風建築『旧朝香宮邸』を活用した東京都立の美術館。2015年には「旧朝香宮邸」として国指定重要文化財に。施設名の通り、本館を囲むように庭園が広がり、日本庭園エリアには重要文化財にも含まれる茶室『光華』も建ちます。
茶室・庭園の監修は全国に茶室・庭園を残す茶人・木津聿斎(木津宗泉)で、茶室設計は武者小路千家の茶人・中川砂村(是足庵)/施工は近代の名工・平田雅哉、庭園の設計は宮内省家匠寮の中島卯三郎

内藤礼、オットー・クンツリ、クリスチャン・ボルタンスキー…庭園のみならず展覧会目的で何度も訪れている「庭美」。2025年、青木野枝/三嶋りつ惠『そこに光が降りてくる』展で久々に訪れたので改めて紹介。

その歴史を遡ると、この地には江戸時代には高松藩主・松平家の江戸下屋敷がありました(隣接する『国立科学博物館附属 自然教育園』とともに)。
大正時代にこの一帯が宮内省の「白金御料地」となると、その一角に皇族・朝香宮家の邸宅が建設されることに。

一方、それに先立って約4年間ヨーロッパ/フランスに留学していた朝香宮鳩彦王は1925年のパリ万博(通称『アール・デコ博』)を現地で視察。ヨーロッパの最新デザインにふれると、その影響は朝香宮邸の建設にも反映され、主要室の内装の設計をフランスの室内装飾家:アンリ・ラパンに依頼。ガラス作家:ルネ・ラリックのレリーフ/シャンデリア等も取り入れられた、日本を代表するアール・デコ様式建築として1933年(昭和8年)に竣工。(建築設計は宮内省建築担当技師・権藤要吉

戦後は吉田茂の首相公邸として使われた時代や、民間に払い下げられ西武鉄道による『白金プリンス迎賓館』となった時代も経て、1983年(昭和58年)に東京都立の「東京都庭園美術館」が開館しました。

35,000平方メートルの敷地面積の大部分を占めるのが「庭園」で、本館に近い順で「芝庭」「日本庭園」「西洋庭園」と大きく3つのエリアに分けられます(※美術館へのアプローチも色んな樹種や高木が並び、前庭と言っていいかもしれない)。
いずれも白金御料地や朝香宮邸だった時代から引き継がれているものですが、かつては日本庭園の西側を通る道路(首都高)まで庭園の池泉は伸びていたそう。(なので最盛期からは少し縮小されている)

芝庭には現代日本の代表的な彫刻家・安田侃の「風」を始めとして、幾つかの野外彫刻作品が設置。かつてガーデン・パーティーが行われていたであろうこの空間が、現代には(季節によっては)家族連れや老若男女が腰掛けくつろぐ憩いの場となっています。

築山と大きなモミジの木の向こうに広がるのが池泉回遊式の日本庭園。白金御料地の時代の武蔵野の自然を伝える雑木林や起伏ある地形をそのまま引き継ぎつつ、実はかなりモミジの木が多く植わっている、東京の隠れた紅葉の名所…?築山の上からも降り注ぐモミジの姿を楽しむことができます。

その池のほとりに建つのが茶室『光華』。本館から5年遅い1938年(昭和13年)に竣工したこのお茶室は都心で戦災を逃れた貴重な和風建築の一つでもあり、その名や扁額は朝香宮鳩彦王自身によるもの。

立礼席、広間、小間の三席で構成され、立礼席と広間からはガラス越しに日本庭園が眺められる、この庭園の主要なビューポイントの一つでもある。普段は立礼席までしか上がることができませんが、ときおり広間まで上がることができる「茶室特別公開」も行われています(※2024年は夏・秋に実施)。

茶室及び庭園の監修を手掛けたのは関西で『慶沢園』『温山荘園』『四天王寺庭園』など巨大な庭園を手掛けている茶人・木津聿斎。東京・大宮御所の茶室『秋泉亭』など皇室ゆかりの場にも作品を残す氏ですが、関東の公開されている庭園/茶室としても「庭美」は貴重な場。逆に、「庭美」を好きな方には木津聿斎の他の作品もぜひ今後訪れてみて。

(直近では2025年1月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)

アクセス・住所 / Locations

JR山手線・地下鉄各線 目黒駅より徒歩10分
東京メトロ南北線・都営三田線 白金台駅より徒歩10分

〒108-0071 東京都港区白金台5丁目21-9 MAP

投稿者プロフィール

イトウマサトシ
イトウマサトシ
Instagram約9万フォロワーの日本庭園メディア『おにわさん』中の人。これまで足を運んで紹介した庭園の数は2,000以上。執筆・お仕事のご依頼も受け付けています!ご連絡はSNSのDMよりお願いいたします。
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