京都の大本山で活躍した高僧を輩出した“岐阜の苔寺”、近年は若い力で“開かれたお寺”へ。苔とドウダンツツジの紅葉が美しい庭園も。山県市指定文化財(名勝)。
岐阜・東光寺庭園について
「富士山 東光寺」(とうこうじ)は岐阜県山県市にある臨済宗妙心寺派の禅寺。本堂と所蔵する仏像(円空仏観音坐像)が山県市指定有形文化財となっているほか、境内が山県市指定名勝。江戸時代中期に作庭されたと伝わる庭園は秋にはドウダンツツジが真っ赤に染まります。
岐阜県の県庁所在地・岐阜市の北隣に位置する山県市。武田信玄の家臣として有名な戦国時代の武将・山県昌景や、明治維新後の著名な政治家で庭園界でも有名な山県有朋は、ルーツを辿ると山県市で発祥した「美濃山県氏」へと辿り着きます。
そんな山県市で近年「開かれたお寺」として人気を集めつつあるのが東光寺。冒頭の写真の通りの素敵なお庭もありますが、数年前までは“観光客”なんて訪れない、「地方のひとつの地味なお寺」だったとか。
2020年に京都・妙心寺からこのお寺に入られた現・ご住職と奥様によって「京都のように気軽に老若男女が訪れ、親しまれる寺院」を目指し、ワークショップやマルシェ、現代のアーティストによる展示やライトアップなど様々なイベントが開催されています。(今回訪れた2024年11月にも若い拝観客の姿も!)
その歴史について。室町時代の文亀年間(1501年~1503年)に地元の名士・華翁頼瞬と彼が帰依した希雲和尚が開山に東陽英朝(美濃国出身で、後に京都の大寺院『大徳寺』『妙心寺』の住持を歴任した高僧)を迎え創建。
ちなみに山号の「富士山」はそのまま「ふじさん」と読みます。これは薬師堂に納められている薬師如来像が“富士山の麓から飛んできた”という伝説から。
江戸時代初期には後水尾天皇や徳川家光、春日局など時代を代表する人物から帰依された臨済宗の高僧・愚堂東寔(愚堂国師)を輩出。また明治時代に南禅寺派管長・妙心寺派管長を歴任した豊田毒湛禅師も東光寺の出身。
そんな名僧を輩出した寺院らしく、格式高さを感じさせるのが檜皮葺の本堂「希雲閣」(市指定文化財)。山門や経蔵などは江戸時代から残る建築で、山門くぐって広げる苔むした境内(特に弁天池の周りが苔が美しい)、京都の様な北山台杉のある空間から“岐阜の苔寺”と呼ばれはじめているとかいないとか。
本堂の前にもきれいにされている石庭が広がりますが、江戸時代中期の1773年(安永2年)に作庭されたと伝わる主庭園(中庭)はお堂を入った先の書院から。 手前に一面の苔の空間、飛び石を伝った先には斜面いっぱいに植わったドウダンツツジの姿。春には一面真っ白に、秋には真っ赤に染まります。
飛び石を伝った先にあるのが茶室「尚餘軒」。明治時代に建立された名古屋の茶道流派・松尾流のお茶室で、近年秋に行われるようになった「月見茶会」ではその舞台になります。(尚、庫裡・書院も明治時代の濃尾地震の後に再建されたもの)
このお庭はイベント開催時の公開のほか、それ以外の時期もインターホン鳴らしてお声掛けすれば拝観可。年間を通じて様々なイベントが開催されているので、ぜひ公式Instagramから情報をチェックして。
(2024年11月訪問。以下の情報は訪問時の情報です。最新の情報は各種公式サイトをご確認ください。)
アクセス・住所 / Locations
JR東海道本線 岐阜駅・名鉄 名鉄岐阜駅より約15km
JR岐阜駅/名鉄岐阜駅より路線バス「山県バスターミナル」乗換「東光寺口」バス停下車 徒歩10分(日曜祝日運休)
〒501-2124 岐阜県山県市小倉618-41 MAP